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124、万年樹の島 〜万年樹の霊力が生み出される場所

 紅牙さんは、俺の腕を掴み、1階層の端にワープした。そこには、外から入ってきたらしい魔物がいた。


「リント、魔法は使うなよ。コイツら、吸収しよるんや」


「えっ!? 俺、物理攻撃力、とんでもなく低いです」


「スキルを使ったらええやん。せや、おまえの剣、出来たで」


 そう言うと、紅牙さんは、魔法袋から細い剣を出した。依頼していたのができたんだ。


「わっ、ありがとうございます。すごい軽い〜」


「レイピアや。ちょんと当たっても、ざっくり斬れるようにしてあるからな。扱いには気ィつけてや」


「わかりました」




『スキル、「精霊の使徒」を発動して』


『かしこまりました』


 俺は、淡い光に包まれた。黒いシャツに黒いズボン、そして銀色のローブを身にまとっていた。でも、レイピアを持っているからか、銀色の剣はないんだね。


(あれ?)


 紅牙さんは、俺に魔法を使うなと言ってたのに、手に持つ大きな鎌のような武器に何かをまとわせている。


「紅牙さん、魔法はダメなんじゃないのですか」


「リント、よう見てみぃ。魔力じゃなくて妖力や」


「えっ! そうか、紅牙さんは、妖怪の血が混じってるから、妖気を扱えるんですね」


「あぁ、魔物は、魔法を吸収するように進化しとる。人工魔物とは言えんようになってるわー。一気に行くで」


「はい」



 ズザザザザッ!


 紅牙さんの戦闘力って、どんだけあるんだろ。鎌みたいな武器を振り回すと、妖術が発動したのか、まわりにイナズマが走った。鋭く切り裂くような雷撃だ。


『スピード!』


 俺は、紅牙さんの攻撃を逃れた魔物を次々と斬り倒していった。


 この剣、レイピアっていったっけ? すんごい怖いくらい切れる。スキルを使用しているからかもだけど、今の俺って、無双できるじゃないか。



「リント、次、行くで」


 1階層の魔物がいなくなると、紅牙さんは、俺の腕を掴み、幼女を呼んだ。


「きのこ、俺達を、あの場所へ送れ」


 ブスっとした顔の幼女が現れるとすぐに、紅牙さんはそう叫んだ。


「半人前は、立ち入る権利のない階層だから」


「きのこ、リントは、もう王子じゃないで。妖精権限があるやろ?」


「どうして、あたしが半人前に助けを求めなきゃならないのよーっ」


「俺だけでは無理や。知らんぞ、そんな体裁を気にしてる場合ちゃうやろ」


 幼女は、不機嫌マックスな表情で、俺に言った。


「和リンゴの王、あたしのサポートを依頼する。対価は…………う〜」


「おい、きのこ、そんなんええから、さっさと移動させろ」


 対価がどうのって、マジな契約じゃないか。そんな堅苦しいことを言ってる状況なのかな?


「対価は、万年樹の妖精の地位をゆず…………やっぱり、いや〜」


「きのこさん、対価はいりません」


「そうはいかないよ」


「じゃあ、対価は成功報酬で」


「何よ」


「無事解決したら、俺を一人前と認めてください」


「…………そういう所が、半人前だって言ってんのよっ。ほんと、バカじゃないの?」


 でも、彼女はその条件でいいらしい。


 その次の瞬間、俺と紅牙さんは、どこかへ移動していた。




「リント、ここは、ダンジョンの底、万年樹の霊力が生み出される場所や。ダンジョンの外やから、精霊の加護がないんや。死んだら終わりやで、気ィつけろ」


「わ、わかりました。でも、スキルは使え……あっ、姿が戻ってる」


「スキルは、いらん。おまえの妖精力が必要なんや」


 そう言うと、紅牙さんは、スタスタと歩き始めた。


 すごく不思議な場所だ。ダンジョンの底だと言ってだけど、幻想的な森の中みたいな雰囲気なんだ。でも、生えているのは木ではない。木の根だよね、これ。


 生えているという表現は適切じゃないな。上から地面に垂れ下がっているという感じ。上の方が青や緑に光っているから、幻想的な木に見える。



「ここやな。リント、なんとかしてくれ」


「えっ……えっと」


 紅牙さんが立ち止まったのは、小さな池のような場所の前だった。森の中の池に見えるんだけど?


「これは一体、何ですか?」


「邪気の池や」


「えっ? なぜ、万年樹に?」


「きのこが浄化できへんから、どんどん溜まってきたんや。万年樹の精霊は、邪気を吸い込んでしまうからな、手出しができんらしい」


「邪気の池……」


「これは、人間の仕業なんや。こんな場所に、水たまりを作りよって」


「ん? 何のためにですか?」


「万年樹の霊力を盗むためや。霊力を水に溶かして集める魔道具を打ち込みよったんや」


「えっ……泥棒?」


「あぁ、それで、盗んだ後片付けをせんと放置しよったからな……池になっとんねん」


「万年樹の霊力を盗んだって、もしかして……」


「あぁ、人体実験をしてる科学者や。魔力だけでは新たな人間は生み出されへんからな」


 この万年樹から霊力を盗んで、人工魔物を作ったり、無の怪人を生み出したり……。


「人工樹のダンジョンも、もしかして?」


「一部はそうやろな。娯楽ダンジョンは魔力やけどな」



 俺は、邪気の池に近寄った。


(うわぁ……気持ち悪い)


「紅牙さん、邪気の原因は死体ですね。おそらく、霊力を盗む冒険者ですね」


「リント、何か見えるんか?」


「はい、池の中で、たくさんうごめいています」


「俺には、壊れた魔道具が沈んでいるのしか見えへんけどな」


「魔道具? 俺は逆に、うごめく大量の死体が邪魔で、池の底なんて見えません」


 すると、紅牙さんは黙った。


(あれ? なんかコワイ顔……)


「リント、おまえ、やはり死人なんか? なんで、怨霊がみえるんや」


「ええっ? 怨霊なんですか?」




 そのとき、目の前に、こびと達が現れた。


「リント様、私から説明します」


「な、なんや? おまえら?」


「紅牙さん、私達がわかりませんか? 何度も何度も追いかけてきたくせに」


 こびとがそう言うと、紅牙さんは怪訝な顔をした。でも、なんとなく気づいたかもしれない。


「私達は、転生し、リント様の木の精となりました。万年樹の妖精にも、嫌な顔をされましたが……かつて、貴方達から無の怪人と呼ばれていました」


「なんやて? リント、おまえ! 何をしとんねん」


「紅牙さん、私達は転生したとお話しましたよね。リント様によって、無の怪人としての個体は消滅させられ、新たな役割を与えられました。万年樹の妖精は、無の怪人の脅威は去ったと言っていましたよ」


「リントに殺されたってことか?」


「新たな人生を与えていただいたのです」


「ふん、まぁ、木の精なら、何もできへんか。おもろないけど、まぁええわ」


 すると、こびと達は一斉に、ニヤッと笑った。


(何? その顔)



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