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147、某テレビ局 〜やっと、ひとつ片付いた

「陰陽師なんて、私の下僕よ」


 カルデラは、意地悪い笑みを浮かべている。その視線の先には、黒い着物を着た怨霊の安倍晴明の姿があった。


 俺は、彼の方を向いた。


「安倍晴明様、ここにいる妖怪22体すべてを、確実に、平安時代へ送り届けていただけませんか?」


「青空殿が命じれば、逆らえないのではないのか?」


「先程もご覧の通りです。素直に従うとは……」


 俺がそう言うと、怨霊の安倍晴明は、ニヤッと笑った。


「それが済めば、私は戦国時代に戻れるのだな?」


「はい、それで結構です」


「あい、わかった。任せておけ。だが、各地で暴れている魔物は放っておいてよいのか? 奴隷なら、コイツらを使えばいいのではないか」


「それはできません。さっきまで人間を攻撃していた彼らが行けば、人間は絶望しますからね」


「確かにそうだな。ふっ、役に立たない奴隷だな」


 怨霊の安倍晴明は、妖怪達をあざ笑っている。まぁ、仲良くできるわけないよね。俺は立ち入れない世界だな。



「カルデラ、キミ達もそれでいいね」


「こんな監視をつける必要なんてあるのかしら」


「俺は、キミ達の力を知っている。だから、完全に信用できない。監視は必要でしょ。それから、何かあれば、木の精が連絡する。木の精の言葉は、無視しないように。俺からのエネルギーを運ぶのも彼らなんだからね」


「私があの子を、邪険にするわけがないでしょう?」


 カルデラは、ツンと視線を逸らした。だけど、その表情は、さっきまでの狂った表情ではない。なんだか幸せそうにもみえる。


「じゃあ、安倍晴明様、お願いします」


 彼は、軽く頷き、妖怪達を何かで捕捉したようだ。陰陽道かな。そして、全員、テレビ局からスッと消えた。




「はぁぁぁ、よかった〜」


 テレビ局の一階層にいた人達やカメラマンが、心底ホッとしたような表情を浮かべて、盛大に叫んでいる。うん、ほんと、よかった。



 俺も、やっと警戒を解いた。


「リント、とりあえず、ひとつ片付いたね」


「うん、ミカト、ホッとしたよ。紅牙さんは、二階層?」


「さっき言ってた応援要請を受けて、どこかへ行っちゃったよ」


「えっ? カゲロウの監視じゃないの?」


「あー、あの子なら、ステージでバックダンサーしてるぜ」


「へ? スイト、何言ってるの? 魔物だよ?」


「ケン達が、観客を不安にさせないように、音楽番組を再開させたんだ。そしたら、楽しくなったみたいでさー」


(ケンって、如月くんだよね)


「楽しくなったって……」


「まぁ、リント、二階層に降りようぜ。観客も、きっと待ってる」


「あー、うーん」


「スイト、またリントが無理って顔してるよ、あはは」


 ミカトがそう言うと、スイトは、片眉を上げた。呆れてるのかな。俺が不安になってスイトの顔を見ると、ぷぷっと笑い出した。


「リントは変わらないな。ちょっとホッとするけどさ、創造主たる王になったこと、忘れてないよな?」


「あー、うん、忘れてないよ」


「ふっ、ダメだな、こりゃ」


(えーっ……)


「あはは、リントくん、変顔をご所望ですかな」


「ミカト、こんな場所で変顔はダメだよ。どこにカメラがあるかわからないじゃない」


 俺がそう反論すると、二人は同時に吹き出した。からかってただけかな。もう〜、っとに。でも、ちょっと肩の力が抜けた。




 二階層に降りていくと、聞いていたとおり、ステージでは音楽番組をやっていた。そして、片目のカゲロウは……まぁ、確かにバックダンサーか。


 他のダンサーのさらに後ろで、ふわふわと飛び跳ねていた。確かに音楽のリズムには合ってるかもしれない。めちゃくちゃ極上の笑顔だ。


 曲が終わっても、ステージから消えないんだね。次のアーティストが登場するのを、ワクワクしながら待っている。


 観客からも、好印象のようだ。もう、カゲロウを恐れている人はいないように見える。まぁ、これも、もしかしたら、こびと達の指示なのかもしれない。


 これからは、カゲロウ達を、人間社会の中で共存させていくつもりだろうからね。




「リントさんが、戻ってきましたねー」


 突然、俺にライトが当たった。如月くん、いきなりすぎないかい? 一気に緊張する。ライトって、なんだか苦手だな。


 観客から、ワッと歓声があがった。あれ? 俺、怖がられてないのかな?


「リントさん、見てましたよー。とんでもない強さでしたね。学者先生達も、安心されていました」


 司会の人が妙なことを言った。なぜ、学者が安心するんだろう? もう、学者や科学者の姿はなかった。出演が終わったから、控え室なのかな。


「いえ、そんなことはないですよ。安心、ですか?」


「はい、もう、新たな人工魔物を生み出す必要がないと、おっしゃっていましたよ。そして、妖精を使って人体実験をしていたことを詫びておられました」


「そうですか」


「ええ、妖精を使って人工魔物を生み出しても、妖精王を超えられないって。人間は傲慢だったと、おっしゃってましたよ」


(そっか、よかった)


「ご理解いただけてよかったです」


 うーん、スキル「精霊の使徒」を使わなかったら、俺はここまで戦えないんだけどな。でも、それは言わない方が良さそうだよね。



「引き続きで恐縮なのですが、日本の各地で人工魔物が襲撃しているようなのです。さっき、紅牙さんが、樹海付近に応援に行かれましたが」


 俺は、コクリと頷いた。


 さっきから、この件については、こびと達からも連絡が入っている。それに、ダンサーをしているリーダー以外は、今は上空で待機中だ。


 俺が、片目のカゲロウの方を向くと、奴はふわふわと近寄ってきた。


「ごはん、まだー?」


「ターゲットは、わかってる? 襲撃している人工魔物だよ? うっかり人間や妖怪を食べちゃダメだよ」


「人間は、しょぼいのー。魔力ないから、いらないのー」


(しょぼいとか言うなよ……)


「妖怪もダメだよ?」


「妖怪は、魔力ないから、いらないのー」


「間違わない? 全員、大丈夫?」


「みんな、マズイごはんは、いらないのー」


 うん、大丈夫そうだね。こびと達の分身も、あちこちでフォロー体制が完了したみたいだ。


「じゃあ、襲撃している人工魔物を食べておいで」


「はーい、なのーっ」


 返事をしたくせに、片目の個体は動かない。うん? 如月くんをガン見してるみたいだけど?


「青いドールちゃん、ごはんが終わったら、また遊ぼうね」


 如月くんがアイドルスマイルを浮かべると、奴はちょっと恥ずかしそうにしている。


「はーい、なのー。みんな、ばいばい、なのーっ」


 観客に手を振って、奴はスッと消えた。



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