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41、国立特殊技能高等学校 〜始業式

「静かに! 今日から3年生だぞ。騒ぐな。編入生を紹介する。今月は3人だ。入ってきて」


 俺は、ミカト、スイトと共に、国立特殊技能高等学校に来ている。今日が始業式らしい。クラスは能力分けをされているらしく、新学年になっても、一斉のクラス替えはしないようだ。


 クラスには何人かの担任の先生がいるらしい。俺達が廊下で待っている間に、簡単な説明を受けた。


「さぁ、教室の中へどうぞ」


 ガラガラと扉が開けられた。ミカト、スイト、俺の順で教室の中へと入った。


 キャー!


 なぜか、女子生徒から叫び声が上がった。俺達はそれにちょっと動揺しながら、手招きされた先生の横に並び、名前と簡単な挨拶をした。


「おまえらの席は、とりあえず空いているところに適当に座ってくれ。あとで席替えを発表する」


 そう言われても、こんな環境は初めてのことで、どうすればいいかわからなかった。ミカトが最初に動いて近くの空いている席に座った。スイトもさっさと歩いて行った。ちょっと俺だけ? 軽いパニックでどこが空席なのかわからない。


「ここ、空いてるよー」


 女子生徒から声をかけられて、俺はさらに戸惑った。ミカトやスイトは、女性冒険者とも交流があるようだけど、俺ははっきり言って、万年樹の妖精くらいしか話したことがない。


 彼女は、女性じゃなくて幼女だから、女性と話したのは、タイムトラベルで平成時代に行ったときに会った3人組だけかもしれない。


 戸惑いながらも、俺は教えられた席に座った。その隣には、試験で来たときに会った風紀委員がいた。ほんとに同じクラスだったんだ。


「中瀬さんでしたっけ」


 俺が声をかけても、彼は無視した。名前間違えた?


「青空くん、中瀬は放っておけばいいよ。教室内では私語禁止だって言って、先生にあてられたときしか声を出さないんだよ」


「そう、なんだ。名前を間違えたかと思った」


「私は、中村みく、よろしくね〜」


「はい、中村さん、よろしくお願いします」


 声をかけてくれたのは、空席を教えてくれた人だ。髪は染めているのかもしれないけど、金髪だった。顔は人間の、日本人の顔に見える。俺は、まだ人間の顔の良し悪しがわからない。顔がみんなのっぺりとしているように見えるんだよね。


「ふぅん」


「どうしました?」


 なぜか、彼女は俺をジッと見ていた。


「私を見て、無反応な人って初めて」


「あ、すみません。俺はまだ、女性と話すことになれてなくて」


「なんとも思わないの?」


「えっと、金髪のことですか?」


「ふぅん、青空くんって鈍いのね」


 これは、怒らせた? でも、そんなことを言われても……。


 すると、先生から注意を受けた。


「こら、そこ、しゃべってないでこっち見ろ」


 俺は、前を向いた。中村さんは、無視して俺をジッと見ている。なんだか、居心地が悪い。



 先生からは、新学年の心構えの話や、授業の時間割、政府の要請の仕事の話が続いた。


 この高校は、付近で異変があったときに、要請があれば、3年生が率先して、救援に行かなければならないようだ。授業は単位制で、試験で合格点が取れるなら、授業の出席も不要らしい。


 なんだか話を聞いていて、俺のイメージしていた学校とは違って、軍の養成学校みたいだと思った。


 さらに、ダンジョンでのレベル上げも推奨しているみたいだ。日常生活をしていても、仕事量によってレベルは少しずつ上がるらしいが、やはりダンジョンが効率がいいそうだ。


 ただ、毎週1回のホームルームには、必ず出席するようにと言われた。ということは、試験で合格点が取れるなら、週イチのホームルームだけ来ればいいってことなんだ。


(じゃあ、今までとあまり変わらないかも)



「じゃあ、今月の席替えをするぞ」


 席替えは、名前を呼ばれた順に、その番号の付いた席に座るらしい。みんなは一気に騒がしくなった。


 俺は3番目に呼ばれた。1番目がミカト、2番目がスイトだったから、俺達は窓際の席に縦に並ぶ形になった。すると、教室内がどよめいた。何? 


 風紀委員の中瀬くんとは随分離れた。さっき話した中村さんが、7番目で、スイトの隣、俺の右斜め前の席になった。


 縦に5席、これが8列ある。教室は、40人分の机が並んでいる。でも、クラスの人数は、29番目までしか居なかった。廊下側の2列は物置きになっている。


 そして、今日はこれで終了だった。始業式って、授業はないんだね。




「リント、スイト、お食事ダンジョンに行こうぜ」


「やっぱりな、ミカトはそう言うと思ってた」


 スイトはやれやれといった顔をしていた。


「ミカト、もうお腹減ったの?」


「制覇しなきゃいけないじゃん。みんないるときに行かないとさー」


「仕方ないなー」


 いつも通りのミカトの笑顔が嬉しかった。俺は、まだ本能寺の変を引きずっていたから、気分転換にもお食事ダンジョンは最適だと思った。


「青空くん達、私も一緒に行くよ」


 中村さんが、ミカトに声をかけた。


「えっ? こんな綺麗なお姉さんが一緒だと緊張するよー」


「何言ってんのよ。あ、結花も一緒に行こう」


 中村さんは後ろの席の人にも声をかけた。8番目の席の、俺の隣の席のおとなしそうな人だ。


「えっ? あ、うん、そうだね」


 中村さんが強引に決めて、結局、5人でお食事ダンジョンに行くことになった。


 やたらと他のクラスメイトからの視線を感じる。なんだか、やだな。まぁ、編入生だから見られるんだろうけど。




 俺達は、校庭から人工樹のダンジョン、お食事ダンジョンに入った。まだ食事には早い時間のためか、人は少なかった。


「やっぱ、この時間は空いてるじゃん。やっほーい!」


「ミカト、テンション上がりすぎ〜」


「リントも嬉しいだろ? 兵糧丸しか食べてなかったんだろ」


「いや、昨夜は普通に食堂でご飯食べたよ」


「話は後だよ。狩りの時間だから」


 中村さんは、そう言うと剣を抜いた。なんか強そう。結花と呼ばれたおとなしそうな人も剣を抜いている。


 剣を持つと、女子二人は別人のようになった。完全な戦闘モードで、どんどんモンスターを倒してカプセルを集め始めた。


「リント、スイト、俺達も集めるぞ」


「うん、わかった」


「あぁ、なんか、二人の雰囲気がガラリと変わったな」


 俺達も負けていられない。カプセルは、拾うとくっつくから、ぶどうの房のようになってくる。俺も負けないように集め始めた。



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