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148、某テレビ局 〜丸呑み、ですか

 カゲロウ達の食事の様子が、頭の中に流れてきた。こびと達が送ってきたようだ。その映像は、圧巻だった。なんでも……丸呑みだ。


 海ヘビの魔物だから体長は長いが、襲撃してきている人工魔物と比べると、小さくみえる。だが、自分より大きな魔物を種類に関係なく、丸呑みしているのだ。


 そして奴らは、食事は海ヘビの姿だが、丸呑みすると、次々と人化していっている。とんでもなくお腹がパンパンな個体もいるが、なぜすぐに人化するのだろう?


 人化とは言っても、人間の倍ほどのサイズだ。青いローブから、白っぽいお腹だけがぽっこりと出ている光景が、中継カメラで撮られているようだな。


 すぐに、人形の姿になるのは、こびと達の指示なのかもしれないな。海ヘビの魔物の姿だと、やはり恐怖を与えるだろうからね。


 でも、あちこちに青い人形がまん丸になって転がっている姿は、ちょっと不気味なんだけど。


 カゲロウ達は、片目のリーダー以外には、表情はない。かすかに笑ったりするが、それは、人間は気づかないくらいの僅かな変化なんだ。


 無表情で転がっているから、不気味に見えるのかな。


(まぁ、魔物に愛嬌を求めるのも、違うね)



 襲撃していた人工魔物は、カゲロウ達を恐れ始めたみたいだ。かなり暴れている魔物もいるけど、なぜか、すぐにおとなしくなる。


 あー、そっか。こびと達が抑えているのかもしれないな。木の精の光があちこちに見える。


 そして、青い人形だらけになる頃には、魔物達は逃げ出していた。奴らは特に追いかける気はなさそうだ。というか、コロンコロンで動けないのだろうな。



 中継画面に、奴らが転がっている様子が映し出されると、観客は、どっと笑っていた。かわいいという声も聞こえる。好意的に受け止められているなら、まぁ、大丈夫かな。


 それに、カゲロウ達は、透過魔法を使う。だから、きっと、通行の邪魔にもならないよね。



『リント様、各地の魔物制圧が完了しました』


 こびと達から念話が入ってきた。


『そう、ありがとう。カゲロウ達は、何してんの?』


『食べると眠くなるようですね』


 無表情で目を開けたまま、眠っているのか。それも、ちょっと怖いよね。まぁ、眠っているようには見えないからいいけど。


『カゲロウ達以外の人工魔物で、敵対的なのはどれくらいいるかわかる?』


『はい、種族数は常に増加するため、正確にはわかりませんが、個体数でいえば、約半数は、人間と関わる気はないようです。残りの半数が敵対的かと』


『じゃあ、気は抜けないね』


『はい、ある程度は、カゲロウや、制御ができた他四種の人工魔物を使って排除できますが、現状で、すべてを守ることは不可能です』


『わかった。あ、カルデラ達はどうしてる?』


『姫様は、京の屋敷に戻っているようです。他の妖怪達には特に変わった様子はありません』


『そう、わかったよ、ありがとう』




 俺は、ステージ上で、マイクを握った。


「皆さん、各地の人工魔物の襲撃は、いったん収まったようです」


 そう言うと、ワッと観客から歓声が上がった。うげっ、カメラがこっちに向いたよ……。


「ですが、この国で生まれた人工魔物は、この国や、付近の近海にいます。半数は人間に対して敵対的です」


 すると、司会の人がマイクを片手に近寄ってきた。


「リントさん、敵対的な人工魔物の数は、わかりますか?」


「魔物は、常に種族数も増え続けています。正確な数は、わかりませんが、人間の数を余裕で超えています。その半数程度が敵対的です」


 こびと達から個体数の報告が入った。今の人工魔物の数は、約三億体。日本人の倍以上いる。これは、そのまま伝えるのはマズイと思ったんだ。


「そんなに増えているのですか!! 大変だ。さっき科学者の先生達は、十万体とおっしゃっていたんです。でも、そうですよね……襲撃してきた魔物だけでも、十万体以上の確認がされていますからね」


 俺はコクリと頷いた。


「おそらく、ただちに対策会議が開かれると思います。リントさんには、また応援要請があるかと思いますが……」


「はい、可能な限り、協力させてもらいます」


「本日は、ありがとうございました!」


 拍手が起こり、そして番組のエンディングのような音楽が流れた。



「リントさん、お疲れ様〜」


「如月くん、カゲロウの世話、ありがとうね」


「青いドールちゃん、可愛いですよね。人化しているときは、人間の中に紛れ込んでいるつもりみたいでしたよ」


「あー、そうなんだよね。人化していると目立たないのー、とか言ってたかな。あんなにデカイのにさー」


「あははは、ですよねー。バックダンサーも、目立ってないつもりみたいですよ」


「そう、でも、うん、怖がられなくてよかったよ。木の精は、カゲロウを人間と共存させるつもりみたいだから」


「はい、そのように伝達が届いています。人間に受け入れられるように、演出してほしいと言われました」


「無茶ぶりだよね」


「あはは、でも、かわいいですし、人間を襲う気もないみたいなので、大丈夫ですよ」


「魔力の高い魔物しか餌にしないようだけどね。人間には、魔力の高い人もいるから不安だよ」


「リントさん、それは大丈夫です」


「ん? なぜ?」


「青いドールちゃんは、人間は小さくてしょぼいって言ってました。だから、食べないそうです」


「えっと、話が見えないけど」


「小さくてしょぼいものを食べると、自分も小さくなると思っているみたいです。だから、大きくて魔力の高い魔物を食べるそうですよ」


「それで、丸呑みか……」


「食べて、コロコロになって動けなくなってる姿、かわいいですよね」


「不気味じゃない?」


「いえ、全然。みんなかわいいって言ってますよ」



 如月くんと、ステージ裏で立ち話をしていると、ミカトとスイトがやってきた。如月くんは、アイドルスマイルを浮かべ、スーッと下がっていった。



「リント、帰ろうか。紅牙さんから転移具を借りてるんだ」


「ミカト、さすがだね。あ、でも、帰るって……万年樹?」


「いや、修復するからと、きのこちゃんがダンジョン内に居た人達を、外に出してるみたいだ。俺達は、高校の寮に行けって」


「スイト、寮なんてあったっけ」


「あぁ、ミカトの顔を見れば、場所もわかるだろ?」


 ミカトは、うずうずしている。この顔は……。


「お食事ダンジョンの中?」


「惜しい! 高校の裏側の高台!」


「寮には食堂がないから、お食事ダンジョンのコインをくれるらしい」


「へぇ」


「なぁ、早く帰ろうよ」


 ミカトに急かされ、俺達は、寮へと転移した。



次回は、8月22日(土)に投稿予定です。

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