表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/153

29、万年樹の島 〜イカ祭り

「リント、スイト、明日はどこ行く? どこでもいいなら、お食事ダンジョンに行こうぜ」


「ミカト、リントは万年樹のそばにいる方がいいんじゃないか? あのイカみたいなバケモノの襲撃が、これで終わりだとは思えない」


「そうかな? あれって見たことないモンスターだったよね。レアモンスターなら、そんなに数はいないんじゃない?」


 ミカトはもう大丈夫だと思っているようだ。スイトはいつも慎重だよね。俺は、よくわからない。でも、また幼女に嫌味を言われるのは嫌だな。


「人工魔物クラーケン、って表示が出たよ。スキルを使ったときに、ターゲットの情報が出るんだ」


「リントのスキル、めちゃ便利じゃん」


「海底都市の魔物工場から逃げ出したらしいって、言ってる人がいたな。だから人工の魔物なんだろうな」


「スイト、そんな噂が本当ならヤバイじゃん」


 ミカトは、急に真顔になった。


「そうだよな。きのこちゃんも、なんだかイラついていたようだし、深刻なことかもしれない」


(幼女は、いつもイラついてるじゃない)


「じゃあ、明日は万年樹のダンジョンで周回しよう。万年樹のドロップ品の一部は人気あるから、売ったお金で魔法ボールコレクションできるし」


「ミカトは、妙なことに興味津々だな。収集癖があったのか」


(そう、いつもミカトは興味津々)


「うん? そうかな」


「あぁ、だって、お食事ダンジョン全制覇したいとか、魔法ボールコレクションしたいとか……」


「スイトは、全部の料理を食べてみたいと思わないの? リントは?」


 そう言われると言葉に困る。スイトをチラッと見ると、スイトも困った顔をしていた。


「ミカトは好奇心旺盛だから、いいんじゃないか。俺にはそんな情熱はないし、リントも自分から何かをするタイプじゃないからな」


「えー、それって、食い意地がはってるってこと?」


 ミカトは、助けを求めるように俺を見た。えーっと、これは、同意すればいいのかな? ツッコミ待ちなのかな?


「ミカト、俺には上手い返しが思いつかない」


「ふっふっふ、リンゴくん、まだまだですな」


 そう言うと、なぜかミカトはニカッと笑った。うーん、今の返事で正解なのかな?





 翌朝、俺達は、万年樹の前で集合し、ダンジョンの1階層へ入った。昨日、俺が水浸しにしたフロアだけど、すっかり元の状態に戻っていた。


「万年樹って、やっぱ、すごい生命力だな。もう昨日の修復が完璧にできている」


「スイトは、よく気づくよね。俺は、一瞬、何のことかわからなかったよ〜」


「ミカト、それは忘れっぽすぎる〜」


「えー、リントもあまり変わらないと思うよ〜」


「まぁ、確かに。反論はできない」


「さぁ、木の実を集めるぜ。二人とも剣を抜いて」


「ちょっと、スイト、俺も剣?」


「当たり前だろ。リントの物理攻撃力、いくつだっけ?」


「うぇー、スイトさま、お許しを〜。あはは」



 俺も、剣を抜いて、顔のある草を殴っていった。そう、コイツは斬ろうとしても硬いんだ。剣を棒のようにして、殴るように振ると簡単に倒せる。コツがわかってくると、楽しくなってきた。




 キャー!



「リント、ミカト、悲鳴だ」


 声のした方を見ると、昨日のイカが居た。人工魔物のクラーケンだっけ。でも、デカイのはいない。2メートル程度の奴が、二体だ。


「昨日、倒したよな。リントも、そのままでいけるはず」


 なんだか、ミカトが怖いことを言っている。


「スキルを使うと、きっとかなりの魔力を使うだろうからな。周回に無駄な魔力消費は避ける方がいい。リント、そのままでいこう」


 スイトまでが、無茶なことを言っている。


「うーん」


『物防バリア!』


 俺は、仕方なくスキルは使わず、バリアを張った。もちろん、ミカトとスイトにも。


「リント、ありがとう。じゃ、行くぜ」


 俺達は、クラーケンの方へと走って行った。そして、まず、スイトが一撃を加えた。でも、たいしたダメージにはなっていないようだ。


「あっ、昨日は、きのこちゃんの強化魔法があったんだ」


 ミカトがそう言って俺を見るので、俺は、強化魔法を使った。


『オールアップ!』


 物理攻撃力、魔法攻撃力、そしてスピードがわずかに上がった。ないよりはマシな程度かな。


 でも、これで、スイトの攻撃力は随分と変わった。俺も負けないようにと必死に剣を振ったが、硬い皮に弾かれる。


「リント、頑張れ!」


「う、うん」


 俺は、やっぱり魔法タイプだよね。浮き島では剣術は得意だったはずなのに、二人には全然及ばない。


(それなら……)


『チャージ・サンダー!』


 俺の剣は、弱いイナズマをまとった。よし! 俺は、両手で、剣を振り下ろした。


(やった)


 スパッと、クラーケンの手か足が切れた。


 ミカトはチラッと俺の様子を見て、ニッと笑った。スイトも、頷いたように見える。


 俺達は、そこから一気に、二体のクラーケンを倒した。



「強かったね、コイツ……」


「昨日は、たいしたことないと思ったけど、あれは戦闘力が二倍になっていたからなんだな」


 俺の強化は、ショボイと言われているようで、少し辛くなった。でも、二人がそんな風に思っていないことはわかっている。


「リントの強化魔法がなかったら厳しかったな」


「だよね。リントさま、偉い!」


「えっ? もしかして褒められた?」


「当たり前だろ。レベルが上がればもっと楽に倒せるようになるよな」


「うわぉ! すっごい上がってる! 俺、レベル83だよ」


「ミカト、前は60ぐらいだったよね?」


「リント、それは昨日のイカ祭りの前だよ。あの後は71だったんだ」


 イカ祭りと言われると、美味しそうに聞こえる。クラーケンって、イカなのかな? タコだという説もあるよね。


「三人だけで、倒したからかもしれないな。昨日は、きのこちゃんの強化魔法や、リントのスキルがあったから。俺も、レベル91だ」


「スイト、もうすぐ100いきそうじゃん」


「だな。リントは?」


「俺は、あまり活躍してないし……。ダンジョン出てからまとめて見るよ」


「そんなことないだろ。まぁ、とりあえず、イカをなんとかして、周回だな」


「じゃあ、俺の魔法袋に入れておくよ。買い取ってくれるかもしれないし」


「おう! リントの魔法袋はデカイもんな。買取ってくれなかったら、イカ祭りしようぜ」


 ミカトが変なことを言っているが、スイトはスーッとスルーした。俺達は、木の実集めに戻った。



 キャー!!



 だけど、木の実集めを始めると、クラーケンが出現した。


「またかよ。行くぞ〜」


「へーい」



次回は、3月7日(土)に投稿予定です。


毎日投稿をしていましたが、今月から木、金は、お休みします。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ