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31、万年樹の島 〜襲撃されないための策

「食堂のおばはん、呼んできてくれ」


 俺が、倒した魔物を魔法袋に収納したとき、紅牙さんは、ミカトの方を向いてそう言った。そして、スイトは、紅牙さんと一緒に魔物をさばいている。


 ミカトは、軽く手を上げて、さっきまでいた食堂へと走っていった。


 人工魔物が居なくなって、食堂からも、人が出てきた。1階層は、アイテム集めをしている人と初心者しかいない。こんなところに、あんなクラーケンが襲撃してきたら逃げるしかないよね。


 しかし、魔法袋がパンパンだ。いくら入れても変わらなかったのに、今は明らかにパンパンに膨らんでいる。もう空き容量がなさそうだ。


 中身を確認して、驚いた。人工魔物クラーケンが、116体。そんなに倒したんだ。ご飯食べる前に倒した分もあるからだよね。




「なんですか? これは」


 ミカトが食堂のおばさんを連れてきた。おばさんは、紅牙さんが石を組んでかまどみたいなものを作っている様子に、目を見開いていた。


「見てわからんか? あまりデカイ網はないねんけどな、ここでイカタコ焼きをするんや」


「こんな所で火を使うと、木の子さんが怒りますよ」


「なに言うてんねん。これは、さっきの魔物避けやないか。自分らが焼かれる匂いのする場所には近寄らへん。今、こいつらが蹴散らしたけど、すぐまた来よるからな」


 そっか、紅牙さんは、スイトと同じことを考えてるんだ。


「紅牙さん、一応、わざと二体だけ見逃しました」


「ふっ、スイトはやはり策士やな。でも、惜しいわ。アイツらは、もう海底でかなり増えてしもた。だから、いくつものグループがあるんや。別のグループには効果がないで」


「そうなんですか」


「けど、これだけの数が襲ってきたグループをビビらせたんは正解やな。たぶん一番でっかいグループやろ」


 やっぱり、スイトってすごい。こんなこと、俺なら、何年経っても思いつかない自信がある。



「紅牙さん、で、私らにこれをやれってことですか。食堂の中だけでも忙しいんだけどね」


「食堂はいつも混んでるやろ? ここでイカタコ焼きできるように、串にでも刺して売ればええねん。売り上げ、ガツンと上がるで。もう一人、イカタコ焼き用のバイトを雇えばええやん」


「調理場がイカ臭くなりそうだけどね。でも確かに、いいアイデアだね。だけど、そんなにたくさんの魔物は……」


「コイツが持ってるで。倒した魔物は魔法袋の中や。魔物1体で300本くらいは串できるやろ。いくらで買い取る?」



 な、なんだか紅牙さんが、急に商談を始めた。それに、クラーケンが焼けた美味しそうな匂いがしてきた。


 紅牙さんは、何かを取り出して、塗っている。それを塗ったクラーケンをひっくり返すと、香ばしい醤油の匂いが広がった。


(美味しそう!)


「まぁ、おばはん、これ食べて考えてみー」


 紅牙さんは、食堂のおばさんに焼けた串を渡した。そして、次々と他の人にも渡していった。俺ももらった。


 ミカトはすぐに、かぶりついた。そして予想通り、アチチと騒いでいた。わざとやっているような気がする。


 俺も食べてみた。うん、これ、美味い! こんなところで立って食べているから余計に美味しく感じるのかも。



「これなら、500円でも売れそうだね。調理代や調味料、人件費もかかるから、そうだねー、1体3万円でどうかね」


「めちゃくちゃシビアやないか。おまえら、どうする? 他なら5万は出すで」


 俺達は、顔を見合わせた。でも、ここで食べることに意味があるんだよね。


「3万円でも高いくらいですよ。全部買い取ってもらえるんですか」


 ミカトが、おばさんにそう言った。うん、確かに3万円でも高いよね。だって116体もあるんだから。


「たくさんあるのかな」


 おばさんに聞かれて、ミカトは俺の顔を見た。これは、俺に言えってことだよね。


「はい、魔法袋の中に、116体あります」


「ええ〜っ? すごい量だね。この巨体が?」


「はい」


「そんなに入る魔法袋は、食堂にはないよ」


「じゃあ、俺がいったん買い取って、定期的に配達したろか」


「紅牙さん、配達料を取る気だね」


「当たり前やないか。そもそも、これが3万円なんて、学生を騙してるようなもんやで」


「じゃあ、それでいいよ。まぁ、食堂もかなりの利益になるから、バイトを増やそうかね」



 俺は、紅牙さんに言われて、魔物をすべて出した。紅牙さんは、それぞれに何か魔法をかけて、魔法袋に入れていた。保存魔法なのかな?


「お代は、三等分か?」


「でも、俺はそんなに倒してないから……」


 そう言って、ミカトに助けを求めだけど、ミカトは2本目の串を食べていた。1本でもかなりボリュームあるのに、よく食べられるよね。


「リントも後半は、かなりペース上げてたから、三等分でいいんじゃないか」


「ほな、三等分やな。ダンジョンコインがいいなら店に来てもらわなあかんけど、どうする?」


 スイトは頷いた。ダンジョンコインで持っておく方がいいんだったよね。


「じゃあ、おばはん、とりあえずの分な」


 そう言って、紅牙さんは魔物を取り出した。あっ! 一体ずつ、真空パックになってる。これが、さっきの魔法なんだ。


「調理場に運んでくれる? さばくのは調理場だよ」


「へいへい」




 そして、その後、紅牙さんの店に行った。


「他のドロップ品も買い取るで」


 俺達は、木の実以外のドロップ品の買い取りをしてもらった。うん、これで、魔法袋もスッキリした。



【コイン残高】


 白金貨(1億円) ー 0

 大金貨(1000万円) ー 0

 小金貨(100万円) ー 1枚

 大銀貨(10万円) ー 4枚

 小銀貨(1万円) ー 20枚

 大銅貨(1000円) ー 6枚

 小銅貨(100円) ー 3枚


 日本円換算で、1,606,300円



 コイン残高がすごい金額になった。130万円以上増えたかな。



「おおー、すごい金持ちになったよな」


「ミカト、はしゃぎすぎ。これでも、紅牙さんに武器は作ってもらえないですよね」


「あはは、スイトは学生らしくないんちゃうか。まぁ、お友達価格でも、全然足らへんな」


「そういえば、高校の先生が、紅牙さんに武器を作ってもらおうとか言ってましたよ」


「うん? 誰や? おまえらの高校って、変な教師しかおらんやんけ。俺は相手を選ぶんや」


「名前は、まだわからないです」


「そんなん、聞かんかったことにしとくわ。俺、出かけるから、おまえらはまっすぐ帰れよ」


 先生の話は、何か都合の悪い話だったのか、俺達はシッシと店を追い出された。



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