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54、氏神様の神社 〜最下層に何かがいるらしい

「さぁ、行くぞ。リント、バリアよろしく」


「スイト、了解〜。みんなにとりあえず物防バリアを張るね。あまり強い魔力は感じないから、ここのモンスターは、物理攻撃系だと思う」


『物防バリア!』


 俺はそう言って、みんなにバリアを張った。中村さんと早瀬さんは驚いた顔をしていた。


 そっか。そういえば、二人が一緒のときは、いつも人工樹のダンジョンだったよね。俺は、彼女達の実力がわからない。真剣に戦うべきモンスターがいる場所に一緒に行ったことはないからだ。


「ちょ、何? 青空くん達の戦闘モード、半端ないんだけど。いつもこんな感じなの?」


「中村さん、万年樹のダンジョンだと、こんな感じだよ。と、言っても、まだ5階層クリアできてないんだよね。いつもボス部屋が混んでるから」


「ミカトは並ぶのが面倒だと言うし、リントは物理攻撃力はが低いから、階層を進むことに慎重なんだ。だが、もうそろそろ、さらに潜ってもいいんじゃないか」


「えー、俺まだ5階層のモンスター、一撃で倒せないからさ」


「いま物理攻撃力いくつ? さっきステイタス見て暗くなってただろ」


「15,000は超えたんだけど……」


「なかなか成長しないね〜。俺も、スイトになかなか勝てない」


「ミカト、いくつ? 」


「あまり変わってないよ。最近サボってたからな」


 ミカトは女子二人の前では言いたくないみたいだ。


 こないだは、10万超えたって喜んでたよね。レベルは、たぶん600前後だろうな。レベル500を超えてからは、また俺と二人の差がついてきたんだ。運の数値の差が出てきたみたいだな。



 中村さんと早瀬さんは無言になった。


 モンスターが襲いかかってくると、会話どころではなくなるんだよね。その気持ちはよくわかる。


 ミカトとスイトは、いつも話しながら、バッサバッサと倒していくんだよね。ほんと、いつも、俺は劣等感だよ。



 ここのモンスターは、まだ1階層だということもあって、俺でも一撃で倒すことができる。なんだか自分が強くなったのかと錯覚してしまう。


 ミカトやスイトは、引きつけて、数体一気に倒している。半端ないよね。モンスターよりも、ミカトやスイトの方がバケモノに見えるよ。



 俺は、千年樹が作り出した分身らしき木を見つけた。


「ちょっと調べてくるから、カバーして〜」


「あぁ、わかった」


 近くにいたスイトに、モンスターが近寄らないように頼んで、俺は、その木に近づいた。



 わずかな霊力を感じる。俺はその木に触れた。


『ほう、よく見つけたな、万年樹の精霊の使徒』


『気をつけて探していましたから。問題の場所はどのあたりですか?』


『ここの最下層じゃ。完全に、占領されておる』


『何階層まであるのですか?』


『5階層じゃ。しかし、4階層にまで邪気を広げておる』


『邪気というのは、空気ですか? モンスターですか?』


『行けばわかる。ワシは、もうすでに4階層には入れないのじゃ』


『そう、ですか。わからないのですね……わかりました』


(あっ、霊力が消えた。逃げたか)



 俺が木から手を離すと、ミカトとスイトがすぐそばにいた。

 中村さんと早瀬さんは、少し離れている。


「どうだった? リント」


「うん、このダンジョンは5階層まであって、その最下層に退治してほしい何かがいるみたい。邪気は4階層にまで広がっていて、千年樹の精霊は、4階層から下には入れないらしいよ」


「ということは、千年樹の精霊は、最下層の状況がわからないのかな?」


「そうみたい。逃げるように消えたから」


 そう言うと、ミカトはニヤニヤと笑った。一方で、スイトはシラーッとしている。


「その邪気って何だ?」


「スイト、それも教えてくれないよ。行けばわかるって」


「たまゆら千年樹だったか? 精霊がそんなんだから、ここが乗っ取られてるんじゃないのか」


「スイトは厳しいねー。でも、正論だよね。じゃあ3階層まで一気に進んで、そこでちょっと休憩する? じゃないとリントの体力がもたないでしょ」


「あぁ、そうだな。リントの体力は、俺達の半分の半分くらいだっけ? 体力もなかなか上がらないな」


 スイトは、呆れたように言ってるけど、俺を気遣ってくれていることは知ってる。でも、なんだかお荷物みたいな気になるんだよね。別にいいんだけど……事実なんだから。



「ちょっと、青空くん達、何をサボってんのよ」


 やっと追いついてきた中村さんが怒っていた。彼女が意味もなく怒っているときは、余裕のないときなんだよね。


「中村さん、キツイ? 大丈夫?」


「何よ、リントくんだって弱いんでしょ」


「ちょっと、みく〜、そんな言い方しちゃダメじゃない」


「早瀬さん、いいよ。俺、わかってるから。中村さんが意味不明で不機嫌になるのは、余裕がないってことだからさ。悪気がないことは知ってる」


「へぇ、リントくん、腹が立たないの?」


「うん? なぜ?」


「あ、いいの、別に。へぇ、そっか、ふぅん」


「ちょっと結花、何を言ってんのよ」


「いや、何でもないよ。リントくんって、みくのことをよく見てるなって思っただけ〜」


「なんで……そんなことないでしょ、リントくんなんて……」


 なぜか、中村さんがパワーダウンしていた。うーん、そこまでキツイかな? 女の子だもんな。でも、確か、俺より体力は高いと思うんだけどな。



「とりあえず、3階層まで一気に進みたいんだけど大丈夫かな? そこで、いったん休憩するよ。リントも体力ないし」


「ミカトくん、3階層から先がまだあるの?」


「いまリントが調べたんだけど、5階層が最下層みたい。でも4階層あたりから、異変がありそうなんだ」


「そう……大丈夫かな、私達」


 早瀬さんは不安そうにしていた。だよね、いきなり来て最下層まで行くんだから戸惑うよね。


「戦闘力は問題ないよ。二人とも強いし、頼りにしてるよ」


「そっかな。うん、がんばる」


 そう言って、早瀬さんは、ミカトをジッと見つめた。それにこたえるように、ミカトはやわらかく微笑んだ。


 なんだか、ミカトと早瀬さんとの間には甘い空気が漂ってるんだけど……でも、ミカトは気づいてないんだよね。



 そして、俺達は1階層のボス部屋に入った。


 ボス部屋の仕組みは、万年樹と同じだった。扉が閉まってボスが出てくると、ミカトとスイトが瞬殺していた。


 カッコいいよね、うん。


 中村さんはあまりの速さに驚き、早瀬さんはミカトに見惚れている。


「さぁ、ドロップ品を拾って、次行くぜ!」


 俺達は、2階層へと進んだ。



次回は、4月11日(土)に更新予定です。

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