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62、氏神様の神社 〜スキルと腐木の精霊

「まさか、この千年樹の精霊の仕業なの? でも、精霊は、樹に邪気を封じ込めた愚か者を追い払ってくれって言ってたよ」


「精霊の言葉が真実なのかは、わからないじゃないか。サーチ魔法は、自分よりも圧倒的にチカラのある者には通用しないぜ」


「そもそも精霊をサーチなんてしてないよ」


 スイトが言うことはわかる。でも、精霊がそんな……。



「リント、このボス部屋にいるのは何かわからないか?」


「ん? だから、たぶん魔物だってば」


「人工魔物か、精霊が生み出す魔物か、どっちだ?」


「えー……そんなのわかんないって」


「リント、スキルを使えば相手の情報が見えるんじゃないのか」


「あっ、そっか。ちょっと待って」




『スキル「精霊の使徒」を発動してください』


『かしこまりました』


 俺は淡い光に包まれ、姿が変わった。


 そしてボス部屋の中に居るものを見た。



【ターゲティング、ループ・ドール】

【弱点、火】


【ターゲティング、レイスキン】

【弱点、光】


【ターゲティング、人工魔物ロド】

【弱点、雷】


【ターゲティング、パララカ】

【弱点、不明】


【ターゲティング、カルデラ】

【弱点、なし】



『攻撃には結界を消去する必要があります。結界解除魔法を発動しますか?』


『ちょっと待って。解除しません。この順番に意味があるの?』


『弱いものから順に表示しています』


『人工魔物ってついているものは?』


『魔物工場で作り出された魔物です』


『それ以外のものは、ここの精霊が作り出したもの?』


『いえ、人工魔物以外のものです。人工樹のダンジョンのモンスターや、精霊が作り出したモンスターや魔物、さらに勝手に生まれた魔物もいます』


『モンスターと魔物の違いは?』


『私の分別では、ボス部屋にいるレベルのものは魔物、各フロアにいるものはモンスターとしています』


『じゃあ、あの5種類は?」


『ループ・ドールはこのダンジョンのモンスター、レイスキンはこのダンジョンの魔物、ロドは魔物工場産の魔物、パララカは混合種の魔物、カルデラは測定不能です』


『えっと、強い?』


『カルデラはわかりません。その他は、排除可能です』



 ループ・ドールというモンスターは、かなりの数がいるようだ。それ以外は、一体ずつか。


 俺はいま見た情報を、スイトに伝えた。スイトは、ミカト達に、かなりの数のモンスターや魔物がいると、拡声器で伝えた。



「リント、下手に結界を解くとヤバそうだな。そのなんちゃらドールが、他の魔物を世話しているってことか?」


「いや、わからないけど、このダンジョンのモンスターなら、精霊の力で作り出してるんだよね。ということは……あっ、食われた」


「ん? なんちゃらドールが?」


「うん、食料みたいだね」


「確かにボス部屋にザコモンスターがいること自体が変だからな。それに、ずっと部屋にいるのも変だ。他のボス部屋なら、魔物は別の空間にいるんじゃないのか」


「だよね、入った瞬間はボスは居ないもんね」



 スイトは、ジッと何かを考えている。そして、何かひらめいたみたいだ。


「リント、そのスキル発動中の声の主って誰?」


「えっ? 考えたことないけど……そういえば、最近は普通に会話ができるようになったけど」


「万年樹の精霊じゃないのか?」


「いや、話し方が丁寧すぎるから違うと思う」


「聞いてみろよ。万年樹の精霊なら、ここの精霊がどうなっているのか、わかるんじゃねぇか?」


「確かに! 聞いてみる」




『あの、ボス部屋はなぜ結界が張られているかわかる?』


『理由はわかりません。術者の種族はわかります』


『教えて』


『精霊です』


『えっ? ここの……たまゆら千年樹の精霊?』


『そうです』


『じゃあ、この木に人間を封じ込めたのは?』


『精霊です』


『やはり、この、たまゆら千年樹の精霊?』


『いえ、違います。この場にいる腐木の精霊です』


『えっ? どこに……あ、あの木かな』


 俺は見回すと、すぐ近くに葉のない枝だけの木を見つけた。さっき見たときは、他の木と同じように見えた。でも、スキルを発動中の今は、枯れ木に見えるんだ。


『なぜ、人間を閉じ込めたんだろう』


『理由はわかりません』


『精霊の善悪ってわかる?』


『悪しき精霊は、悪霊や怨霊となります。精霊である限り、何かを守ろうという意志を持ち続けています』


『貴方は精霊? いつも教えてくれるけど』


『私は、スキル「精霊の使徒」です』


『精霊じゃないの?』


『はい、精霊と使徒を繋ぐスキルです』


『そっか、わかった。ありがとう』




 俺は、スイトに、この話を伝えた。スイトは、精霊が善とは限らないと言っていたけど、少なくとも悪しき心を持つわけじゃないんだ。


 スキルは、この千年樹の精霊のことを、『精霊』と呼んでいた。もし、悪しき心があるなら、呼び方を変えるはずだからね。



「リント、でも、何かを守ろうとしていて、それが俺達にとっては害になるかもしれないぜ」


「うん、確かにそうだね。ここの状況は、腐木の精霊が知ってるよね」


「あっ、そうだな。どの木だ? 枯れ木なんてないぜ?」


「あの木だよ。人間を取り込んでいない太い木があるでしょ」


「ん? 太い木?」


 もしかしたらスイトには見えないのかもしれない。


「とりあえず、話を聞いてみようよ。ついてきて」


「あぁ」




 俺は一本の木の前に立った。


「腐木の精霊、聞こえますか?」


『うるさいわぃ、わしは、ここから出て行く気はないぞ』


 スイトの目には、やはり見えていないみたいだ。なんだか別の木を見ている。


「俺は、貴方を追い出すために来たわけじゃないんです。木に封じ込めてある人間を解放してもらえませんか」


『何を言っておる? そんなことをすれば、人間はバケモノに食われてしまうぞ。せっかく守ってやっているというのに』


「何から守っているのですか」


『あの石室じゃよ。どこかの愚か者が壊したようじゃ。石室の魔法陣から妙なものが入り込んできよった』


「魔法陣が壊れているのですか? なぜ?」


『人間どもが、バケモノを追いかけてタイムトラベルしておるじゃろ。ここの精霊が、わざと転移事故を起こして壊したのじゃ。そのせいで、制御不能になっておる』


「わざと壊した?」


『仕方なく、わしが守りに来てやったのじゃ。たまゆらは、愚かだからな。自爆して自滅じゃ。阿呆が』


「4階層にいた男は? ここに出入りしていましたよね」


『人恋しくて触りに来ていた男か?』


「えっ? 人恋しい?」


『木に触れて、いつも、もそもそと話しておったようじゃが。変な魔物じゃ』


(精霊から見れば、魔物……なんだ)



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