24、国立特殊技能高等学校 〜いきなり編入試験!?
俺達は、屋敷内の転移部屋から、編入試験が行われる高校へと転移した。転移先は、広いホールになっていた。
「ここが、高校かな?」
俺達がキョロキョロとしていると、同い年くらいの男が近寄ってきた。ここの学生かな?
「キミ達、こんな時間に何だよ。授業はとっくに始まっているぞ」
「いえ、俺達は、編入試験で来たんですけど」
そういうと、彼はコロッと態度を変えた。
「なんだ。それには時間が早いですね。キミ達は、優秀です。キチンと早めに行動ができる」
俺達は、互いに顔を見合わせた。どう反応すればいいのか、ミカトでさえ困っているようだ。
「ここは、転移部屋ですか?」
やはり、ミカトは頼りになる。俺もスイトも困っていたら、ミカトが口を開いた。
「そうですよ。と、言っても基本は体育館です。転移を使って登校する生徒が多いので、転移部屋を兼ねています」
「なるほど。俺達は、どこへ行けばいいですか」
「ここに居てください。先生が来ますから」
少し待っていると、二人の男がやってきた。二人とも人間ではない。見た目は普通のおじさんだけど、なんだかすごい魔力を持つ人と、もう一人はよくわからない力を持っている。
「あの二人、人間じゃないよ」
俺は、小声でミカトとスイトに囁いた。
「えっ! まじ?」
声が大きい……。ミカトは叫んだ。スイトはこういうときは冷静だよね。
「おや、サーチ能力を持つ子がいるのかな」
魔力の高い男がそう言って俺を見た。バレてるのか? この人、何? コワイ。
「おはようございます。お二人が先生なんですか」
やっぱ、ミカトは頼りになる。こんなコワイ人とも普通に話せるなんて、すごいよ、ミカト。
「そうですよ。あ、そこにいるのは、この学校で一番コワイ風紀委員の中瀬くんだ。遅刻すると目をつけられるから気をつけなさい」
「はい。中瀬さん、というんですね。青空です。こっちの二人も同じ名字です」
「青空……キミ達は、浮き島から追放された妖精か。だから、ここに編入できたんですね」
中瀬さんという風紀委員は、なんだか嫌味な男だな。俺はちょっと苦手だ。ここに、という表現から考えると、エリート校なのかもしれない。
「中瀬くん、その言い方は良くないね」
「先生、でも、最初が肝心ですよ。いつも問題を起こすのは、浮き島から追放された妖精です」
どうやら、他の浮き島からの追放者が、悪い印象を与えてるみたいだな。
妖精の浮き島は、俺達のフルーツの浮き島だけじゃなく、かなりの数がある。追放されたということは、普通は厄介払いだもんね。
「中瀬くん、今回の編入生は、いつもの人達と違うよ。罪人ではない。彼らは、王族だ」
「えっ? 妖精の王族? なぜ地上に?」
「精霊の事情があるようだ。もしくは、地上の精霊が呼んだのかもしれないな。今は少しでも、協力者は多い方がいい」
なんだか、よくわからない話になってきた。ただ、俺達の素性は、ここでは隠す必要がないことはわかってきた。
「とりあえず、先に実技試験をしておこうか。なぁに、クラス分けの参考にするだけだから、緊張しなくていい」
「えっ、今からですか」
ミカトは嫌そうな顔をしていた。それを見て、風紀委員の中瀬さんは、フフンとあざ笑うような表情を浮かべた。かなり、妖精が嫌いらしい。
魔力の高い男……いや先生か、が、どこからか模擬剣を出した。そして、まずミカトに渡した。
「だいたいの戦闘力はわかるけど、技能を見たい。手合わせをするよ。遠慮なくどうぞ。身体強化の魔法を使っても構わないが、まずは物理攻撃力をみたいから、火や風などは使わないで」
「わ、わかりました」
そして、ミカト、スイト、俺の順で、剣術の試験が行われた。魔力の高い先生は、めちゃくちゃ強い。魔導士じゃないの?
その後、魔法の試験があった。
「一応、防御バリアを張るから、思いっきり撃ってきていいよ。使える攻撃魔法すべて、撃ってみて」
今度は俺からだった。俺は、火、水、風、土、氷を飛ばした。他にも使えるけど、あれこれ撃つのもな。
スイト、ミカトは、魔力値が低いから魔力切れになると言って、免除されていた。免除があるなら、俺もそうすればよかった。
ずっと見ているだけのもう一人の先生は、成績を記録しているようだった。あの人のあの力って、いったい何だろう?
「はい、実技試験はこれで終わりです。なるほど、まだあまり使い方がわかっていないのか、遠慮があるようですね」
なぜか、俺の方を見ている。俺が基本魔法しか使ってないからかな。まぁ、いっか。
「あー、それから、彼のこの力は魔力じゃないんだ。彼は半分妖怪だからね。妖力なんだよ」
やはり、俺の方を見てる。考えたことを読み取られているのだろうか。コワイ、この先生。
「妖怪? 紅牙さんも半分妖怪だよね」
全然空気を読まないミカトが、俺達にそう言った。すると、黙っていた先生が口を開いた。
「あぁ、あの赤虎か。ふっ、アイツはもう随分と会っていないが……悪徳武器屋になってるようだな。俺もアイツの武器が欲しいが、札束を積み上げないと動かないらしいな」
「悪徳武器屋なんですか!? レベル500以上の人にしか作らないって言ってましたけど」
「そうか、じゃあ、俺は作ってもらえそうだな。ふふ」
悪徳と言いながら、彼は楽しそうに笑った。実は親しかったりするのかもしれない。
「昼からは、簡単な学校紹介の話と、筆記試験がある。その後、実技試験の予定だったが、おまえらは、筆記試験が終われば帰っていいぞ。うーん、筆記試験までわりと時間あるから、飯ダンジョンで昼食を食ってくればいい」
「飯ダンジョン?」
「あー、中瀬くんに案内してもらえ。筆記試験次第だが、おそらく三人とも、彼と同じクラスになるから」
「えっ!? 先生、追放された妖精ですよ? 実技が強いからって、筆記試験まで……」
「彼らは、王族だと言っただろう? 生まれたときからいろいろ叩き込まれているはずだ。おそらく、高校の学習範囲はすべて習得しているだろうからな」
「本当ですか? まさか、そんな」
(いや、俺、暗算できないんだけど……)
俺達は、風紀委員の中瀬さんに、高校のグラウンドへと案内された。その片隅には、大きな樹があった。
「あの樹に、お食事ダンジョンがある。飯ダンジョンって先生は言ってたけど、正式名は、お食事ダンジョンだから。ついてきて」
(ちょっとワクワクする〜)




