表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/153

112、平安時代993年 〜不思議な道具の交換条件

「うわぁ〜、護身具がたくさん!」


「青空様、いったいこれは……」


「俺がこの時代に来るときに、持たされた物です。必要な人に渡すようにと。俺には使い方さえわからない。これは、皆さんのためのもののようです」


 俺がそう言うと、少年二人はポカポカと殴り合いを始めた。照れているときの仕草かと思ってたけど、嬉しいときの仕草なのかもしれないな。



「青空様、こんなにたくさんの護身具を……よろしいのですか。私達には、お返しできる物はありませんが」


 年配の人達が心配そうにしている。そうか、見返りに何を要求されるのかを恐れているみたいだ。


(別にいらないんだけど)


 でも、彼ら妖怪は、見返りを要求しないと逆に信用できないのかな。うーん、それなら……。


「ちょっとお願いがあるんですけど、聞いてもらえますか?」


 彼らは、やはりという顔をした。そして、神妙な顔で頷いた。そんなに緊張しなくてもいいんだけどな。


「俺、この時代で、和リンゴの品種改良をしました。俺が守護すると決めた品種です。この子達は食べてくれたので、場所を覚えているはずです」


 少年二人は、思いっきり頷いている。


「和リンゴが、戦火に焼かれて消滅することがないように、見守ってほしいんです」


 彼らは、神妙な顔で頷いた。いや、そんなたいしたことじゃないはずだけど、すごく真剣な目つきに変わった。


「リンゴ、美味しいよ。でも食べすぎちゃいけないんだって。川沿いの貧乏人が食べるんだ。貧乏人は、魚を獲れるけど焼けないんだ。簡単なのに、人間はできないんだ」


 少年は、焼き魚の印象が強かったのかな。すごく嬉しそうで自慢げだね。


「たくさんのお手伝い、ありがとうね。あの人達は、キミ達がいないと、火をうまく使えなかったね」


「でも、リンゴの木は真面目に育てるよ。食べ物だから、自分の木の世話をするんだって」


 他の狐の妖怪達は、この話をジッと聞いている。何を考えているのかな。護身具を見つめてる。あー、そうか、護身具だけでは、報酬が足りないのかな。


 俺は、短刀を数本、魔法袋から取り出した。そして、少年二人に渡した。


「キミ達の護身用に渡しておくよ。人間の中には、狐を見つけると殺そうとする人もいる。でも、キミ達の方が、いろいろな能力は高いんだ。だから、弱い人間には優しくしてあげてほしい」


「うん、わかった〜。貧乏人は弱いから優しくしてあげる」


「たぶん、火もつけられないよね、貧乏人だから」


(やたらと貧乏人と言うね)


 でも、差別意識はないみたいだ。区別なのかな。


「他の子にもあげてもいい?」


「うん、必要な人で分けて使って。でも、あくまでも護身用だよ?」


「はーい」


 少年二人は、短刀を誰に渡すのか相談を始めた。大人が取り上げるかもしれないけど、まぁ、それならそれでいいか。



 ドン! ドカン!



 霧の中から、妙な破裂音がした。そして、青い光が空に立ち昇った。あれは、霊力かな。救難信号のようにも見える。


(嫌な予感がする)


「じゃ、俺は、もう一つの仕事をするよ。和リンゴのこと、よろしくね」


「青空様、どこかへ行っちゃうの?」


「俺は、あの木づちをなんとかしたい。この時代で怨霊が大発生するのを防ぎたいんだ」


「私達も、あの木づちが消えてくれたら嬉しいです」


 彼らは、期待を込めた目をしている。やはり、虐げられているのか。できる限り、なんとかしたい。


 俺は、コクリと頷いて、やわらかな笑みを浮かべた。


「じゃあ、皆さん、お元気で」


 俺は、霧の中へと入っていった。




 霧の中には、結界が張ってあった。これが区画の役割を果たしているのか。


 狐の妖怪達も、さっき、この霧の中から出てきた。彼らの住まいらしき小屋が並んでいる。でも、その小屋にはいくつもの結界が張られていて、迷路みたいだ。


 この結界が見えない人間には、行きたい方向に進めなくて混乱するんだろうな。


 俺は、霧の中を進んでいった。


 さっき、青い光が立ち昇った場所は、もう少し先になる。だけど、その場所への移動は、簡単なようだ。


 いくつも転移魔法陣が見える。いや、違うな。転移魔法陣を真似て作った別物だ。真似たというより、複製に近いかもしれない。


 たぶん、これも人間には見えないんだ。だから、踏み込んでしまって、どこかに転移してしまう。大原に転移する魔法陣があちこちに配置されているんだね。


 俺は、霊力が流れてくる転移魔法陣を見つけた。


(これだね)


 きっと安倍晴明が術を使ったときの霊力だ。俺は、その転移魔法陣に足を踏み入れた。




「な、あ、青空殿か……。やはり、そなたは……」


「安倍晴明様、ご無事ですか。他の人達には集合場所へと集まるように指示しました」


「まさか、そなたが私の命を狩るために、ここに誘導したとはな……」


(何を言ってるんだよ?)


 だけど、彼の足元を見て、その理由がわかった。見覚えのある光景だった。骨が大量に落ちている。しかし怨霊はいない。彼が吸収したんだ。


 周りには、翁狐もカルデラもいない。この霧の中でのサーチは術返しのリスクがあるか。うん、そうだね、だから、あの二人はここには居ないんだ。


 奴らは、離れた場所から見ているんだろう。そして、何かあれば、転移魔法陣を使って、すぐに現れる。


「安倍晴明様、かなりの怨霊を取り込みましたね。幻覚が見えているのではありませんか」


「私は、そんな……」


「貴方の足元にある人骨には、たくさんの怨霊が宿っていたはずです。大きな狐が木づちを振りましたね?」


「た、確かに……クソッ」


 安倍晴明ほ、何かの術を唱えた。身体が黄色に光っている。すると、シューッと湯気のようなものが出てきた。


 すると、彼の周りだけ霧が濃くなり、その黄色い光を打ち消した。


「青空殿、助かった。妙な声に惑わされていた。しかし、やはり、この霧は、霊力を妖力に変えてしまう。敵に術を使っても、妖力に変換されて打ち返されるのだ」


「それが術返しですか。なるほど……。魔力なら、何に変換されるのかな」


 俺はそう言うと同時に、手に魔力を集めた。


(へぇ、やっぱりね。魔力は消えない)


 霊力を妖力に変換する霧だ。カルデラもエネルギーが欲しいと言っていたからね。


「青空殿、何をする気だ?」


 俺は、彼の問いに笑顔を向けた。


「こうするつもりです」


 俺は、手を上にあげ、魔力を放った。


『ハリケーン!』


 強い風魔法だ。グルグルと渦を巻き、一気に霧をかき集め、風の渦は上空高くへと飛び去った。


(霊力だけを妖力に変換する霧だね)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ