表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/153

130、樹海 〜カゲロウが向かった先には

 どこに向かっているのかわからないけど、カゲロウ達がふわふわと飛んで、俺達を先導している。


 不思議な魔物だな。体長は3メートル以上ありそうだ。大きな人形みたいに見える。青い髪に青い目。透明感のある青いローブをまとっている。


 遠くから見ると綺麗だと思う。でも、このサイズには、びっくりするよね。


 海ヘビの魔物なはずだけど、ウロコのようなものはない。つるんとした陶器のような顔をしている。もともとは肌色のヘビだったんだよね。あれは気持ち悪かった。


(しかし、これ、何体いるんだよ?)


 尋ねたくても、こびと達は俺の中に入って隠れてしまった。おそらく、俺達の存在が、カルデラか、カルデラが支配する妖怪に知られたんだ。だから、こびと達は隠れたのだと思う。



「リント、この人形みたいな子、何人いるの?」


「ん? ミカト、数えてみてよ。俺には、わからない」


 すると、片目の個体が、俺達の前に移動してきた。リーダーに指名したことになった個体だ。


「いま歩いてるのはねー、三千体くらいなのー」


「全部で何体いるの?」


「んとねー、六万体くらいなのー」


「そんなに? 海にいるの?」


「さっきの池で人化できるから、順番待ちなのー」


(人化? サイズが……)


「もしかして、どんどん青い髪の人形の姿に変わってるの?」


「そうなのー、人化してるのー」


「人間は、体長はキミ達の半分くらいしかないよ?」


 俺がそう言うと片目の個体は、空中でふわりと一回転した。サイズを小さく変えるのかと思ったら、逆だった。さらに少し大きくなったような気がする。


「体積は、あまり変えられないのー」


 なんだか残念そうな顔をしている。人間のサイズになる気はなさそうだ。人間より上位種のつもりらしい。


「大きくなりたいの?」


「そうなのー。でも、人間の倍くらいにしかなれないのー」


 彼か彼女かはわからないけど、カゲロウは、大きく見せることで、強さを表しているのかもしれない。


(強いのかな?)


 こびと達は、カゲロウを使えば、妖怪を制圧できるかのようなことを言ってたけど?


 見た目は、大きな人形だし、戦闘能力はわからない。人工魔物が進化したから、ある程度は強いはずだけど。


 あっ、カゲロウの毒を使えばって言っていたっけ。毒を使わなかったら、戦えないのかな。




「リント、目的地は、支配されてる妖怪の里やな?」


 紅牙さんが、少し警戒しながら、小声でささやいた。なぜ、小声なんだろう?


「俺、わかってないんですよね」


「は? なんやて?」


 思わず叫んで、紅牙さんは、ハッと口をつぐんだ。


(あっ、何か来る)


 何かが近づいてくる気配がした。でも、すぐにその気配は消えた。あれ? 気のせいだったのかな?


 ザワザワと、木々がざわめいている。


(何? えっ? 人面樹?)


 樹海の中を、どこかに向かって歩いているんだけど、急に、周りの木々の幹に、顔が浮かび上がった。


 だけど、木の枝が伸びてきても、俺達には当たらない。


(わっ!? 何?)


 鋭い槍のようなものがどこからか飛んできて、木の枝を叩き斬った。槍みたいなものは、木の枝を叩き斬ると、地面には落ちず、スッと戻っていく。


「カゲロウか……確か、はがねの皮膚を持っとったはずやけど、爪か?」


「槍みたいに見えましたけど」


「リント、人形の爪が伸びるのを見たよ。伸びたら、槍みたいになるんだ」


 ミカトが、手をバタバタさせて実演してくれるんだけど、よくわからない。


「リント、コイツら、制御できているのか? もし、敵対したら、俺達、人工魔物に囲まれているんだぜ?」


 スイトは、不安そうな顔をしている。スイトも、カゲロウが爪を伸ばすところを見たみたいだ。


「うん、木の精が、制御できたと言ってたから大丈夫だよ。俺、爪が伸びるとこ、見てないんだよね」


「巨体なのに、移動が速いんだ。木々をすり抜けることもできるみたいだぜ。でも、この人面樹って、もしかして……」


「樹海って、普通の木々が生えているはずなのに、おかしいよね」


「あぁ、そうだな」


 スイトも俺と同じことを考えているみたいだ。ミカトと紅牙さんも気づいたようだ。


 でも、口には出さない。精霊の名を出すと、きっと襲われる。いや、もう襲われているんだけど。




 さらに、俺達は進んで行った。


 この先には、妖怪の里があることは間違いないみたいだ。でも、カゲロウは、あの池からまっすぐ妖怪の里に向かったわけではない。途中で、大きく進路を変えたんだ。


 こびと達は、俺の中から出てこない。でも、あちこちに分身の気配がする。分身を使って、カゲロウに指示を与えているんだ。


(目的地は、腐木の精霊のすみかだね)


 腐木の臭いがしてきた。



『なんだ? おまえ達、この神聖な場所に立ち入る許可を誰に……うん? 見たことのある人間が二人いるな』


 カゲロウ達が、立ち止まった。攻撃を受けて、数体が吹き飛ばされたんだ。


(二人? 俺も居たんだけど)


 ミカトとスイトの前に、老人が姿を現した。


「爺ちゃん、その二人をいじめちゃだめなのー」


 片目の個体が、ミカトとスイトをかばうようにして、二人の前に移動した。


「なんだ? 魔物か?」


「爺ちゃん、腐った臭いがして、くさいのー」


「奇妙な魔物だな。言葉を話すまでに進化したとは」


「爺ちゃん、安倍晴明様のむくろを返して、なのー」


「なるほど、あの陰陽師の術式か。あの女狐がおまえには渡すなと言っていたのだがな。女狐の目を盗んで、妙な魔物を寄越したか」


(えっ? カルデラとつるんでる?)


「爺ちゃん、安倍晴明様の骸、返してもらうのー」


(なっ?)


 片目の個体がそう言った瞬間、目の前が水の中になった? 青い海の中に入ったかのような感覚だ。


 腐木の精霊も慌てている。


 でも、水の中に見えるけど、息はできる。これは幻影なのかな?


「爺ちゃん、ありがとう、なのー」


「おまえ! まさか」


 腐木の精霊は、腰にさげていた袋を開けた。すると、その中から、スーッと頭蓋骨が外に出てきた。そして、水の中に消えていった。


「あっ! 謀ったな!」


 カゲロウは、腐木の精霊を騙して、袋を開けさせたんだ。なんてズル賢い……。こびと達の指示だよね、きっと。


「爺ちゃん、ばいばい、なのー」


 リーダーの個体がそう言った瞬間、俺達はワープしていた。腐木の精霊の気配がする方を見ると、そこは、数メートルの水の壁に覆われていた。



「あれは……」


「爺ちゃんは、水が好きみたいだから、すみか全部、水いっぱいにしてあげたのー」


「腐木の精霊は、水は苦手なはずやで……」


「邪魔なのー」


(コイツら、やばいんじゃ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ