32、万年樹の島 〜祭りの成果、レベル312
屋敷に戻って、俺達は屋敷の食堂へとやってきた。イカタコ焼きを食べたばかりだから、空腹ではない。それなのに、ミカトが食堂に行こうと言いだした。
「あー、やっぱり届いていたね。編入試験の結果、全員合格だよ。10人の名前が書いてある」
食堂の掲示板には、新たなお知らせが張り出されていた。そっか、ミカトはこれを見に来たんだ。
いま、高校はテスト期間中らしい。もうしばらくは、授業がないのか。
「リントとスイトも同じクラスだね。よかった〜」
「俺達3人だけが、Bクラスで、他の7人はAクラスか。俺も二人が同じで安心した」
「あれ? もしかして俺達は劣等生?」
「リンゴくん、そうかもしれないねぇ。コホン」
「ミカト、それって誰かの真似なのか?」
「スイカくん、オリジナルだが、何か?」
「スイト、ミカトが変なことを言うときは、俺が憂鬱そうにしてるときだったりするんだよね」
「あー、なるほど。確かにそうだな。リントを励まそうとしてる感じか」
「うんうん、たまに関係ないときに変なこと言うから、そのときはスルーでいいよ」
「あはは、わかった」
「おい、おぬしら……そんなことより、レベルチェックのお時間ですよ」
ミカトは、少し照れているようだった。照れ隠しか、また変なことを言い出した。
「そんな時間割なんてあるのか?」
「スイト、スルーだよ、スルー」
「スルーするな〜。みんな見てみろよ。俺、見間違えかもしれないんだ」
ミカトは腕輪を触って、難しい顔をしている。もしかして、ダンジョン外の魔物だったからレベル上がってないとか? ミカトも腕輪に触れて、眉をひそめていた。
俺も、そっと腕輪に触れた。ん? んん?
【名前】 青空 林斗 (あおぞら りんと)
【レベル】 312
【種族】 ハーフフェアリー
【体力:HP】 8,050
【魔力:MP】 6,510
【物理攻撃力】 4,530
【物理防御力】 4,080
【魔法攻撃力】 5,850
【魔法防御力】 4,720
【回復魔法力】 1,630
【補助魔法力】 4,080
【速さ】 4,650
【回避】 5,120
【運】 199
【その他】 精霊の使徒 (Lv.1)
【指輪情報】
①万年樹……ランク25、第3階層クリア
ええっ? すんごいことになってる。レベル312? ダンジョンランクも25になってる。でも精霊の使徒、スキル使ったけど上がってないな。
二人はあまり上がってないのかな。なんだか難しい顔をしてる。どうしよう、俺だけすごく上がったとは言えない。
「なぁ、リント、レベルいくつ?」
「えっと、だいぶ上がってるんだよね。ミカトはイマイチだったのかな……」
「そうか、リントも上がってるか。やはり、失敗だったな」
「スイト、何が失敗なの?」
「俺もそう思う。せっかくのラッキースポットを潰した感じだよね。でも、1階層は、やはり安全な方がいいか」
「ミカトも、何?」
二人とも難しい顔を崩さない。どうしたんだろう。
「リントは、レベル500くらいいってるだろ?」
「へっ? まさか、俺は312だよ」
「嘘〜、見せてよ」
ミカトの顔が怖い。俺は腕輪に触れてステイタスを表示した。すると、ミカトが驚いた顔をした。
「ちょ、リント、まじ? なんでこんなに魔力高いんだよ」
「えー? でも初期値は全部100だったし」
「俺の、見る?」
「うん、見る」
【名前】 青空 実香斗 (あおぞら みかと)
【レベル】 268
【種族】 人間
【体力:HP】 30,480
【魔力:MP】 460
【物理攻撃力】 27,320
【物理防御力】 3,320
【魔法攻撃力】 560
【魔法防御力】 2,640
【回復魔法力】 50
【補助魔法力】 50
【速さ】 360
【回避】 510
【運】 20
【その他】 なし
【指輪情報】
①万年樹……ランク12、第3階層クリア
「ちょ、ミカト、何? この体力とか物理攻撃力とか。それにレベルも、すんごい上がってる」
「だろ? リントはいつも俺の倍だったのに、ちょっと追いついてきたな。ダンジョンランクは差があるなぁ」
スイトは、チラッとミカトのステイタスを覗いた。でもスイトって見せないよね。
「スイトも、こんな感じ?」
「俺はレベル301になってた。でも上がり方は個人差があるみたいだな。ミカトほど防御力ないよ。物理攻撃力は3万超えてるけど、レベル差を考えたら同じくらいだと思う」
「ふぅん、そっか」
「しかし、リントの物理攻撃力が上がらないな。スピード特化タイプかもな」
「だよね、リントの物理攻撃力……上がらないね」
な、何? その可哀想な生き物を見る目は。でも、高校では、たぶん試験があるよね。物理攻撃力、確かに二人に比べても低すぎるから、心配してくれているんだ。
「あっ、そういえば、さっきなぜ難しい顔をしてたの? 二人ともめちゃくちゃ上がって、よかったじゃない」
「これはイカ祭りの恩恵だよ。もうイカ祭りは、ないじゃん」
「あっ……そっか、襲撃されないようにしたんだったね」
「こんなに上がるなら、1階層で泊まり込みしたかった」
「え〜、スイト、死んじゃうよ〜」
「あはは、リントには辛いか。体力差がすごいもんな」
ミカトは、突然、何かを思い出したらしく、ジッと自分のステイタスを見て、ニマニマした。
「ミカンくん、どうしたのかな」
「俺もタイムトラベルできるじゃん。俺はまだあのスキル使ってなかったけどさ。リントの大冒険を聞いてから、うずうずしてたんだよな」
「そうだな、俺もタイムトラベルできる。学校が始まる前に試しておきたい」
スイトも、タイムトラベルしたいんだ。俺はどうしようかな。あのリンゴ王国に導かれた理由も、まだよくわかんないんだよね。もう一度行けばわかるのかな?
「じゃあ、明日はタイムトラベルしようよ。戻ってきたら報告会な」
「おう、そうだな。リントも二時間のお試しだけだったんだろ? 今度はゆっくり行けるぜ」
「えっ? 二人とも明日は居ないの?」
「あはは、出た! リントの、ぼっちにしないで病〜。リントは、浮き島に戻るんだろ? その方法を見つけないと」
「うん、だよね」
でも、浮き島に戻るということは、ミカトやスイトと永遠に別れることになる。人間には、浮き島の妖精は見えないんだから。
俺達は、部屋に戻った。俺は……どうしようかな。明日、一人でダンジョンに行くか。タイムトラベルするか。
とりあえず眠ろう。うん、今日は疲れたもんな。また明日考えればいっか。




