25、国立特殊技能高等学校 〜校庭のお食事ダンジョン
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俺達は、高校のグラウンドの片隅にある樹の前に立った。これが人工樹ということなんだな。樹からは、古代樹特有のパワーも霊力も感じない。ただの樹齢の若い木を無理に急成長させたようだ。
「キミ達、ダンジョンには入ったことあるのか?」
「ありますよ、まだ全然レベル上がってないけど」
風紀委員の中瀬さんとの会話は、もちろんミカトが引き受けてくれている。
「じゃあ、どこもダンジョンは同じだから。でも、このお食事ダンジョンは、ウチの高校の学食代わりなんだ。だから、グラウンドからは無料で入れる。あっち側からは一般客が、有料で入ってくるから」
「そっか、わかりました。中は学生以外の人もいるんですね」
「そういうこと。レアモンスターは、一般客に譲ってやれ」
「一般客か学生かは、見分けつくんですか」
「だいたいの雰囲気でわかるから」
(見分けられないんだ)
一応、俺達は頷いた。
中瀬さんの指示で、一緒に幹に触れた。ふわっと浮上する感覚の後、俺達はダンジョンの中にいた。
初めて入ったダンジョンだけど、誰も案内人が来ない。オリエンテーション階はないのか。それに、指輪もないよね。
俺の左腕には腕輪があるだけだ。万年樹の指輪は、他のダンジョンでは現れないみたいだな。
「指輪は、ないんですよね? 人工樹のダンジョンだから」
ミカトがそう尋ねると、彼は不機嫌そうな顔をした。
「人工樹の意味がわからないんだけど。指輪って何?」
「精霊の宿る古代樹のダンジョンは、ダンジョンランクを表示する指輪があるんですよ」
「ふぅん、興味ない」
「中瀬さんは、他のダンジョンは行かないんですか」
「駅前の福引きダンジョンは行くけど、指輪なんてないけど」
「俺達も、そこ行ってみたいって今朝話してたんですよ。あのダンジョンも人工樹のダンジョンですよ」
「あっそ。とりあえず、適当にモンスター狩りなよ。自分の分は自分で拾えよ。5分後にあの赤い灯のとこに集合だからな」
そう言うと、彼は剣を抜いて先に行ってしまった。
「ミカト、お疲れさま」
「リントも少しは喋れよー。スイトも〜」
「だって、俺、苦手なタイプだし」
「同じく」
「まったく、もう〜。自分の分は自分で倒すんだよ、リント」
「わかったよー。あれ? 二人とも、魔法袋?」
「うん、昨日、買ったんだぜ。リントのよりは小さいけど、装備品とアイテム入れには十分だから」
「そっか」
俺も、魔法袋から剣と盾を取り出した。
このダンジョンはモンスターが弱い。盾を持っているのは俺だけだ。少し恥ずかしくなり、盾は魔法袋に収納した。
モンスターは、斬ると映像がザザッとブレるようになって消えていく。デジタルなのかな。
ドロップ品は、すべてカプセルだった。みんなカプセルを手に持っているみたいだから、俺もそれを真似た。不思議なカプセルで、カプセル同士がくっつくんだ。たくさん集めている人は、色とりどりの葡萄を持っているように見える。
「魔法袋なくても、ドロップ品を集めやすくしてあるんだね」
「リント、あまり集めてないんだな」
「スイトのは、葡萄みたいになってるね」
「そろそろ5分かも。リント、スイト、集合場所へ行くよ。風紀委員さんは時間に厳しそうだからさ」
待ち合わせ場所には、俺達の方が少し早く着いた。すると、彼は、合格だとか何とか言っていた。よくわからない人だな。
赤い灯の向こうに移動すると、機械たくさん置いてあった。でも、彼はそれをスルーして、その先の一つの扉に進んだ。
「この扉の先が学食になってる。はぐれないように」
俺達は、彼について行った。
学食というだけあって、俺達と同年代の人が多い。でも、そうじゃない世代もいるように見える。
彼はテーブルを選んで座った。俺達も同じテーブル席についた。たくさんのテーブルでは、みんないろいろなものを食べている。でも店員さんはいないようだ。
「食べるカプセルを開ければいい。食べきれない分は、出口でコインに交換してもらえるから、調子に乗ってカプセル開けまくるなよ」
「ん? カプセルを開ける?」
俺達は意味がわからなかった。でもすぐに、それがその言葉どおりなんだとわかった。彼がカプセルを開けると、テーブルの上に料理が現れたんだ。
「うわっ、すごっ」
俺は思わず叫んでいた。すると、風紀委員の中瀬さんは、冷めた目でチラッと見たが、そのままスルーして食べ始めた。
どのカプセルに何が入っているかは、俺達にはわからない。俺は赤いカプセルを開けた。すると、オムライスがパッと現れた。量は少なめだから、いくつか食べられそうだ。
「楽しい〜」
ミカトは、めちゃくちゃ喜んでいる。珍しいもの好きだよね。
「色が違うと中身も違うんですか」
「当たり前だろ」
ミカトは、俺が聞きたいことを聞いてくれる。
「この扉以外にもたくさん扉がありましたけど」
「扉ごとに食事のグレードが変わる。学食は一番安いんだ」
俺は次のカプセルを開けようとしたが、開かない。不良品かな? だが、チラッと彼が俺の手元を見て、口を開いた。
「それは、この部屋では開かない。カプセルに星が書いてあるだろ? 学食の扉は星1つだっただろ。この部屋では星1つのカプセルしか開かないから」
「じゃあ、隣の部屋に行かないと食べられない?」
「そういうこと」
俺が尋ねると、彼は短い返事をした。やっぱ、苦手だな。
「中瀬さん、扉の手前にあった機械は何ですか?」
「あれは、交換機だよ。星1つのカプセルを10個入れると星2つのカプセルがランダムで1個出てくる。10対1で交換だ」
「へぇ。じゃあ、10個集めれば、グレードの高い料理に変えられるんですね」
「そう。ダンジョンを出るときのコインも同じ。再入場したとき、コインはあの交換機を使ってカプセルに変えるんだ」
そう言って彼は布袋を出した。ジャラっと音がした。すごい量だな。
「キミ達もコイン用の布袋を持つといい。出口でも売ってるけど、外で買う方がいい。出口の布袋は小さくてすぐに破れる」
「了解っす」
俺達は、出口にあった機械で、持っていたカプセルをすべてコインに交換してダンジョンから出た。カプセルのまま外に持ち出すと消えてしまうらしい。
星1つのコインが2枚、星2つのコインも2枚か。俺は、とりあえず、財布に入れた。
「中瀬さん、ありがとうございました」
ミカトが礼を言って、俺とスイトは軽く会釈をした。
「ま、筆記試験、がんばって」
(すっかり忘れてた)




