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13、万年樹の島 〜ダンジョンのエリアボス情報

 翌朝、俺は身支度を整えて、ミカトが来るのを待っていた。


 コンコン


「どうぞー」


 扉を開けて入ってきたのは、スイトだった。


「おはよう、リント。ミカトから、リントの部屋で集合と聞いていたんだが……」


「ミカトはまだだよ。適当に座って」


「あぁ、ありがとう。リントの部屋も広いんだな」


「ん? 俺は他の部屋は覗いてないんだけど」


「そうか。部屋の広さは、まんじゅ爺が選んだらしい」


「そうなんだ」


 俺は、スイトが何を言っているのかわからなかった。


「もしかして、知らないのか? 俺も部屋が広いんだよ。滞在期間が長くなる王子の部屋は広いらしいぜ」


「えっ? 滞在期間なんてわからないじゃん。まんじゅ爺は予知ができるのかな」


「俺達が浮き島に戻る条件、自国の繁栄だろ? それが簡単な人と難しい人がいるからだと思う。俺やリントは難しいんだよ。バナトやミカトより、さらに狭いワンルームな王子もいるぜ」


「そう、なんだ。確かに、俺は何をすればいいかわからないよ。でも、ミカトもわからないみたいだったけど?」


「ミカトの場合は、簡単だよ。ミカンって箱詰めされたりすると腐りやすいだろ? それを改良すればいいんだよ。バナトは、バナナの木が病気に弱いから、それを改良すればいい」


「す、すごい。スイトは、やっぱ頭いいね」


「簡単なことだから。でも俺は自分の使命はわからない。そもそも季節が限られるし……。リントの、リンゴのこれ以上の繁栄っていうのも、俺にもわからない」


「だよね。食後に食べるには、ナイフが必要だから気軽に食べられない人がいるのかとは思うけど」


「それあるよ、ナイフの有無って重要」


「でも、だからって、リンゴは、バナナみたいに皮簡単にむけないしね。そもそも繁栄って何?」


「この国での生産販売量が増えることだろ。あまり食べられていないフルーツは逆に楽だよな。宣伝すれば良いだけだ」


「そっか。それに俺は、精霊の使徒に選ばれたから……」


「あぁ、それだよ。だから、何かが起こる前に浮き島に戻ってしまおうと考えている王子もいる。昨日一緒にダンジョンに行ったから、そんな話ばかりしていた」


「ええー? みんなで協力してくれるんじゃないの?」


「自分のことしか考えていない奴もいる。誰とは言わないけどな」


「そっか」



 コンコン!


「ごめん、遅くなった〜。じゃあ、行こう」


 ミカトが何かのメモを持って、やってきた。


「どうしたの? 何か、トラブル?」


「いや、聞き取りしてたんだよ。後で話すよ」




 俺達は、万年樹のダンジョンへと移動した。3人でのパーティで、ダンジョン1階層を選択した。


「二人とも、悪いな。二人だけなら2階層から始められるのに」


「スイト、そんなことないよ。スイトがいなくても1階層からのつもりだったから。これを見て」


 ミカトが、手に持っていたメモを俺達に見せた。




 《エリアボス情報》


 3人パーティなら、階層×10

 2人パーティなら、階層×20

 単独なら、階層×50


 ※エリアボスに似たレアモンスターが、そのエリアにいる。それを攻略すれば、ボスでの全滅を防げる。

 ※全滅すると、その日は再入場できないから注意。




「ミカトこれって?」


「うん、買取店で、冒険者の人達から聞いたんだ。今日は、俺が朝ごはん買ったから、そのついでにね〜」


「階層×10って何の暗号?」


「推奨レベルらしいよ。昨日、休憩所に、レベル10を推奨って書いてあったでしょ。あれ、適当じゃなくて、ダンジョン内のレベル設定がこんな風に決まってるんだって」


「へぇ、面白いな。数式化されているのか。ということは、2階層なら、3人パーティだとレベル20以上でいけるんだな」


 スイトは計算が速い。分析とか好きそうだもんね。


 もし、ミカトと2人だったら、2階層はレベル40も必要だったんだ。ひゃー、スイトを誘って正確だったよね。



「昨日の顔のある草が、そのレアモンスターだったんだね」


「リント、何? それ」


「えーっと、ほら、あれだよ。俺が体力低いから、昨日はあればかりと戦ってたんだ」


「ん? 昨日こんなの居なかったけどな。それにモンスターらしくないけど?」


「ちゃんとドロップ品も落とすし、この階層のボスは、コイツをもう少しデカくした感じだったよ」


「へぇ〜」


 そう言うとスイトは、剣を抜いて顔のあるモンスターを切った……あれ? 切れない?


 奴は剣をヒラリと避けていた。いや当たっているけど、剣に逆らわないから切れないんだ。


「ちょ、これ、どうやって倒すんだ?」


「昨日は、木の枝で叩いてたな。剣は持ってなかったんだよ。だから、疲れて、腕が途中で上がらなくなった、あはは」


「なるほど。この特徴を知らなかったら、剣で戦っていたところだ。ミカトの情報、すごいな。それを知らずに実践していたのもすごいけど」



 それからは、俺達は木の枝を拾い、顔のある草を殴って倒した。と、いっても俺はドロップ品を集める係に徹していた。昨日と違って、二人が次々と倒していくから、俺はめちゃくちゃ忙しかった。


「リント、動きが速いな」


「うん、まぁね。ドロップ品集めは、スピードが必要だからね。手早く拾わないと、二人を見失いそうだよ」


「あはは、リント、昨日より忙しそう」


「二人がどんどん進むから、めちゃくちゃ忙しいよー」




 そして、あっという間に、ボスのいる石の扉の前にたどり着いた。いま、中では別のパーティが戦闘中のようだ。

 扉の前には、俺達以外に、もう一組が待っていた。


「ちょっと、休憩しようよ」


「ふふ、リントが一番ラクなはずなんだけどな」


「スイト、俺は体力ないんだってば〜」


「あはは、悪い、忘れてた」


「じゃあ、順番待ちしながら、朝ごはんだな」


 ミカトが俺達の分も、パンを買ってくれていた。スティック状のパンだった。これなら歩きながらでも食べられる。


 そして、スイトは、ペットボトルに入ったジュースを出してきた。俺は二人にもらってばかりだな。まぁ、いっか。



 そんな俺達の様子を、もう一組の冒険者は、バカにしたような顔で見ている。迷惑だったのかもしれない。


「おまえら、いま急いで飯を食わなくても、どうせすぐに出られるんじゃねーの?」


「なに?」


 スイトが反論しようとしたときに、石の扉のロックが解除されたようだ。彼らは笑いながら、中へ入っていった。


(感じ悪いな)



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