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3、万年樹の島 〜レベルの腕輪とダンジョンの指輪

「まさか、あんた、あたしの敵っ!?」


「ちょ、ちょっと待ってよ。どうして俺が敵なんだよ」


 俺は、なぜか幼女に睨まれていた。いや、幼女じゃなくて、妖精か。


「だって、だってだってぇ〜!」


 なんだ、この娘はジタバタして……子供か? いや、違う。見た目の可愛らしさを利用して、なんでも思い通りにしようという魂胆なのかな。


「リンゴ〜、天使をいじめちゃダメだろ。ってか、おまえ、リンゴで合ってるよな?」


「見てわからない? みんなで俺を騙そうとしてる?」


「人間の姿に変わったから、わからないじゃん」


「わかるよ、バナナだろ」


「へ? マジで? みんなわかるのか?」


「当たり前だろ。端から、バナナ、ミカン、キウイ、イチゴ、スイカ、モモ、ナシ、メロン、マンゴーだろ?」


 彼らは、驚いた顔をしている。浮き島で人間に変えられたときは、みんな誰が誰かわかってたんじゃないの?


「リンゴだけ、おかしいぞ」


「でも、そういえば、浮き島では、誰が誰だかわかってたような気がするね。地上に降りたら、顔を忘れたのかな」


「姿を変えられた直後は、変わるとこを見てたし」


 バナナ王子が、みんなに見えるようにステイタスを表示した。


「みんな、これと同じなのか?」


 彼らはチラッと見て、頷いている。




【名前】 青空 葉名斗 (あおぞら ばなと)

【レベル】 1

【種族】 人間


【体力:HP】 1,000

【魔力:MP】 0


【物理攻撃力】 500

【物理防御力】 50


【魔法攻撃力】 0

【魔法防御力】 50


【回復魔法力】 0

【補助魔法力】 0


【速さ】 10

【回避】 10

【運】 0


【その他】 なし




 俺だけが全然違う。俺も、みんなにステイタスを見せた。爺さんも覗きに来て、驚いた顔をしていた。


「リンゴだけ、ハーフフェアリーで、精霊の使徒? さっき、声が聞こえたと言っていたり、俺達が誰かわかるのも、半分妖精のままだから?」


「リンゴ王子は、精霊ルーフィン様から何かを託されたのですかな?」


「いえ、俺は何も……」


 そこに、幼女が口を挟んできた。


「言っときますけど、あたしが万年樹の妖精。あんたは半人前の妖精だからねっ。あたしの方が偉いんだからっ」


(何を怒ってるんだろう?)


 メロン王子が、幼女をあやすように言った。


「きのこちゃん、万年樹の妖精なんだね。地上にいる妖精は、こんなに可愛い人ばかりなのかな」


「ん? 樹木の妖精の中では、あたしが一番偉いの」


「万年樹の妖精だから、そりゃそうだよね。可愛くて賢いきのこちゃん、教えてくれない? リンゴのステイタスはどうなってるの?」


「う〜、あたしの敵っ!」


「どういう意味?」


「万年樹の精霊が、こいつに何かを与えたみたいなの。でも、精霊はケチだから、あたしには教えてくれないの。あたしと交代させる気かもしれないの」


 何ももらってないよ。そっか、この幼女は、俺が万年樹の妖精の地位を奪うと考えたのか。俺は、浮き島に戻らなきゃならないんだ。兄貴が、たぶん、待ってるんだから。


「きのこちゃん、それは気のせいだよ? 俺達は、三年以内に浮き島に戻るからさ。まぁ、条件を満たさないと戻れないけど」


 マンゴー王子が悲しそうな顔でそう言うと、幼女は急におとなしくなった。そして、ヨシヨシと、彼の頭を撫でている。幼き母性に目覚めたのだろうか。

 いや、万年樹の妖精ってことは、かなりの婆さんかもしれない。やはり、見た目に騙されてはいけない。



「万年樹の妖精様、そろそろ指輪を……」


「あー、忘れるところだったの。あぶなぁい」


 幼女は、俺達にポイっと何かを投げてきた。俺の分は、とんでもない方向に飛んできた。なんとか必死にキャッチしたが、何? その態度。


「えー、こほん。説明するからちゃんと聞いているのよっ。それは万年樹のダンジョンの指輪。このダンジョン固有のランク、スキル、クリア階層などが記憶されるの。指にはめておくの。ダンジョンの外に出ると指輪は見えなくなるけど、ダンジョンに入るとまた見えるの」


(レベルじゃなくて、ランク?)


 俺は指輪をはめた。とりあえず、左手の中指かな。右手は剣を持つと邪魔になる。いや、剣は持ってないんだけど。

 そういえば、剣って地上にあるのかな? 銃刀法がどうとかって学んだ気がする。


「指輪も、腕輪と表示方法は同じ。レベルが上がると、情報連動ができるから、そしたら、腕輪で指輪の情報を見ることができるようになるの」


 俺は、レベルとランクの違いがよくわからない。他の王子も、何人か首をひねっている。そもそも、いきなりダンジョンでこんな話をされているけど、俺達に必要なことなのかな。



 一応、俺も同じように、指輪の表示をしてみた。



【名前】 青空 林斗 (あおぞら りんと)

【レベル】 1


【ダンジョン名】 万年樹

【ダンジョン難易度】 MAX


【ダンジョンランク】 0

【クリア階層】 なし


【ダンジョン固有スキル】 精霊の使徒、タイムトラベル

【トラベル歴】 なし



(ん? タイムトラベル?)


 俺が混乱して固まっていると、バナナ王子が口を開いた。


「固有スキルに、タイムトラベルって書いてあるけど、きのこちゃん、これは何?」


「それ、追放された妖精特典だよ。普通の人は、ダンジョンランクが100になったときのボーナススキルなんだけど」


「あー、あは……はは、追放ね……」


「過去に戻って反省したり、現実逃避したり、使い方はいろいろなの。でもダンジョンランクが低いと滞在時間が短いから、まずは、レベル上げとダンジョンランク上げだよ」


「そっか、わかった」


 バナナ王子は全くわかっていない顔をしている。俺もわからない。タイムトラベルって、昔の地上を見に行くってこと? 初めて地上に降りた俺達に、必要なスキルだとは思えない。


 それに、浮き島に戻るための条件を、まだ俺達は聞いていない。地上で説明があると、精霊ルーフィン様は言ってたっけ。


 そういえば、地上の妖精は、人間でも見えるんだな。幼女は、このダンジョンの案内係のようだし……。


 なぜ、浮き島の妖精は見えないんだろう。見えるなら、俺が条件を満たせなくても、兄貴はあんな辛そうな顔をしないのに。



「お話が長くなりましたが、最後に爺から、精霊ルーフィン様からの伝言を、お伝えさせていただいてもよろしいでしょうか」


(いよいよ、だな。緊張する……)



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