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33、万年樹の島 〜すんごくキツイ

 俺はなんだか、爆睡してしまった気がする。


 着替えを済ませて食堂に行った。今日は、ミカトもスイトも別行動だ。タイムトラベルってことは、数日は帰ってこないのかな。


 食堂には、知り合いは誰も居なかった。一人で食べる朝食は、なんだか味がしない。はぁ、やだなぁ。たくさんの人がいる中で一人なのは、とてもしんどい。


(タイムトラベル、しようか)


 また、あの3人組のお姉さん達に、会えるかもしれない。ちょっと変わった人達だったけど、顔見知りになれたもんね。


 あの資料館には、特に何も気になるものはなかった。すべて知っていることが、展示されていただけだ。


 リンゴ園では、台風の被害で、リンゴの木がかなりやられていた。あれは歴史としては知っていたけど、あんな惨状だとは考えてみたことはなかった。


 万年樹は、あのリンゴの木を見せたのだろうか。でも資料館に入るための偽学生証もドロップした。あの資料館で、見落としたことがあるのかもしれない。




 俺は、万年樹に向かった。あー、もう昼なんだ。太陽は真上に昇っていた。寝過ぎたよね、うん。


 万年樹のダンジョンに入るための列に並んだ。この時間は少ないな。すぐに俺の番がやってきた。


「お一人ですか」


「はい、タイムトラベルに来ました」


「初めてではないようですが、一応ご説明します。幹に触れると選択画面が表示されます。トラベル先を目線で選択してください」


「はい、わかりました」



 俺は、万年樹に触れた。画面には、前回行った時代も表示されていたけど、無視した。そして心の中で、導いてくださいと祈った。


 ふわりとやわらかな光に包まれ、ダンジョン内にいつものように移動した。誰もいない。他の冒険者の姿はなかった。


 そっか、前回は、ここで幼女が説明に来たんだっけ。今回は、二度目だから来ないんだ。


 ボス部屋が、タイムトラベル部屋だったよね。着替えさせられるんだっけ。



(ん? あれ?)


 前回とは、ダンジョン内の様子が随分と違う。モンスターが多いし、強そうな気がする。マズイんじゃないかな。


 俺は剣を抜いた。


 見たことのないモンスターをなんとか倒すと、最初のドロップ品は、大きな巾着型の布袋だった。リュックのように背負うことができるが、ダランと膝くらいまでの長さがある。


 こんなカバンを持ち歩くの? カバンというか布袋というか、見た目には粗末な印象を受けた。何これ? どの時代に繋がるんだろう?


 だけど、ゆっくり考えている暇はなかった。ボーっとしている間に、囲まれてしまった。野犬のようなスピードの速いモンスターだ。



『物防バリア!』



 俺は自分にバリアを張った。あんな爪で引き裂かれたら、致命傷になってしまう。


 次々と襲いかかってくるモンスターに、必死に剣を振った。だが、イマイチ効率が悪く、全然減らない。



『オール・アップ!』



 あまり上がらないけど、ないよりはマシだ。補助魔法を使うと、モンスターの数が減ってきた。よし! 


 やっと、囲まれていたモンスターを倒しきった。だが、すぐ次の群れがこっちに向かってくる。


 俺はドロップ品を拾って布袋に放り込んでいった。何かの布切ればかりだ。だから、この袋がこんなに大きいのかな。



 次の群れは、またすばしっこい。猿のようなモンスターだ。跳躍力がすごい。剣が空振りする……。キチンと相手の動きを見なければ、倒せない。


(キツイな)


 なぜか、このフロアのモンスターは群れを形成していて、一気に攻めてくる。俺は、必死だった。ミカトやリントなら、楽に倒すんだろうな。


 いつも二人には迷惑をかけている。いい訓練になるかもしれない。しかし、キツイなぁ。


 やっと、猿のようなモンスターの群れを倒しきった。はっきり言って俺はほとんど移動していない。ボス部屋は、はるか先にある。このままではたどり着く前に体力が尽きる。


 俺はドロップ品を拾い、とにかくポイポイと布袋に放り込んだ。拾わなきゃいけないものが揃わないとボス部屋の石の扉は開かない。


 なんだかよくわからない小さな布袋がドロップしていた。触るとゴツゴツした小さな石が入っているようだ。石にしては重くはない。なんだろう?


 中を覗いてみたいけど、今はそんな余裕はなかった。


 次の群れが、こっちに向かってくる。少しでもボス部屋に近づかなきゃ。俺は走った。うん、この方法だな。


 俺が走るとモンスターの群れは、追いかけてくる。少し走って、囲まれたら立ち止まって倒す。そしてまた走る。これを繰り返した。


 ドロップ品は、小さな布袋ばかりだ。でも、砂が入っているようなものもある。なぜこんなものがドロップするんだろう。もちろん意味はあるんだろうけど。


 だんだん、リュックのように背負っている巾着型の布袋が重くなってきた。キツイな。



 やっと、ボス部屋の前までたどり着いた。体力がやばい。俺は肩で息をしながら、石の扉に触れた。でも扉は開かない。


(まだ、足りないの?)



 キン!


 後ろから何かが飛んできて、バリアが弾いた。


 振り返ると、そこには、見たことのない亡霊のようなバケモノがいた。いや、居たよ、コイツ。でも、影なのかと気にしていなかったんだ。


 しかも何体もいる。囲まれてる。幽霊に囲まれてる!


(うわっ)


 バケモノは、何かを飛ばしてくる。避けると、ボス部屋の壁に刺さった。金属の矢尻みたいに見える。こんなのが当たったら、痛いではすまないじゃん。バリアを張ってて良かった。


 俺は剣を握り直した。奴らは、剣を振ると、ふっと消えて移動する。剣で切れない? 


 戸惑っていると、また、何かを飛ばしてきた。避けたり剣で弾くにも限界がある。



『チャージ・ファイア!』


 俺は、剣に弱い火をまとわせた。奴らは一瞬ひるんだようにみえた。よし、火でいけるか。


 剣を振ると火がボゥワッと飛んでいく。奴らが、剣を避けようと消えても火は追っていった。やっと奴らはドロップ品を落として消えていった。


(なんだ? これ)


 ドロップ品は、奴らが飛ばしていた金属の矢尻に見えたものだった。手のひらサイズの何かわからない鉛のような金属だ。


 とりあえず、拾い集めて、布袋に放り込んだ。一つだけ、懐刀のような小さなナイフがドロップしていた。


 そして、ボス部屋の石の扉に近寄った。やっと開いた。


 俺は、ボス部屋に入ると、疲れで動けなくなった。お腹も空いた。魔法袋から飲み物と携帯食を取り出し、その場に座り込んだ。


(きっついな……)



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