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50、国立特殊技能高等学校 〜夏祭りのミッション

「おはよう、青空くん達」


「おはよう……中村さんはどうしていつも、俺達を漫才トリオのようにひとまとめに呼ぶんだよ」


「いつも、つるんでるじゃない」


「おはよう、ミカトくん、スイトくん、リントくん」


「あぁ、おはよう。早瀬さんはいつも席順で呼ぶよな」


「あはは、そうかな?」



 あれから、俺達は、高校生活を楽しんでいる。毎日、高校に行くのは、ミカトがお食事ダンジョンを制覇したいからなんだけど……。  


 この高校は、特に制服があるわけじゃないけど、みんな似たような服を着ている。実技訓練用のいわゆる体操着だ。だから、他の高校からは、この体操着が制服だと思われていたりするらしい。


 俺達も、その体操着だ。最近は暑い季節になってきたから、半袖の人が増えてきた。俺達はまだ長袖なんだけど。


 そして、最近はいつも、女子二人とスイトが、毎朝この会話をしている。俺もミカトも軽く挨拶するだけなんだけど、スイトはいつからか、気になり始めたみたいだ。


 確かに中村さんは、俺達をひとまとめに扱っている。そして、早瀬さんは、席替えをすると、俺達を呼ぶ順番が変わる。それに気づくスイトもすごいよね。




「おーい、みんな席につけ。今日は大事な話がある」


 今日は珍しく、俺達のクラスの担任の先生がホームルームを担当するようだ。ムッチーと呼ばれている木戸先生だ。なぜムッチーなのかはわからない。


「ムッチーの大事な話って、だいたいエロヤバイ話じゃん」


「今日は、エロは封印しろ。健全な話だ」


 木戸先生は、人間離れした物理攻撃力を持つ半妖。人間と妖怪の間に生まれたそうだ。富士山の樹海には、いくつかの妖怪の里があるらしい。


 先生は、みんなが静かになるのをのんびりと待っている。気が長いんだよね。でも、その間にいろいろと様子を探っているのがわかった。頭の中を覗けるのかもしれない。


「先生、大事な話って何ですか」


 風紀委員の中瀬さんが、声を上げた。彼はいい奴なんだけど、せっかちというか、気が短いんだよね。


「みんな、そろそろいいかー」


 先生がそう言うと、やっと静かになった。



「氏神様の夏祭りだがな、このクラスに依頼が来た。あくまでもただの高校生のフリをしつつ、会場のケンカやトラブルの仲裁をしてくれ」


「えー、つまらないじゃん」


「夏祭り実行委員から、みんなには、浴衣の無料配布と、夜店で使える小遣い五千円が支払われるぞ」


「えー、祭りの金券?」


 また、クラスは騒がしくなった。先生は、のんびりと静かになるのを待っている。いや、違う。やはり頭の中を覗いているんだ。



 この高校は、特殊な目的で設立されたらしい。国の防衛をになう高校だといえるみたいなんだ。ここには普通の人はいない。みんな、人間でも魔法を使うんだ。


 夏祭りの治安維持のミッションなんだよね。僕としては初ミッションだ。


 俺達のBクラスは、基本、武闘系らしい。Aクラスの方が優秀なのかと思ってたけど、ちょっと違うみたいなんだ。


 即戦力になるのはBクラスで、直接このような地域からの仕事依頼が飛び込んでくる。


 Aクラスは、政治家や科学者などの有力者の子供が多い。俺達以外の7人はAクラスだ。浮き島の妖精の王族だから、有力者ともいえるのかもしれない。



「何か予兆か予告があるんですか? 具体的なリスクは?」


 また、中瀬さんが質問した。もしかすると、彼がいないといつまでたっても話が進まないのかもしれない。


「あぁ、今年は、ちょっと魔物のリスクがある。それに、夏になるとまた幽霊騒ぎが起こるだろ。一応、除霊師も、用意するらしいぞ」


「去年みたいに犠牲者が出るとマズイですね。先生も同行されるんですよね」


「当たり前だろ。タダ酒が飲めるんだからな。あっ、未成年者は飲酒は禁止だからな」


「ムッチー、それ、同行って言わねーんじゃねぇか」


 木戸先生は、バレたかと笑っていた。中瀬さんは真面目なんだな。冗談で言っていることが冗談に聞こえないみたいだ。


「ということで、今夜からよろしく。一日当たり五千円の小遣いだぞ。毎日いかなきゃ損だぜ。氏神様の神社に立ち寄ってくれってさ。ってことで解散」


 みんなは、五千円なんてショボすぎると騒いでいる。確かにダンジョンに潜る方が圧倒的に稼げるからね。


 でも、これはここの学生の使命でもあるんだ。ちゃんとやらなきゃいけないよね。



「青空くん達、行くでしょ?」


「いつ?」


「当然、今日からの三日間、毎日に決まってるじゃない」


「えー、一日でいいんじゃないの?」


「リントくんは、それだからダメなのよ。ミッションをこなさないと、高校卒業したらいいとこに進学できないよ?」


 俺達は、20歳までしか地上にはいない……はず。でも、浮き島に戻れなかったら……きちんと進路を考えておくべきかな。




 俺達は、中村さんに無理矢理、氏神様の神社へと連れていかれた。ミカトは興味津々だけど、スイトはあまり乗り気ではないみたい。


「こんにちは〜、特技高校から来ましたー」


(特技高校?)


「こんにちは。さっそくありがとうございます。中村さん、早瀬さん。えっとそちらの三人は……ごめんなさい、名前が出てこないです」


 神社の巫女さん風のお姉さんが、焦った顔をしていた。いちいち学生の名前を覚えているなんて、すごいな。


「編入生だよ。三人とも青空くん。呼び名は、青空くん達でいいから」


(おーい、中村さん……)


「そか、よかった。忘れてしまったのかとびっくりしたわよ。浴衣は、好きな物を選んでね。早い者勝ちだから。下駄や草履も、忘れずに選んでね」


 どうやら、ここで着替えるらしい。


 女子二人は、楽しげに選び始めたが、俺達はさっぱりわからない。俺は、安土桃山時代に行ったときは着物だったけど、浴衣はまた全然違う。


 俺達がボーッとしていると、女子二人が選んでくれていた。Tシャツを着てから浴衣を着なさいと、無地のTシャツと短パンも渡された。


「えー、暑いんじゃない?」


「浴衣でケンカをすると、紐を引っ張られると浴衣は脱げちゃうよ?」


「あー、なるほど」


 俺達は、苦労して浴衣に着替えた。中村さんのイメージなのかわからないけど、スイトは紺色にストライプ、ミカトは白地に青い図柄、俺のは黒色の無地だった。


「なんか、俺だけ、無地って地味じゃない?」


「赤い腰帯がリンゴらしいじゃん」


「うーん……逆に派手かもね」



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