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22、万年樹の島 〜別行動の成果、魔法ボール

 俺が万年樹のボス部屋に戻ってくると、また、目の前に文字が浮かんだ。


【服装、持ち物をすべて交換してください。3分後に指輪に収納します】


(3分で着替えろってこと?)


 いつの間にか、魔法袋が目の前に落ちていた。それを拾っていったん装備し、中から現代の服を取り出した。


 なんだか、衣服は混ざってしまいそうだけど、たぶん、全部交換しないとまた電撃だろうな。


 俺は着替えを済ませ、リュックの中に着ていた服や靴を入れた。あっ、傘は資料館に忘れてきたな。仕方ない。


 すると、スーッと指輪に吸い込まれるように、リュックが消えた。あれ? 指輪に石がはめ込まれている。


 俺はその石に触れてみた。


【平成時代1991年、青森】


 すると、タイムトラベルした時代と場所が表示された。この石に収納されたのか。よく見ると、指輪には、石をはめ込む場所が3つあるようだ。あと2ヶ所の荷物を収納できるってことなのかな。



 俺は、ボス部屋の転移魔法陣を使って、ダンジョンの外に出た。なんか、どっと疲れたな。寝不足のせいもあるだろう。


 これから再びダンジョンに入る気にはなれず、俺は屋敷の自室に戻った。そして、そのまま、翌朝まで爆睡してしまった。





 コンコン!


「リント、起きてる?」


 元気なミカトの声がした。


「どうぞー」


 俺がベッドから起きてリビングに移動したときには、ミカトは、もう、テーブルの上に何かを出していた。


「ミカト、おはよう。それ、何?」


「おはよう。昨日の収穫だよ」


「ボール?」


「そう、魔法ボール。投げると魔法が発動するんだって。アイスボールをたくさん買ったよ。外の店で売ってたんだ」


「外の店?」


 すると、ニカッと笑って、ミカトは自慢げに話を始めた。その話によると、島の外へ行ったらしい。各ダンジョンのドロップ品を売る店に行ったそうだ。


「へぇ、じゃあ、各地のダンジョンのドロップ品を集めた店があるんだ」


「そうだよ。アイテム通りと呼ばれてるんだって。冒険者がたくさん売りに来るらしいんだ。万年樹のドロップ品は、低層階のも人気があるんだって」


「へぇ、昨日はアイテム通りに行っただけ?」


「いや、ダンジョン1階層の木の実を集めてから、転移屋を使って行ったんだ」


「転移屋? 転移魔法陣ってこと?」


「広場の店のひとつだよ。転移魔法が得意な人が、行きたい場所に転移させてくれるんだ」


「へぇ、そんな店があるんだ。そういえば、いろんな店があるけど、全然行ってなかったよね」


「だろ? 使える情報いろいろ聞いたよ。リントは?」


 ギクッ


 そういえば、俺は4階層のボス攻略は、何も考えてなかった。ちょっと昼寝してから行こうと思ってたのに、まさかの爆睡しちゃったんだよね。



「俺は、タイムトラベルを試してた」


「ええ〜っ? どこに行ったの?」


「1991年の青森だったよ。りんご王国があった」


「りんご王国って呼ばれてるだけじゃない? リンゴ産地だから。この国の中に、独立した王国はないよ」


「あ、そっか。だよね。驚いたから、そこを忘れてた」


「で? どうだった? 何をしてきたの」


「リンゴの木が台風被害で弱ってるのを見て、あと資料館に行って……現地の大学生くらいの3人組と話した」


「それで?」


「以上です」


「うん? リンゴくん、もったいぶらなくていいんだよ」


「滞在時間が二時間で、あっという間に時間切れになった」


「あー……なるほど。とりあえず、タイムトラベル体験だけだった感じか〜」


「うん、でも、万年樹がその時代のその場所に導いたってことは、そこに何かの手がかりがあるんだと思う」


「そうだね。でも、二時間じゃ、あまり調べられないか。もっとレベルとランクを上げなきゃだね。そういえば、きのこちゃんが、近い過去なら千年樹の方がいいと言ってなかったっけ」


「そういえば、そうかも」


「千年樹のダンジョンも行ってみなきゃね。でも、ダンジョンランクはゼロからになるよねー」


「あー、うん、だね」




 コンコン


「どうぞ〜」


 扉を開けて、スイトが入ってきた。


「スイト、おはよう」


「あぁ、おはよう。もう、魔法ボールの話はしたんだな」


「ん?」


「いま、リントからタイムトラベル体験の話を聞いていたよ」


「タイムトラベルしたのか?」


「うん、ほんの二時間だったけどね。あれ? 魔法ボールの話は、スイトも知ってるの?」


「あぁ、アイテム通りには一緒に行ったからな」


(えっ? 俺だけが……ぼっち?)


 すると顔に出たのだろう。ミカトが笑った。


「リント、たまたま偶然だよ。ダンジョンは別行動で、買取屋の前で会ったんだ」


「そ、そう」


「うん? リントどうしたんだ?」


「またリントは、ぼっちにしないで病が、発病中だよ。あはは」


 スイトは、首を傾げている。いいよ、別に理解してもらえなくても。しかし、顔に出るのは何とかしなきゃな。



「スイトの話はまだ聞いてなかったな。俺は、1階層しか行かなかったけど。リントは、100年ほど前の台風被害を受けたリンゴの木を見て資料館に行ったんだって」


「そうか。二時間じゃ、何もできないよな。俺は4階層をウロウロしていた。一緒に行ったのはレベル500越えの二人組パーティだ」


「へぇ、すごい。なぜ、そんな人達が俺達みたいな初心者と一緒に回ってくれるの?」


「リント、その階層をクリアしていない人がパーティにいると、アイテムドロップ率が上がるらしい。その二人はアイテム集めをしていたんだ」


「じゃあスイトくん、4階層の攻略は聞けた? アイスボールをたくさん買ったけど、これでいけるかな」


「ミカト、初級魔法の魔法ボールでは、4階層のボスは厳しいと思う。というか、4階層は、この3人でクリアしようとするなら、まだまだ時間がかかるよ」


「ん? レベル的には大丈夫じゃないの?」


「リント、特殊ボスには、複数パーティで挑むんだ。4階層は、複数パーティでの連携が必要なボスなんだって」


「えっ? ボス部屋はひとつのパーティしか入れないよ?」


「ミカト、だから二人パーティと組めば、5人のパーティになる。最適は3人だと推奨されてるけど、パーティは5人まで組めるんだぜ」


「あっ! ダンジョンに入るときから、5人で入ればいいんだ」


「そういうこと。昨日一緒に回った人達が、4階層をクリアしたいなら、協力するって言ってた」


「スイト、えらい! 天才!」


 俺達は大騒ぎしたが、スイトは首を傾げていた。



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