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47、万年樹の島 〜人工魔物の素材や餌?

「じゃあ、次行ってみよう」


 俺達は、そのまま5階層へと進んだ。


「この階層のボスのドロップ品は、装備だぜ。冒険者がよく着てる軽装備だ」


「えっ? 鎧? やったね」


「リント、鎧じゃなくて軽装備だよ。鎧ほど重くないから誰でも装備できるんだって」


「へぇ、そうなんだ。スイトもミカトもよく知ってるよね」


「他の冒険者とパーティ組んだからな」


「あっ、またリントが、ぼっち気分になってる。リントは、きのこちゃんの手伝いもあるんだから、仕方ないじゃん」


「うん〜」


 ミカトは鋭いんだよね。でも、たぶんスイトもわかってきてるのかも。だってやっぱり、俺だけ置いて行かれてる感じっていうか……ぼっちは嫌いなんだから仕方ないじゃないか。


 俺、幼少期に何かトラウマでもあるのかな?




 5階層は、ボーナスステージの4階層よりは減ったけど、3階層よりもけっこう人が多い。

 それに、4階層までは普通の普段着の人ばかりだったけど、5階層は装備品を身につけている人が多いみたいだ。


「5階層のボス部屋は混んでるだろうな。みんな軽装備を強化したいから、何度も挑んでるんだろう」


 なるほど、スイトの予想は当たってる気がする。1階層のボス部屋で再びドロップした剣と盾は、合成しますかって聞かれて強化したんだったよね。


「じゃあ、俺達も5階層を周回する?」


「リント、先に進もうよ。リントのバリアがあるから、大丈夫じゃん」


「あぁ、そうだな。周回するなら、もっといい装備の階層を周回しよう」


 俺は、二人が俺のバリアを頼りにしてくれてることが嬉しかった。うん、頑張ろう。



 5階層は、モンスターも弱く感じた。4階層のような特殊な状況をクリアしたから、随分ラクに感じるのかな。


 暑くもないし、特別変わったモンスターもいない。


 俺達は、サクサクと進み、ボス部屋へとたどり着いた。ボス部屋の前には、長蛇の列ができている。


「スイトの予想どおりだったね」


「いや、予想を超えてる。どうする? 並ぶか?」


 俺がスイトにそう話していると、ミカトはその場に座り込んだ。疲れたのかな?


「お腹減ったよね。帰らない?」


「ミカト、腹減りなら携帯食あるぜ?」


「うん、なんか、嫌な予感がするんだよね。というか、これがさー、ほら見て」


 ミカトは、ペンライトのようなものを見せた。なんだろう? チカチカと黄色に光っている。


「ミカト、それは何?」


「うん、地上に下りるときに、渡されていたみたい。たぶん、俺の兄が仕込んだんだよ」


「ミカトの兄貴?」


 俺は、ミカトが何を言ってるかわからなかった。でも、スイトは何か気づいたみたいだな。周りを見回している。危機探知機なのかな。


「とりあえず、出ようか」


 スイトの提案で、俺達は、5階層の赤い灯のある扉から、ダンジョンの外へ出た。


「この時間なら紅牙さんは居るだろ。ドロップ品を買い取ってもらいに行くぞ」


 元気のないミカトに代わって、スイトがリーダーシップを発揮している。俺達は、初心者の買取屋に向かった。




「なんや? おまえら、元気ないみたいやな。高校行くようになって毎日楽しいんちゃうんか?」


 紅牙さんは、暇そうな顔で俺達をからかっていた。いや、暇というよりやる気がない感じかな。


「紅牙さんは、何かあったんですか」


 俺がそう尋ねると、彼は椅子から立ち上がった。


「リントなかなか鋭くなったやんけ。ちょっとな、ほんま、やってられへんで」


 彼は頭をかきながら、ため息をついた。するとスイトが口を開いた。


「紅牙さん、たぶんミカトと同じですよね。ミカトは、探知機みたいな魔道具を持たされているみたいなんです」


「うん? ちょっと見せてみー」


 紅牙さんに言われて、ミカトはペンライトみたいなものを出した。あれ? さっきは黄色くチカチカと光っていたのに、今はただのペンのように見える。


「さっき、これが黄色く点滅していましたよ。それを見て、ミカトはダンジョンから出ようと言い出したんです」


「今は反応なさそうやな。なるほど、ミカトは、この地上でずっと生きていくつもりか?」


 俺は何の話か、全然わからないけど、理解しようと耳を傾けた。


「兄は、俺が戻るとは思ってないみたいです。だから、家宝の魔道具を俺に渡したんですよ。しかも、気づかないうちに仕込まれていたみたいで」


「そうか。ミカン王国は、過去に戻った人がおらんからやろ。兄さんと仲が悪いと言ってたが、あえてそう振る舞ってたんちゃうか?」


「さぁ、どうでしょう」


「まぁ、それを持ってるなら、おまえらは大丈夫か」


 ミカトは複雑な表情をしていた。スイトが、俺をチラッと見て何かに気づいたみたいだった。


「リントは、全くわからないだろ? リントは狙われないからな」


「うん、全然わからない。何が起こってるの?」


 スイトは紅牙さんをチラッと見ていた。すると、紅牙さんが口を開いた。


「その魔道具は、自分に命の危機が迫ってるときに光る危機探知機や。ミカンの妖精は特に狙われるんやろな」


「そうみたいです」


「ミカンはミカン科や。リンゴはバラ科、スイカはウリ科やろ? ミカン科の属性を持つ動物からは、人工魔物を作りやすいんや」


「えっ? 魔物の話?」


 紅牙さんは、あぁと小さく呟いた。


「リント、さっきダンジョンの同じ階層に、そのハンターがいたみたいだ。魔物にしやすい種族を探している連中がいるんだ。俺もミカトほどじゃないけど、狙われることがあるから」


「スイトも? 今の説明じゃ、スイカはウリ科だから関係ないんじゃ……」


「ウリ科は、魔物を強くする餌になるらしい」


「えっ……」


「紅牙さんもですよね」


 スイトは、何を知ってるの?


「あぁ、まんじゅ爺は、ミカンの妖精やからな。息子の俺も狙われてる」


「えっ、ミカンの妖精……まんじゅ爺は大丈夫なんですか?」


「爺さんは狙われてへん。あれでも、精霊の使徒やからな。人間としても、精霊の使徒を失うのは損失がでかいというくらいは、考えてるみたいや」


「人間に狙われるんだ……知らなかった」


「リント、隠しててごめん。人工魔物は、地上に降りた妖精を捕まえて、開発されたらしいよ」


「いまは人間なのに?」


「人間から見たら、俺達は妖精だよ。だから、地上に追放された元妖精の悪評がすごいだろ? 悪評高い種族だから、捕まえて実験台にしても……世論はむしろ好意的に受け止めるみたいだよ」


「人工魔物のせいで、この国に危機が近づいているのに」


「だからこそ、より強力な人工魔物を作り出そうとしているのかもしれない」



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