64、氏神様の神社 〜石室の中に
『オール・バリア!』
俺は、ミカトとスイトにバリアを張った。あれ? いつもと違う。
「リント、そのスキル発動中って魔力も百倍なのか? こんなバリア、初めてだぜ」
「わかんないけど、頑丈そうだよね」
「リント、精霊のチカラが及んでいないんだよね? 死んだら……」
「うん、ミカト、そのままの意味になると思う」
「ミカト、ビビらなくても大丈夫だ。俺達三人は最強だぜ」
俺達は、頷いた。そうだよ、大丈夫。いま、俺は嫌な予感はしない。だから、上手くいく。
「リント、結界を解いてくれ。一気にいくぞ」
「うん、わかった」
俺は、石室を覆っている結界を解除しようと考えた。
【バーニング・ショット極大、結界解除魔法、どちらを発動しますか?】
『オススメは?』
『バーニング・ショットです』
『じゃ、それを発動する』
俺は剣を抜いた。するとボワッと炎をまとった。石室に向けてスッと振り抜くと、フェニックスのような形の炎が石室にぶつかった。
パリン!
大きな高い音が響いた。すると、ボス部屋の石室の扉が開いた。中の魔物達が警戒したのがわかった。
だけど、さっきは、5種類いたはずなのに、目に見えるのは、3種類だ。ボスが二体とザコっぽいのが十数体いる。俺が攻撃手段を考え始めると、敵情報が浮かんだ。
【ターゲティング、ループ・ドール】
【弱点、火】
【ターゲティング、レイスキン】
【弱点、光】
【ターゲティング、人工魔物ロド】
【弱点、雷】
【ターゲティング、パララカ】
【弱点、不明】
【ターゲティング、カルデラ】
【弱点、なし】
あれ? 5種類ある。ということは、2種類は肉眼では見えないんだ。見えるボス二体がどれかはわからない。
「ミカト、スイト、5種類いる。肉眼で見えないのが二体いるから気をつけて」
「え、わ、わかった。リント、それ……」
俺の腕に、さっき放ったはずのフェニックスが戻ってきた。ちょ、俺、燃えないの? まるでペットのように剣を構えた右腕にのってるんだけど。
俺が、左手で魔物達を指差すと、フェニックスは飛び上がった。そして、火が弱点のループ・ドールを次々と倒していく。
(すごいね、フェニックス)
そして、フェニックスが飛び回ると何もない空間に、何かの影が見えた。一つは、悪霊みたいな霊体だ。もう一つは人型をしている。
ミカトは、シャチのような魔物に向かっていった。そして、スイトは土偶のような魔物に攻撃を受けていた。
シャチのような魔物はおそらく人工魔物だね。でも他はわからない。スイトと対峙してる魔物は、すごく硬そうだ。
俺は、姿を隠している二体に向けて、同時に魔法を使おうと考えた。どっちかが光に弱ければ、レイスキンだ。どちらにも効かなければ、スイトの相手がレイスキン。
俺がそう考えると、スキルは準備を始めた。
【光魔法、シャイン・ショット、連射準備が完了しました】
スキルは、戦闘中は文字を出してくる。目線で選べということだ。
肉眼で見えない二体は様子を窺っている。俺じゃなくて、ミカトやスイトの様子を見ているようだ。タイミングを見計って、援護する気だな。
フェニックスは、バサバサとあちこちを飛び回っている。まだ、数体のザコがいるけど、わざと攻撃しないようだ。
(賢いな、フェニックス)
肉眼で見えない敵の場所を俺に知らせているんだ。
『肉眼で見えない二体に、同時に放つよ』
【ターゲティング、レイスキン】
【ターゲティング、カルデラ】
俺は目線で、シャイン・ショットを放つを選択した。俺の左右の手から強い光が、天井付近まで浮き上がり、そして光の雨が降り注いだ。
一瞬、ミカトやスイトに当たると驚いたが、ターゲティングした二体だけに当たったようだ。なるほど、カムフラージュしたのか。
それに、スキルには、見えない二体の名前がわかってるんじゃない。言ってくれたらいいのに。
「リント、ちょ、何してんの」
「大丈夫、ミカトやスイトには当たらないから」
ミカトは、互角みたいだな。消耗戦になっている。スイトは、おされてる。やはり硬いんだ。
光のシャワーを使ったことで、レイスキンは消滅したみたいだ。フェニックスが飛び回っても、人型の魔物の影しか見えない。
念のため、敵情報を確認したいな。
『敵情報、出せる?』
【ループ・ドール】
残り5体、状態:おびえ
【人工魔物ロド】
体力残43%、状態:憤怒
【パララカ】
体力残92%、状態:通常
【カルデラ】
体力残99%、状態:不明
わっ、すごい情報わかるんだ。やはり、レイスキンは倒せたみたいだな。
突然、悪寒がした。
俺は、とっさに横に飛んだ。すると、いま、俺が居た場所がジュッと焼けた。
スイトに加勢しようかと思ったのに、それどころじゃない。でも、どこから攻撃されたのかわからない。
(あっ、さっきのは使える。でも準備が……)
フェニックスが飛び回っているから、奴のだいたいの方向はわかる。でも、奴の動きも速いみたいだ。何かを撃ってくる瞬間、魔力が見える。フェニックスで見えた影とは別の場所から、攻撃が飛んでくる。
俺は、奴の魔力が見えると避けた。だけど、奴は、俺の動きをよんで、避けそうな場所へ撃ち込んできたりもする。
『カルデラをターゲティングして』
『かしこまりました』
『弱点がないということは、効かない攻撃もないんじゃない? 使える属性魔法を順に撃ち込む』
『連射準備を始めます』
俺は、スイトの様子も気になった。あれ、マズいよ。でも、パララカの弱点は不明……。あっ、そうだ。アイツを倒せば、ミカトが加勢できる。
「ミカト、スイトに加勢して」
「いや、俺、いっぱいいっぱい……」
「そいつ、人工魔物だから、俺がなんとかする」
「わかった。って、えっ? リントだって襲われてるじゃん」
「なんとかするから。スイトの相手が厳しいんだ」
「わかった」
スイトは、チラッとこちらを見たが、話す余裕さえないみたいだ。ときどき、ポーションを飲む隙を作るだけで精一杯みたいだ。
【連射準備が完了しました】
『よし、まず雷から。ターゲティングにロドも追加できる?』
【ターゲティング、人工魔物ロド】
【ターゲティング、カルデラ】
奴の攻撃が止んでいる。今だ!
『サンダー・ショット!』
俺が放った雷魔法は、ミカトの近くへ二発とも飛んでいった。
ギシャー!
人工魔物ロドは、雷魔法で倒れ、スッと消えていった。
もう一つが当たったはずの奴の状態はわからない。フェニックスの影も、人型の魔物はとらえていない。倒せた?
だが……俺は、強烈な悪寒を感じた。
次回は、4月25日(土)に、更新予定です。




