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クリスタル・ワールド  作者: 文月 ヒロ
第3章闇夜の戦線
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第74話闇夜の戦線(3)

 途端、姿が消えたと錯覚する程の速度でクレイムとの距離を詰め、刀を横に一閃し――







第二(セカンド)形態(モード)ォォォォォォォッ!!」


「……くッ」


 斬撃が奴の生気のない白く骨張った肌に触れる寸前、そんな怒号が俺の鼓膜を震わせた。

 同時、脱力感の増大と共に俺の刃が、それを持つ体ごと弾き返された。

 奴の黒の十字架(ブラック・クロス)だ。


「――ッ」


 地を擦りながら着地、直後、クレイムの真横へ瞬時に接近。


 次の瞬間、俺の刀とクレイムの三叉槍が激しく衝突した。


「ンなんだテメェッ、殺しても殺してもゾンビみてェに這い上がって立ち向かってきやがって!」

「あぁ、そうだな…ッ。何度だって相手してやるよ、奇跡だって起こしてやる!」


 交差する純白の魔力によって作られた武器達が、激しい競り合いの最中、その狭間より火花のように魔力を散らし始める。


「キヒッ、英雄気取りの蛮勇持ちにャア丁度良い。見せてやらァ、絶望って現実をッ」

「そりゃこっちの台詞だ、捻くれ者には丁度良い。見せてやる、希望っつう理想をッ」


 迸る魔力はやがて、岩に水を堰き止められ暴れる滝のように勢いを増し。


「終わりだァ!」

「終わらねぇ!」




 そして――



「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァアアアッッ!!」」



 猛る獣の如き咆哮が闇夜に轟くと同時、両者を軸に辺り一体へ暴力的な嵐を描いたッ。


 周囲を巻き込むその濃密な魔力の乱舞の中、変化は起きた。

 握る柄から一気に離れた俺の左手が、魔法陣をその手の前に生み出す。


 光波、その陳腐な魔法の為構築された簡素な魔法陣。


 そこから瞬時に溢れる光は、しかし――圧倒的な質量の魔力を以てクレイムを襲った。


「――ッ!?」


 魔法陣の存在がフェイクだとクレイムが気付いた時には既に遅かった。

 奴の体は光に呑まれ、同時に吹き飛ばされた。


 直後、掻き消えた光線。


 だが、その延長線上にいたはずの神父の姿も消えていた。

 俺の頭上、光で出来た三叉槍を携えた人影が月の光を遮った。

 魂獣の気配を感じ取り、既にそれを察知していた俺は刀を振りかぶろうとして、


「くッ…!」


 そこで静止した。

 四肢に巻き付いた光の鎖、発生源は周囲に浮かんだ4つの魔法陣。

 しかし、拘束は一瞬の事。


 鎖を膂力によって引き千切った俺は、迫り来る三叉槍を刀で薙ぎ払った。




 ――背中を襲った衝撃に自身の体が吹き飛んだのは、その直ぐ後だった。


「カ――ハッ…!」


 肺から全ての空気を吐き出しながら、己の身に何が起きたのかを悟る。

 魔力の塊が、猛烈な勢いで背後から俺を襲ったのだ。

 派手に地に伏すと、次の瞬間クレイムの三叉槍が俺を襲う。

 地面を真横に転がり回避。

 手で大地と体を押し離し、その勢いのまま宙を浮きながら後退、直後に着地。


 ――周りに魔力と魂獣の気配が満ち過ぎて、クレイムの魔法に気付けねぇッ…!


 俺は剣術と多少の魔法、クレイムは魔法と多少の槍術。

 小手先の技術では、総合的に見て俺と奴は互角。

 本来勝っているはずの魔力や膂力などの面でも、あの黒の十字架(ブラック・クロス)とやらの所為で同レベルに引き下げられている。

 かと言って、後ろに下がって攻撃を放てば十中八九避けられる。俺自身が持つ遠距離攻撃も一種類のみ。


 決め手が、足りない。




 ――そう言って諦めるのは、もう止めたばっかだろうがッ…!


「隙を見せた、なァァアッ」


 決定打に欠ける?

 なら、ならば…ッ。


「死ンねェ――」



「十六、夜ッ」


 一瞬にしてこちらとの距離を縮めたクレイムが眼前で振り下ろした三叉槍を、俺は刀で弾き――


「孤月ッ」

「ぐッ…!」

「連斬!」

「ンのッ」

「連斬!連斬ッ!」


 魔法を使わせる隙など与えない。

 速く、鋭く、もっと、もっとだッ。

 この剣技の最速を、最多連撃回数を、更新し続けろッ…!

 防御されたって構わない、その代わり眼前に映る神父が纏う魔力を、己が魔力で消し飛ばせ!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァアアッ!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォォオオオッ!」


 喉が潰れる程の叫び合い。

 嵐のような絶え間ない斬り合い。

 海の如き膨大な量を誇る魔力同士の削り合い。

 終わらない、終わらない、終わらないッ。


 腕が、肩が、魔力回路が、全身が、徐々に壊れていくのを感じる。


 限界以上の動きが、体の修復を置き去りにしている。

 度々受ける刺突や斬撃がそれを加速させている。

 だが、それがどうした。痛みは既に忘却の海へと投げ捨てた。


 速く、速く、もっと…今はただ闇を斬り進む剣の加速を望めッ。





「だらァァァアアッ!」


 クレイムの三叉槍が、不意に刀を持つ俺の右腕を僅かに貫き、次の瞬間に裂かれ――


「ぐ…ッ、まだぁぁぁァァァァアアッッ!」


 忘却の海底より浮き上がって来た痛みを奥歯で噛み潰し、結晶術により腕を瞬時に繋げ叫びと共に刀を前に突き出した。

 強烈な威力と魔力を纏った刺突がクレイムの魔力を消し飛ばし、体を吹き飛ばした。


 刀を引き戻し、そこで()()()()()()()()()()


 限界。気が付けば体内の魔力がほとんど空になっていたのだ。


 体が、微睡の中で地面に引き寄せられるように倒れていく。同時に、魔力の刃も掻き消える。


「桐島、刃ァッ!」


 怒号と共にクレイムが接近しようとしているのが見えた。まだ余力が残っていたのだ。いや違う、奴の足元にあるあの黒い十字架が、残り少ないはずの奴の魔力量を底上げしているのだろう。


 ――…て。


 それでも、俺と奴の魔力量は同等。俺が先に魔力を使い果たしたのは、魔力の使い方が下手だからなのだろう。少なくとも、レイン辺りはそう言いそうだ。まぁ、それは仕方ない…。


 ――た…てッ……。


 けど、ここで諦めればそんな言葉すら聞けない。

 俺は首にかけていたネックレスに意識を伸ばした。


 ――立てッ!


 震える指先が握る柄に込めるは最後の力。

 大地を踏み付ける足に込めるも最後の力。


 亜空間より取り出した錠剤を、口の中で噛み砕く。


 満ちる魔力、満ちる膂力。

 右手を包み込む結晶の青。


 鋭い眼光は刃と共に敵たる神父へと。


 俯くな、未来(まえ)を見ろ。

 想いを糧に、そこへ向かって動き出せ。




「桐島、流…ッ」


 集う全ての魔力、折れた刀の切っ先に。

 叫べ、叫べ、叫べ、その一撃は、勝利の為に繰り出すその一撃の名は――




「げッッッこォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」



 直後、圧倒的な質量と光量を伴った光が、抵抗する神父服の男すら覆い隠し世界を白く塗り潰した。












『―』を多用気味の文月です。ちなみについ最近正しい使い方を知りました(途轍もなく恥ずかしい)。まだまだ成長途中という事が窺えます(?)ね。

…ともあれ、何とかこの章一番の戦闘シーンが終わりました。自己採点するなら、大体65点でしょうか?酷いですね。あ、戦闘中の熱量は描けたかと思います、多分。

まぁそれはさておき、やっとここまで来たなぁ…と思いながら今年の投稿量を見て驚きました。結構な量投稿してました。やはり、目指せ毎週投稿の意思表明が効いているのでしょう。たまに休んだり、割と頻繁に投稿遅延したりしてますごめんなさいッ。

何やら感想文と謝罪文による珍妙な後書きになり果てましたが、文月の後書きは元からそれなりに何でもありの適当でした、今更です。

ということで、また次回!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


・面白かったってばよッ!


・やるなーお前、燃(萌)えてきたぞ!


・べ、別にアンタの作品がちょっと良い感じだって思っただけなんだから!勘違いしないでよね!


等々、思われた読者様は下の


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また、感想もドシドシお持ちしております。

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