19、万年樹の島 〜情報連動を設定する、レベル100
俺達は、広場の食堂に入った。
ダンジョンの4階層は、クリアどころかウロつくだけでも大変だった。暑さ対策に魔力を使いすぎると、ボス部屋で魔力切れを起こしてしまうかもしれない。そんなことになると、絶対、全滅してしまう。
ミカトが、その作戦会議のついでにごはんにしようと言い出したことで、いったん休憩することにしたんだ。
「しかし、あれ、無理だよね。うぇー、マズっ」
ミカトは、食堂の入り口の自販機で、ポーションを買っていた。体力が2,000回復する一番安いやつかな。
「ミカト、それ、いくら?」
「ん? 500円だった。アイテム屋でまとめ買いすると安いらしいけど、冷えてる方が飲みやすいって聞いたから」
「ふぅん、じゃあ、アイテム屋でポーションをたくさん買い込めば、4階層クリアできるんじゃない?」
俺は名案だと思ったが、スイトにダメ出しされた。
「リント、アイテム屋では体力を回復するポーションはまとめ買いできても、魔力を回復する回復薬は売ってないぜ」
「ん? あ、俺の魔力?」
「そう、それが一番の問題。俺もミカトも、氷魔法なんて使ったら一発で魔力切れになりそうだからな」
「うーん」
俺の魔力がもっと増えなきゃ無理か。確かボス情報では、階数の10倍のレベルが必要だっけ。4階層ならレベル40だよね。二人は昨日31とか32だったから、もう40になってるんじゃないかな?
「ふたりのレベルって、まだ40になってない?」
俺がそうたずねると、二人は腕輪に触れてステイタスを表示していた。
「あー、指輪は出せないからダンジョンランクは見れないんだっけ。俺は39だな」
「ということは、スイトは38?」
「いや、俺も39。たぶん、ミカトはもうすぐ40なんじゃないか? 4階層のボスはレベル40以上でいけるはずだよな?」
「うーん、いける気がしないな。リントはレベルいくつ? 俺達より倍くらい上がりやすい気がするけど」
俺も確認しようか。
「あれ?」
「どうした? リント」
ミカトが席を離れて覗き込んできた。
腕輪に触れると、表示が出たんだ。
【情報連動の設定をおこないますか?】
「これって、指輪の情報がダンジョンの外でも見れる機能じゃん。リント、当然、連動するよな」
「あ、うん、そうする」
俺は、【はい】を目線で選択した。
【名前】 青空 林斗 (あおぞら りんと)
【レベル】 100
【種族】 ハーフフェアリー
【体力:HP】 3,280
【魔力:MP】 1,850
【物理攻撃力】 1,010
【物理防御力】 1,530
【魔法攻撃力】 1,820
【魔法防御力】 1,670
【回復魔法力】 600
【補助魔法力】 1,020
【速さ】 1,500
【回避】 1,580
【運】 148
【その他】 精霊の使徒(Lv.1)
【指輪情報】
①万年樹……ランク12、第3階層クリア
一番下に、ダンジョンのランクとクリア階数の表示が増えていた。というか、えっ? レベル100?
「うわっ、リント、半端ないじゃん」
「情報連動は100で可能になるのか」
「80くらいかもしれないよね。リントは、急に上がりすぎるからわからないな。でも、物理攻撃力は、なかなか上がらないな」
ミカトの言うとおり、物理攻撃力がなかなか上がらない。たぶん、あまり剣を使ってないからだよね。
「でも、これだけ魔力あるなら、4階層のボスいけるんじゃないか?」
「お待たせしました〜。日替わり定食です」
三人で俺のステイタスを見ていると、背後から店員さんが料理を運んできた。いつの間に注文したんだ?
「坊や達、こんなとこでステイタス画面を開けてちゃダメよ。どんな人に見られるかわからないわよ。特に人間じゃない人は注意しなきゃね」
(えっ? 俺のこと?)
店員さんと、バッチリ目が合った。あはは……。
「それから、腕輪と指輪の連動はレベルは関係ないみたいよ。個人差があるのね。遅い人はレベル500でもできない人だっているんだから」
「そ、そうなんですね」
「ふふっ、キミ達がレベル500越えたら、ご一緒しましょう。あっ、お客様、ごゆっくり〜」
そう言うと、ひらひらと手を振って、店員さんは離れていった。びっくりした。俺、女性と話したこと、ほとんどないし。
「な、なぁ、これって、逆ナンかな?」
「ミカト、何を言ってんの」
「だって、ご一緒しましょうって」
「ミカト、それは冒険者としてだろ? リントもいつまでも鼻の下のばしてないで食べたら?」
「へ? あ、うん、食べる」
「レベル500ってかなり気合いいるよな」
ミカトは嬉しそうにしているが、スイトは何とも思ってないようだ。なんだか対照的な二人だよね。
「なぁ、情報を集めるために、明日は別行動にしてみないか? この広場ってさ、ダンジョンに入る臨時パーティの募集掲示板があるだろ。あれ、一度利用してみようぜ」
「スイト、それナイスだよ。4階層のボスの攻略方法もわかるかもしれないしな。リントもそれでいいよね」
「え〜っ? ひとりぼっち?」
「また出た。リントの、ぼっちにしないで発言」
ミカトはそう言うとニヤニヤ笑っていた。スイトは不思議そうな顔をしている。
「リントのひとりにしないで、というのはネタじゃないのか?」
「ふっふっふ、スイトくん、違うのだよ。何が原因かわからないけど、ぼっち恐怖症みたいなんだ。なーんてね」
「なんだ、やはりネタだろ。まさか、17歳にもなってひとりが怖いなんて言うわけないもんな」
(いや、怖いんですってば)
二人は、ネタだと思っているのか。まじか、ありえない。普通、ひとりになるのは怖いだろ。
その後、俺達は、ドロップ品を売りに行った。いつもの店に行ったけど、少し時間が早いためか、紅牙さんは居なかった。俺の分は、物々交換にしてもらった。
ちょうど、ポーションのまとめ売りをしていたので、それと交換した。5.000回復が15本、1万回復が10本、5万回復が1本入っていた。全回復どころじゃないね。
「5万回復は、あまり出回ってないからセット売りになってるんだ。本当に必要なときに使えよ」
「はい、わかりました」
「リントが5万回復を使えるようになるのは、まだまだ先になりそうだね。俺もまだ先だけどさ〜」
店を出ると、ミカトがそう言って笑っていた。自分で使うことはないだろうな。使うなら、ミカトやスイトの回復だね。
そして、俺達は、屋敷へと戻った。




