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146/153

146、某テレビ局 〜眷属化、だが……

『スキル、実行するよ』


 俺は、スキルに返事をした。


『かしこまりました。隠れスキル「眷属化」を実行します』


 目の前に、イエス、ノーの文字が浮かんだ。そっか、重要なことは、目線でのサインが必要だっけ。


 俺は、イエスを選択した。


『眷属化のためのエネルギーを、木の精から供給しても構いませんか』


『えっ? あー、彼らが何て言うかな?』


『主人がそうしろと言うなら構わないそうですが』


『スキル、いつからこの準備をしていたの? 妖怪達も、本当に説得できているのかな。彼らが俺に従う気がないなら、眷属化できないでしょ』


『妖狐と対峙されたときからです。あの妖狐は倒しきれないと予測できました。彼らの説得は、少し時間がかかりましたが、無事完了しています』


(えっ……倒せないと知っていたの?)


 だから木の精は、ちゃっかりと、ブラック・ホールのエネルギー放出場所に居たんだ。


 でも、カルデラ達は、人間を滅ぼすために自害したんだよね? 俺の眷属になる気なんて、絶対にないでしょ。


『くどいようだけど、本当に説得できてる? 術返しをされたりしないのかな』


『説得できています。ご安心ください』


『どうやって説得したの?』


『メリットとデメリットを説明しても理解できないようでしたので、眷属になれば、主人との連絡は基本的に木の精が行うと教えました。すると、ふたつ返事でした』


『なるほど…………策士だね』


『……木の精からエネルギーを供給しても構いませんか』


『うん、お願いします』



 俺の手に、強いエネルギーが集まってきた。チラッと、カルデラの方を見ると、やはり笑っているように見える。なるほど、それで笑っていたのか。


 俺は、両手を、妖しげな炎へと向けた。


 確実に受けようとしているのか、火の玉となった妖怪達も、カルデラの元へと勝手に集まり始めた。


 フワッと淡い光が、俺の手から放たれた。



『妖怪22体の眷属化に成功しました』


『そう、ありがとう』


 妖怪達は、俺が放った光に包まれている。如月くん達に使ったときよりも、時間が長い気がする。これで、本当に、眷属化できているんだろうか。


(やはり、術返しされるんじゃ……)


 俺は、警戒したまま、その光を見つめていた。



「リント、どんな感じ?」


 ミカトとスイトが、俺の両側に立った。ミカトは、俺の肩に手を置き、スイトは光に剣を向けている。俺の不安が、二人に伝わってしまっているんだな。


「うん、一応、成功したみたいだけど、妙に時間がかかってるんだよね」


「まさか、術返しか」


「スイト、俺もそれを警戒してる」


 ふっと、ミカトの手が離れた。彼の方に視線を向けると、カメラを制してくれている。テレビ局だもんね……。


「何をしているのですか? あの、もう妖怪が大丈夫なら、各地の人工魔物について、協力要請が来ているようで……」


 俺が視線を向けると、少しビビったのか、彼は一歩さがった。その割には、めちゃくちゃ見られるんだけどな。


「まだ、今は手が離せません」


「そ、そうですよね。あはは」


 やはり、俺が怖いみたいだ。ぶわっと汗が吹き出している。彼は、ガタリとカメラを落とした。ちょ、大切な物じゃないの? そこまで怖いなら、近寄ってこなきゃいいのに。


「リント……出てきたぞ」


 スイトの声に、振り返ると、そこには妖しげに微笑むカルデラがいた。


「うわぁあぁ〜!」


 カメラを落とした男は、腰が抜けたのか、その場に崩れるように座り込んだ。まさか、カルデラが何かしたんじゃないよね?



 カルデラの後ろには、他の妖怪達もズラリと立っている。うん、確かに22体の妖怪だね。数に間違いはない。問題は、眷属化できているかだ。


 如月くん達の場合は、すぐさま俺にひざまずいた。だけど、今、目の前にいる妖怪達は、立っているんだ。



「カルデラ、俺の眷属になる気があるのか?」


「あら、だからこそ、今ここに姿を現したのよ?」


「眷属の意味がわかっているか?」


「なんだか無機質な声がキーキーしゃべってたけど、よくわからないわ」


「俺の奴隷になるということだよ」


 俺がそう言うと、カルデラは、キッと睨んだ。プライドの高い彼女には、受け入れがたいことだろうね。


「すでに、キミ達が承諾したから、スキルは、キミ達を生き返らせた。どうせ明日には復活予定だったんだろうけど」


「あら、知っていたのね」


「キミ達には、二つの選択肢を与えるよ。このまま、俺の眷属として生きるか、契約を白紙に戻すか」


「やめると言ったらどうするのかしら?」


「俺は、キミ達に与えた生命エネルギーを回収する。キミ達は、ここで死んで、一定期間後に蘇るだろう」


「あら、一昼夜後よ?」


「違う。貴女の術は発動しない。だから千年後か」


 俺がそう言うと、彼女の形相は変わった。そして俺に殺気を向けたが、その瞬間、彼女の額の赤い石が反応した。パチリと、彼女に電撃をくらわせたみたいだね。


 カルデラは、額を押さえて、よろめいた。石を外そうとしているみたいだ。


「カルデラ、その石が壊れると死ぬよ。それで主人からのエネルギーを受けているんだ。心臓と同じだよ」


「おのれ! 騙したな。うぁぁ」


 また、俺に殺気を向けて電撃をくらっている。学習しないんだね。


「俺に殺気を向けると、罰が下るみたいだね。さぁ、どうする?」


「千年後だなどと……」


「白紙に戻さないなら、キミ達は俺の眷属だ。キミ達は、俺からのエネルギー供給を受けて生きることになる。俺のエネルギーをキミ達が必要な妖気に変換するのは、木の精の仕事だ」


「あの子が、いつもそばにいるなら……」


 カルデラの表情が変わった。無の怪人の話になると、ガラッと変わるんだね。


「木の精は、常に、キミ達を見張っているよ。あまりにも非道なことを繰り返すようなら、俺はキミ達へのエネルギー供給をやめる」


「いつでも殺せると言いたいのね」


 カルデラは、またキッと俺を睨んだ。


「そうだよ、いつでも殺せる。だけど、俺の眷属としての最低限の仕事をしていれば、永遠の命だ。俺には寿命はないからね」


「ふぅん、悪くない条件ね。最低限の仕事って何かしら?」


 カルデラは好戦的な笑みを浮かべている。ふっ、勘違いがひどいね。


「平安時代に戻り、和リンゴの成長を見守ることだ」


「えっ!?」


「具体的な作業は、鞍馬の軽寺に住む、狐の子供達に託してある。貴女は、鞍馬の狐の里を守護してやってほしい。陰陽師に潰されないようにね」


「それだけなの?」


「そうだよ。大変な仕事だと思うけど?」


 俺がそう言うと、彼女は、ふんと鼻で笑った。



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