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23、万年樹の島 〜福引きダンジョンに行きたいのに

「俺としては、この3人でクリアしたいけど」

 

 スイトが冷静にそう呟いた。うん、確かに急いでクリアしないといけないわけじゃないね。


「スイト、それって、レベル上げしようぜってことだよね。リントはすぐ上がるけど、俺、もしかしてスイトに抜かされた?」


「たぶんな。俺、今レベル40」


「うひゃ〜、半端ないじゃん。俺まだレベル35。リントは?」


「ん? 俺は、ほとんど上がってないよ」


「今日は、レベルをがっつり上げよう。昨日教えてもらったダンジョンに行ってみないか? 俺達が転入する高校の最寄駅にある人工ダンジョンだけど」


「うん? 人工ダンジョン? ミカト情報、すごい」


「あー、俺も聞いた。福引きダンジョンだろ?」


「何それ?」


「ドロップ品がすべて福引き券らしい。ダンジョン出口に、ガラガラ抽選機があって、出た玉の色に応じて経験値が入るそうだ。ボスがいない代わりに、福引き仕様らしい」


「へぇ、面白そう」


「ボスがいないから、イマイチ人気ないんだって。でも、初心者のレベル上げには一番効率がいいらしいよ」


「うん、いいね!」




 俺達が、屋敷を出ようとしたところで、まんじゅ爺に呼び止められた。


「皆様、おはようございます。掲示板はご覧いただいてますでしょうか?」


「えっ……見てないです」


 俺は、ミカトとスイトの顔を見たが、二人とも首を横に振っていた。だよね、どこに掲示板があるかさえ知らない。


「屋敷内の食堂に掲示板を設けているのですが、食堂を利用されない王子は、見たというチェックがないものですから」


「見るとチェックをつける方式なんですか。なるほど、まんじゅ爺、いい仕組みですね」


 スイトが妙に感心している。スイトが食いつくポイントが、俺にはまだイマイチ掴めていない。


「スイカ王子、お褒めいただき恐縮でございます。皆様お忙しいので、連絡事項が伝わっているかが不安だったものですから、ご覧いただいた王子の国印を押していただく方式にしております」


「なるほど、それなら押す場所を間違えてもわかる」


「はい。皆様が編入される高校の手続きの件が、重要なお知らせになっております」


「じゃあ、掲示板を見てきます」



 俺達が食堂へ移動すると、まんじゅ爺も後をついてきた。そして、掲示板の前へと案内してくれた。うわっ、他の7人の印はあるじゃん。俺達だけ……あはは。


「リント、ついでに朝ごはん食べて行こう。めちゃくちゃいい匂いがする〜」


「確かに。そうしよう」


 屋敷の食堂も有料になっていた。でも、はっきり言って、お得すぎる。朝食は100円、昼食300円、夕食500円。


「すごい安いんだ。知らなかった」


「あはは、リントは細かいこと気になるから、値段にも敏感なんだな。俺は、よくわからないや」


「ミカト、少しはリントを見習う方がいい。お気楽すぎるぞ」


「うーん、かもね」


 そう言いつつ、ミカトは気にする様子はない。子供の頃から、ミカトはお金には無頓着だよね。でも他の王子も、そんなタイプが多い。



 朝食を注文してから、俺達は、掲示板を確認した。


 ●屋敷内からの転移魔法の件

 ●高校編入手続きの件

 ●食堂の営業時間の件

 ●バナナ王子様からの連絡事項



「4つもあるね。あはは、俺達だけじゃん、見てないのは」


 ミカトが頭をかきながら、そう言った。


「そうだな。バナナの連絡は見ない方が良かった」


 スイトが嫌そうな顔をしている。まぁ、そうだよね。

 バナナ王子は、浮き島に戻る方法を見つけたと書いてあった。でも、せっかくだから、しばらくは地上の生活を楽しむらしい。



「食堂は、朝6時から夜9時までなんだ。かなり長い営業時間だね」


「ミカト、でも、それ以外の時間は予約制ってことは、結局24時間営業ってことじゃないか? すごい対応だな」


 屋敷には、たくさんの人がいる。あの幼女も屋敷に住んでいると言っていたっけ。だから、食堂もこんなに広いんだな。



「編入試験があるのか……って、ちょ、これ、今日じゃん」


「ミカト、掲示板をなぜ下から見てるんだ?」


「いや、なんとなく、気になったものから見てて」


「俺はまだ転移魔法の件しか見てない。屋敷内の転移魔法は、朝は渋滞するってどういう意味かな?」


 俺が、疑問を投げかけると、ミカトが首を傾げた。スイトも妙な顔をしている。な、なぜ? 

 あっ、と何かを思いついた顔で、スイトが口を開いた。


「そうか、リントは転移屋を使ったことないから知らないのか。転移は、異次元空間を使うからさ。転移する人が集中する時間と場所は、異次元空間からの出口が渋滞するらしい。だから、転移時間がかかるんだよ」


「転移事故で、変な場所に飛ばされたりはしないの?」


「それはないんじゃないか? リントは転移も苦手なのか」


「い、いや……」


 すると、ミカトがニヤッと笑った。


「リントは、転移が苦手というより、知らない場所にひとりで飛ばされるのが嫌なんだよね」


(その通りでございます)


 また、スイトは首を傾げている。いいよ、もう、変な奴ってことで。



「それよりさ、今日の編入試験って、どうするんだよー。レベル上げに行ってる場合じゃないじゃん」


「ミカト、福引きダンジョンは、編入する高校の最寄り駅だから、ちょうどいいじゃないか」


「テストだよ、テスト〜。俺、何もテスト勉強してない」


 なぜか、ミカトは焦っている。そういえば、ミカトは試験嫌いだっけ。その割には、俺より出来たりするんだよね。


「そんな準備はいらないだろ。編入は決まっているんだから、単純に力を知りたいだけじゃないのか」


「クラス分けに使うとかじゃない?」


 俺がそう言うと、ミカトはやっと落ち着いたようだ。


「それならいいや。とりあえず、朝食たべて行かなきゃ。だから、まんじゅ爺が待ち構えていたんだね」


 試験時間は午後からのようだけど、きっと俺達を探しまわっていたんだろうな。まんじゅ爺に、手間をかけさせていることを反省した。


 そして、俺達は、100円だとは思えないボリュームの朝食を食べ、屋敷内の転移魔法の部屋に向かった。



 転移部屋に入ると、そこには一人の魔導士風の男が居た。


「おや、初めましてですね。この部屋の管理人をしている青空 風馬と申します。ふうちゃんと呼ばれています。どちらへ行かれますか?」


「編入する高校の編入試験があるみたいで」


「国立特殊技能高等学校ですね。かしこまりました」


 そう言うと彼は、俺達をやわらかな光で包んだ。



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