表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/153

51、氏神様の神社 〜夏祭りの屋台

「じゃあ、いこっか」


 俺達は、巫女さん風のお姉さんから、金券五千円分を受け取り、神社の夏祭り会場へ移動した。


 中村さんは白地に赤い花の模様、早瀬さんは紺色に白い花の模様の浴衣を着ていた。二人ともいつもよりも大人っぽく見える。



「お〜、中村さんも早瀬さんも、浴衣になるとガラリと雰囲気が変わるねー。似合ってるよ」


「そう? ミカトくんも似合ってるよ。というか、青空くん達、反則よね」


(ん? 何が反則?)


 中村さんと早瀬さんが互いに頷き合っている。


「何が、反則なんだよ。何も悪いことしてないぜ?」


 スイトがそう尋ねると、早瀬さんがすこし頬を染めて反論した。


「スイトくんもミカトくんもリントくんも……なんかモデルみたいなんだもん。ずるいよ」


 そういえば、平成時代に行ったときも、女性3人組に、モデルかと言われたっけ? 


 俺は、モデルの意味がよくわからなかった。ファッションショーで歩く人達だよね?


「それって、悪いことなのか? モデルってそもそもなんだよ。服を見せる仕事なんだろう?」


「俺も、タイムトラベル先で、モデルみたいって言われたことあるよ。どういう意味?」


 スイトと俺がそう尋ねると、女子二人は驚いた顔をした。ミカトも、わかってない顔だ。よかった。


「俺もモデルがよくわからない。芸人みたいなものかな? それなら嬉しいけど」


 そういえば、最近、ミカトはお笑い番組ばかりみている。屋敷の休憩室には大きなテレビがあるんだけど、お笑い番組をやっているときは絶対にミカトがいるんだ。


 いつだったか、自分の部屋でみればいいのに、とスイトが言ったことがあった。でもミカトは首を横に振った。他の人がどの場面でどれだけ笑うかを知りたいと言っていたっけ。


 ミカトは本気で、お笑い芸人を目指しているのかもしれない。



「モデルを知らないなんて……逆にびっくりだよ。周りの女の子達を見ればわかるでしょ」


 中村さんがそう言うので、俺は周りに目を向けた。うん? 別に変わった様子はないんだけど。


「中村さん、別にいつもと変わらないよ? 意味がわからない」


「リントくんは、いつも女の子に見られてるわけ?」


「んー? 俺が普通の人間じゃないから珍しいんじゃないの?」


「あのねー、普通の人は青空くん達が妖精だなんて、気づかないよ」


「えー? そうなの?」


 ミカトも驚いていた。なんだ、ミカトも珍しいから見られると思ってたんだ。


「そんなこと、どうでもいいじゃねーか。それより、あっちにスイカがどうのって書いてあるんだが」


 スイトが珍しく祭りにテンションが上がっていた。スイトが指差した方を見ると、確かにスイカのマークが見えた。スイカ割り? なんか野蛮なんじゃないの?


 この距離だと、スイトやミカトはまだ見えていないと思う。話題を変える方がいいよね。



 俺はあちこち見回すと、リンゴ飴、ミカン飴、イチゴ飴の屋台を見つけた。


「あー、あっちに、リンゴとミカンがある!」


「リント、まじか?」


 ミカトが食いついた。


「スイト、先にあっちを見に行こうよ」


「二体一では、仕方ないな。ミカトが食いついた時点で諦めたが」


「スイトくん、順番に回ればいいよ。リンゴやミカンってことは、リンゴ飴やミカン飴かな。私は子供の頃は、イチゴ飴が好きだったな」


「え〜、早瀬さん、ミカンは嫌い?」


 ミカトがそう尋ねると、早瀬さんはパッと赤くなった。


「嫌いじゃないよ。冬はいつも、親戚の家にいくとコタツでミカンだし〜。す、好きだから」


「そっか、よかった〜」


 ミカトがニコッと笑いかけると、早瀬さんはうんうんと頷いている。うーん、もどかしいよな。早瀬さんがミカトのことを好きなのは、みんなわかっている。でも、ミカトにはそういう感覚がなさそうなんだよね。



 俺達は、リンゴ飴、ミカン飴の屋台へと近づいた。


 リンゴだけでなく、いろいろなフルーツを飴でコーティングしてあるみたいだ。色も様々で、怪しげな色の飴もあった。


 俺は、リンゴ飴は知っていたが他は知らなかったな。縁日での屋台の定番だ。普通のリンゴが大きすぎるから、姫リンゴを使ったものもあるんだっけ。


 屋台には、リンゴ飴はたくさんの色が揃っていた。姫リンゴが圧倒的に多いな。やはり普通のリンゴは、食べ歩きには大きすぎるんだと思う。


「なんか久しぶりだよ。子供に戻った気分〜」


 早瀬さんは、テンションが上がっている。


「でも、リンゴ飴って、中のリンゴがすっぱいから、結局飴を食べて、口のまわりがベトベトになるんだよね」


 中村さんは、あまり良い印象がないみたいだった。


「だから、イチゴ飴がいいんだよ。小さくて食べやすいし、そんなにすっぱくないもの」


「ミカン飴は?」


「えーっと……」


 ミカトの質問に早瀬さんは答えにくそうにしている。美味しくないのかな?


「ミカン飴は、筋をちゃんと取ってないんだよねー。作る人の怠慢だと思う。私は、葡萄飴がいいのに、あまり売ってないんだよね」


「あー、葡萄飴は、確かに食べやすいよね。でもあまり売ってないよね」


「スイカ飴はないのか?」


「うん、聞いたことないよ。スイカといえば、スイカ割りかスイカくんだよね」


 早瀬さんが言っちゃったよ。せっかく俺がスイカ割りからスイトを守ろうとしてたのに。


「スイカ割り? スイカくん?」


「うん、スイカ割りは、どこかでやってるんじゃないかな? 目隠ししてスイカを割るゲームだよ。スイカくんは、アイスキャンディだよ」


「スイカくんは、アイス屋さんで売ってるんじゃない? さっきすれ違った子供が持ってたよ」


「へぇ、そうか」


 スイトは、あちこちキョロキョロしていた。スイカくんが気になったみたいだ。よかった、スイカ割り以外のものがあって。



「せっかくだから、リンゴ飴か何か買って、食べながら回ろうよ。金券たくさんあるんだし」


 中村さんの提案で、俺達はリンゴ飴を買うことにした。


 ミカトは、ミカン飴にすると言い、早瀬さんもミカン飴を買っていた。わかりやすい。


 俺はリンゴ飴にしようと思ったけど、種類が多すぎて選べない。中村さんもリンゴ飴を見ているから聞いてみようか。


「小さな姫リンゴのリンゴ飴なら、どの色がいいかな?」


「うん? リントくん、小さなリンゴは、和リンゴだよ。何を間違えてるの? 姫リンゴなんてないよ?」


「えっ? いや、和リンゴは明治時代あたりで、ほぼ消滅したでしょ」


「リント、どうしたんだ? 変な夢でも……あっ!」


 スイトが何かに気づいた。何? 夢じゃないよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ