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クリスタル・ワールド  作者: 文月 ヒロ
第3章闇夜の戦線
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第63話秘策(2)

 辺りを支配した一瞬の静寂。


 晶花は人差し指でレイズを指差した。


「実力に差があるのは知ってるわ。貴方の中の魂獣の気配くらい感知出来てるのよ。その異様に強い気配くらいは。…でもね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 イラついた様に晶花は言葉を吐き捨てた。


「師匠も強いけど、貴方ほどじゃなかった。…本当は、やろうと思えば私なんて直ぐ殺せるんでしょ?けれど、何かの目的があってそれをしないだけ。目的は聞かない、でも、どうして貴方がそんなに強いのかくらい教えて…ッ」

「……なるほど、どうも話が噛み合っていないと思ったらそういう事だったのね」


 納得顔のレイズは、少し気怠そうに言葉を続ける。

 また同時に、攻撃準備の為か魔法陣の構築を始めた。


「…正直、教えるなんて行為、無意味だと思うわ私。きっと、多分、恐らくだけど、絶対貴方は得た知識を有効活用は出来ないもの。それだとただ貴方の知識欲を満たすだけになるし、私にメリットらしきものもない。時間の無駄よ…と、貴方の要求を断るわ」

「へぇ、夜中に人を攫った対価としては安いくらいだと思うんだけど?」

「…はぁ、鬱陶しいわ。さっきの青髪の彼と選手交代してから、私興が冷めて削がれて、だから早く終わらせたいのに。仕方ないわ、じゃあ1つだけ…魂獣の力は強化可能よ」


 言って、レイズは魔法を放った。


空間凝固(ソリッド)

「……ッ!」

「無理よ、動けないわ。だって、貴方の周囲の空間を固めたんだから。あと、知らないようだから教えてあげる、空間魔法を操る人間の武器は周囲の空間全てよ」


 身動きが取れなくなった晶花。

 そんな彼女に近付くレイズは、虚空から手錠を取り出した。


「私言ったわ、貴方は今は死なない。拘束された後、私達によって利用されて死ぬの。クルイトの実験、あとは…えぇ、知らない方が良いわね。どうせ、知る前に死ぬんだから貴方」


 しかし。


「…し、ね…ないッ、死な、ない!」


 晶花の全身から溢れ出す膨大な紫紺色の魔力が、レイズの魔法を―――破壊した。


「魔力を、想いを、魂を、結べ。結べよ結べ―――第三形態(サードモード)ッ」


 まるで、魔法詠唱のような言葉の後、晶花が放出する魔力量が更に上がった。

 直後、彼女がレイズを一瞬にして蹴り飛ばした。

 流石と言うべきか、やはりレイズは尚も涼しい顔をしていた。


 もっとも。


「……概ね、計画通り…なんだよね…?えと…」


 不意に聞こえた声に、声の主―――勝煌絆の方を俺は見た。


「レイン・バレット、レインでいい。目覚めたみたいだが、具合は?」


 絆にそう言うと、彼女は首を縦に振って『大丈夫』と答えた。

 そして、俺の掌の上に浮かぶ魔法陣を見て尋ねて来た。


「魔法は勉強してるから分かる、それ…代償魔法でしょ。しかも、晶花には教えてない」

「あぁ、晶花には時間稼ぎを頼んだ、それだけを頼んだ」

「でも、あれじゃ…」

「長くはもたない。…それでいい、欲しかったのは少しの時間とレイズの隙。後者は晶花が作る手筈(てはず)


 それに、と俺は続けた。


「代償魔法と言っても、命や体の一部を捧げる訳じゃない。言わなかったのは、それを晶花に説明してる時間がなかっただけ」

「…優しいんだね。晶花、ああ見えて繊細だから、多分中途半端な説明だと責任感じちゃう。良かったぁ。あの子、いい友達…出来たんだ……」


 絆は嬉しそうな、しかし、悲しそうな顔をして呟いた。

 彼女が何を背負っているのか、俺には少し分かる気がした。

 同じだ、同じように何かの罪を背負っているのだ。

 そして、それは恐らく晶花への物…。

 大切な存在への物。


 だったら、俺に言える事は1つだけ。


「他人事みたいに語るな」

「…え?」

「晶花に何か負い目を感じているのは見ていて分かる。だが、大切な物なら、そうだと叫べ。嫌がられても、自分が大切だと思うならそれを信じて貫け、動け、守れ。…まだ、失ってすらいない内から、その想いを放棄するな」


 母を失った、罪は贖えないまま、守る事すら出来ないのは辛い。歯痒い、悲しいのだ。

 だが、大切だったのは変わらない。

 そして、今度は失わない。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!」


 ブーツのような結晶に満ちる魔力の光と共に、晶花が()()()()()レイズの元へ瞬時に移動。直後、蹴りがレイズに蹴りが炸裂しかけ―――それを躱された。


 しかし、()()()()()()、彼女の頭上へ斜めに跳躍。

 ほぼ同時、踵落とし。


空間凝固(ソリッド)。…そういえばその靴、青髪の彼のかしら?」

「……えぇ、お陰で足場のない場所で戦えたりこんな突飛な動きが出来たわ。もっとも、全く効いてないみたいだけど…ッ」


 余裕をアピールするように軽口を叩く晶花だが、かなり無理をしているように感じられた。


 そろそろ限界が近そうだと、俺が考え始めた時だった。


「―――次元(ディメンション・)断絶(カット)


 レイズが魔法を放った。


「…ぶなッ!」


 攻撃が直撃する寸前、晶花は超スピードでそれを回避した。


「けれど、速いだけじゃ無意味よ貴方。次元(ディメンション・)断絶(カット)


 背後に瞬間移動したレイズに気付いた晶花は切り裂かれ―――なかった。


「……いくら強力な魔法でも、魔力で押し返せば意味はない…ッ。相手を舐め過ぎたわね」


 脂汗を搔きながら、晶花がレイズを挑発した。

 しかし。


「けれど、本気を出す程でもないわ」


 レイズの言葉に、俺は嫌な予感を覚えた。

 何が、とは具体的に言えない。分からない。

 だが、これは断言出来る。


 不味い。


「―――虚無世界(ボイド)









文月です、文章量が戻って来ましたね。本当は今回でレイン回を終わらせたかったのですが、力及ばず、というより短編に力を注ぎ過ぎました…。あ、そうです、短編の告知をしましょう。今日中に新作短編を出す予定ですので、ぜひご覧ください。内容を?いいえ、小説情報の所に恐らく書かれているであろう『短編の文字数』をです。…一応先に白状しておきます。最初は、最初は、遊び半分だったんです刑事さん…ッ。という事で、ホラー企画に乗っかった結果やらかしましたです、はい…。

閑話休題。

それでは、【修行】開始だぁぁあッ。ので、次回の投稿は次の木曜日、予定ッッ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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・べ、別にアンタの作品がちょっと良い感じだって思っただけなんだから!勘違いしないでよね!


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