表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/153

138、樹海 〜妖怪の里長の頼み

「リント様、お聞きの通りですよ。これで私の役目は終わり……ではないのか。ふむ……まさか永遠にということか?」


 怨霊の安倍晴明は、カルデラの勢力を鞍馬の天狗から聞き出してくれた。たぶん自らの意思ではない。こびと達が命じているみたいだ。


「貴方が俺にチカラを貸してくれることが、身体を得る条件でしたか」


「あぁ、そうだ。だが、私はこの時代ではなく、戦国時代をさまよっていたのだがな」


 彼は、戦国時代に帰りたいんだな。チカラのある陰陽師だから、身体を得たら、戦国時代では不自由しないだろうね。


「それなら、危機が去ったら、戦国時代に戻ってもらって構いませんよ」


「あい、わかった」


 彼は、生身の安倍晴明に自らの霊力を託しているようだ。強いエネルギーが見えた。平安時代への転移魔法陣がある場所まで、付き添うわけじゃないんだね。



「青空殿、世話になった」


 平安時代の安倍晴明が俺に笑みをみせた。


「いえ、こちらこそ。平安時代ではいろいろと教えていただき、ありがとうございました」


 俺がそう言うと、彼はやわらかく微笑んだ。


 そして、安倍晴明と天狗は、その場から消えた。怨霊の安倍晴明はこの場に残っている。


「リント様、二人を転移陣に送りましたよ。あー、うむ、平安時代へと無事に戻ったようだな」


「そうですか、離れていてもわかるのですね」


「あぁ、軍神が場面の様子を送ってくるのですよ」


(こびと達の分身はあちこちにいるからね)


「彼らは、タイムトラベルのできる木の精ですからね」


「ふむ、私が戦国時代に戻っても、ずっと監視されそうだな」


 俺は、あいまいな笑みを浮かべた。


 別に、俺としては、別に怨霊の安倍晴明を使い続ける気はない。でも、無の怪人……こびと達は、彼を利用するつもりなのかもしれない。だから、身体を与えたんだろうな。




「リント、妖狐はどこに行ったんや? ややこしいことになってへんか?」


 紅牙さんは、心配そうな顔をしている。そんな弱気な表情は珍しいな。


「東京だと思います。だけど、他にも妖怪を連れてきているという情報から考えると……」


「ヤケになっとるようやったけどな」


 俺は頷いた。こびと達の声は聞こえない。俺から指示をしないといけないよね。カルデラの暴走を止めて、平安時代へ追い返さなければいけない。


 平安時代の妖怪達が、現代の妖怪を先導して人間を襲わせていると言っていたっけ。人間と妖怪が敵対することになったら、カルデラを追い返しても、後に遺恨が残ってしまう。


(あれ? 里の妖怪達……)


 カゲロウ達が捕まえた妖怪達は、カルデラに操られている感じがしない。


「リント、コイツらなら、もう妖狐の術は解けとる。再び、術をかけようとしよったけど、かからんみたいや」


「そうでしたか」


「その魔物の毒に、覚醒作用があるようやな」


 紅牙さんは、カゲロウ達を見てそう呟いた。カルデラよりも、カゲロウ達の方が怖ろしいって思ってるのかな。


(あれ? カゲロウ達の数が?)


 俺はあたりを見渡した。あんなに大量にわいていた青い魔物達は、この付近に30体くらい居るだけだ。


 少なく見積もっても、数千体は居たよね? 確か六万体くらいの種族らしいけど。


 カゲロウ達は、俺が見ていることに気づくと、ヘラッと笑った。うん、サイズが小さかったら、可愛らしいだろうな。人間の倍はあるもんね。でも、妖怪達の中に入ると、決して大きくはないか。




「紅牙さん、里の妖怪さん達は、このままで大丈夫ですか? 魔物達の毒を受けてるなら毒消しが必要ですか?」


「いや、毒消しをすると、また妖狐の術にかかるかもしれん。多少しびれがある程度や」


 里の妖怪の話をしていると、紅牙さんの目の前に、天狗のような爺さんが現れた。鞍馬の天狗とは違って、人間と同じ大きさだ。


「紅牙か、手間をかけたな」


「里長、俺は見学してただけや。他の里も妖狐に操られてるんやな?」


「あぁ、あの美しい狐か。妖気の強い妖怪を引き連れていた。操るというよりは、説得したと言う方が正確かもしれん。反対する里は、潰されたり、操られたりしているがな」


「俺の母親の里も、消えてなくなっとったわ」


 爺さんは、心苦しそうに頷いた。


「みな、あちこちに逃げたようだがな」


 そして、爺さんは、俺達の方を見て言った。


「妖怪達を止めてくだされ。わしらでは、圧倒的にチカラが足りないのだ」


 俺は頷いた。ミカトやスイトも力強く頷いている。


(でも、どうすれば……)




「配置できたのーっ!」


 上空から、そんな声が聞こえた。青い空に浮かぶ片目のカゲロウは、とても綺麗に見えた。


(配置? 陣形か)


 だから、この付近のカゲロウ達が居なくなっていたんだ。でも、どこに配置したんだろう?


 青い人形は、スーッと降りてきた。


 妖怪の里長の爺さんは、ギョッとして構えている。


「里長、この魔物は、リントが従えているから心配いらん」


(いや、無の怪人が従えているんだけど)


「魔物、か?」


「せや、人工魔物が進化したんや。人間が作っとるやつや」


 紅牙さんの説明に、里長の爺さんは眉間にシワを寄せている。人工魔物に嫌悪感があるようだ。警戒しながら、ジッと睨んでる。



「配置って、どこに?」


「全部なのー」


(うん? まさか、襲撃先すべて?)


「みんな、その姿? 海ヘビの姿?」


「人化してるのー。だから、目立たないのー」


(大きすぎるけどね)


「配置してるのは、何体?」


「わかんないのー」


「キミ達、みんな人化は終わったの?」


「そうなのー」


 全部で六万体ほどの青い人形か……。各地で大騒ぎじゃないかな。


「配置してないのは?」


「護衛なのー」


 この場にいるカゲロウ達みんなが、手をあげている。ということは、ここにいる以外がすべて、妖怪と対峙してる?


 そのとき、頭の中に映像が流れてきた。


(うっわ、日本各地じゃないか)


 カゲロウ達は、上空に浮かんでいるようだ。そして、その下では、妖怪の集団と、それを迎撃している人間達。各地で、妖怪対人間の戦乱になってるよ。


(上空で、俺の指示を待っているのか)


「声を届けることはできるかな?」


「わかんないのー」



 すると、こびと達が俺の中から出てきた。


「リント様、テレビ局を使いますか?」


「えっ? えーっと……」


「リント様の眷属けんぞくの数人がテレビ関係者です」


「あ、アイドルも居たね」


「はい、あるテレビ局でスタンバイ中です。彼らは、リント様が、何らかの呼びかけをされると考えたようです」


(すごいね、みんな……)


 俺が頷くと、その直後、俺達は転移の光に包まれた。



次回は、8月8日(土)に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ