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67、氏神様の神社 〜まさかの眷属

「えっ……種族がフェアリー? 妖精?」


 中村さんは、首を傾げている。彼らの外見は、人間のままだ。腐りかけていた身体は元に戻り、服がなかったからか、みんな同じ、白っぽい民族衣装を着ている。


 そっか、これが民族衣装だとは知らないんだよね。妖精の浮き島では、何かの儀式のときには、この服を着る。


「リント、あの額の石って……」


「リントには印がないから、石だけなのか」


 ミカトもスイトも、やっぱりそう思ったんだ。俺も、そうじゃないかと思った。でも、ちょっと待ってよ。186人だっけ? 俺、そんな……。


「ミカト、スイト、どうしよう……俺、どういう役割があるんだっけ?」


「ええ〜、契約内容によるんじゃないの?」


 ミカトは適当なことを言ってる。スイトはジッと考えているみたいだ。俺は頭の中が、真っ白になっていた。



 次々と、俺達の方へ、いや、俺の方へ、彼らは集まってきた。中村さんの友達もその中にいる。すごい人数だ。


 そして、みんなが近くにたどり着くと、一斉にひざまずいた。手は胸に当て、下男が主人に対する正式な挨拶だ。


「えっ? リントくんに? みんながひざまずいてる」


「精霊じゃなくて、リントくんの眷属けんぞくってやつになったの?」


「中村さん、早瀬さん、そうかも」


「ええ〜っ! じゃあ、瀬里奈はどうなるのよ」


「うーん、俺にはよくわからないんだけど」


 スイトの方に助けを求めたけど、無理だと身振りで断られた。これは、スキルに聞くしかない。まだ、俺の姿は、スキル発動中だ。その理由も知りたい。



『確認したいんだけど、この人達は、俺の眷属になってしまったの?』


『はい、そうです』


『俺、まだ姿がスキル発動中なんだけど、どうして?』


『まだ安全ではないためです』


『カルデラは逃げたよ?』


『はい、あの魔物の脅威は今はありません』


『じゃあ、何?』


『近寄ってきています。眷属を盾にされてもよいかと』


『いや、そんなことできないよ。それに、この人達の取り扱い方法がわからない。なぜ、ずっとひざまずいているの?』


『彼らは、主人の指示を待っています。彼らに自由はありません。すべて、主人に従うことになります』


『えっ? 考えを持たないということ?』


『いえ、もともとの種族の知能に、主人の種族の知恵が加わっています。忠実なしもべです』


 俺が、彼らを見渡すと、彼らはさらに深く頭を下げていた。ちょっと待ってよ。


「リントくん!」


「中村さん、リントは状況確認中みたいだから、静かにしておこっか。たぶん、精霊とリントの仲介役と話してる」


「えっ? あ、うん、わかった」


 ミカトは、俺がスキルと念話していることがわかるんだ。あれ? あっ、そっか、俺が僅かに光るからだよね。



『俺は、眷属を得たことで、何か変わったの? やらなければならないこととか?』


『生かすも殺すもご自由に。ただ、彼らは主人から長く離れていられません』


『長くって、どれくらい離れるとダメなの? 俺が万年樹の島に戻るとマズイ?』


『いえ、この狭い国内なら影響はありません。時間的には、一年以上は無理ですね。彼らは死にます』


『あ、タイムトラベルできない?』


『他の時代に行って、一年以上離れると彼らは死にますね』


『そっか、だから、何度も確認されたんだ。勘違いしていたよ。彼らは腐木の精霊の眷属になるのかと思った』


『精霊は、しばられることを嫌うので眷属を持ちません。その代わりに妖精を使いますから』


『俺は、しばられることになったんだ』


『はい。ですが、眷属化できる状態というのは、主人がエネルギーを与えなければ生きていられない状況ですから。主人は自由にして構いません』


『うーん。この情報は、彼らはわかっているの?』


『はい、スキル発動時に確認しています。眷属になってでも生きたい者しか、眷属化されません。今回は珍しく全員が眷属化しましたが』


『そっか、わかった』


『敵です!』


 スキルは、プチッと念話を切った。感知されることを恐れたのかもしれない。



「ミカト、スイト、何か来る。気をつけて。敵だって」


 俺がそう言うと、二人は剣を抜いた。


『物防バリア!』

『魔防バリア!』


 俺は、ここにいる全員に、バリアを張った。俺の眷属になった彼らは、驚いた顔をしている。


「みんな、立って。いまバリアを張ったから、危険なことが起こったら逃げて。俺を守ろうとしなくていい。逆に邪魔になる。わかった?」


 そう言うと、みな、戸惑いの表情を浮かべたが、一斉に立ち上がった。そして、俺から少し離れた場所に移動した。





「なんだ。もう、爺の呪いは解いたのか」


 4階層から降りてきたのは、見たことのない中年男性だった。でも、この声は、聞いたことがあるんだよね。スキルが言っていた敵なのかな?


 眷属化した人達から何かが伝わってきた。彼らの感情みたい。この男性を神主だと言っているの? いや、神主さんはこんな姿じゃなかったよ。


「貴方は、誰ですか?」


 ミカトがそう尋ねると、男はニヤッと笑った。


「おまえ、ミカンの妖精だな?」


 俺はとっさにマズイと思った。ミカトの近くに行かなきゃ。するとスッと、ミカトとその男の間にワープした。


 その男は、俺が目の前に現れると、一気に不機嫌な顔になった。サーチ魔法でも使っているのか、ジッと俺を睨んでいる。


 俺達のことを下に見ている感じだ。それにこの声、たぶんそうだ。でも、敵なの?


「精霊たまゆら様ですね」


「ほう、万年樹の精霊の使徒、リントだったか? よくわかったのぉ」


「後片付けに来られたんですか。腐木の精霊様が、後片付けは、たまゆら様にしてもらうようにと言って帰られましたが」


「あぁ、後片付けをしようかのぉ」


 彼がそう言った瞬間、天井から石の雨が降り注いだ。


 キャー!


 中村さんと早瀬さんが悲鳴をあげた。でも、眷属になった彼らは何も言わない。



『どうなってるの? スキル』


『…………』


 返事がない。この男が邪魔をしているのか、あえて黙っているのか?



「チッ、バリアか。スキルとは誰のことだ?」


「思念傍受ですか。俺達をどうする気ですか」


 その男は、ニヤッと笑った。


「もちろん、この千年樹の養分になってもらうよ。あー、そっちの妖精は別だ。助けてやる」


 奴は、ミカトを指差した。


「どうして俺だけ助けるんだよ。何をする気なんだ」


「ミカト、コイツはおかしいぜ。精霊なのに邪気がある」


(もしかして……)


「精霊たまゆら様、無の怪人って知ってますか」


 俺がそう尋ねると、奴の顔から血の気がひいたのがわかった。やっぱりね。



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