第59話レインVSレイズ(3)
投稿遅れました、すみませんッ!
堰を切ったように飛び出した魔力の銃弾は、銃声の咆哮と共に一瞬にしてレイズのこめかみを一直線に貫き―――かけた。
そう、魔力弾はレイズの手前に出現した白銀の魔法陣の中に消えていった。
次の瞬間、後方より俺の心臓を撃ち貫く敵の武器へと変貌を遂げる形で。
もっとも。
「甘い」
「……ッ!」
レイズの背後に立ち、俺はその後頭部に銃口を突き付けた。
「…なるほど、また分身を使ったのね」
落下しながら水へと戻る、撃たれた俺の分身を見てレイズは言った。
「まさか、貴方がここに来て豹変するなんて思ってもみなかったわ…。けれど不思議。普段ならとても憂鬱な事なのに、どうしてか………胸が熱くて、痛くて、そして苦しいわ。ねぇ、この感情が何なのか聞いてもいいかしら?分からないわ私……」
「…知らない、知る必要もない。俺もお前も」
「そう、そうね…貴方は何も知らないのだもの。とても残念よ私。…クレイムなら教えてくれるかしら?」
「…そんなこと…どうでも、いい」
「そっけないのね…。まぁ、それはそうと、再開しましょう?柄にもなく、戦闘行為に一種の快楽を覚えている真っ最中なの私―――そう、貴方との戦闘が…ね」
「…ッ!」
刹那、強烈な死の予感が稲妻のように全身を駆け巡った。
本能的に、瞬間的に、大きく一歩後退る俺。
直後、眼前の空間が裂けた。
そして、振り返るレイズは俺へ右手を突き出し。
「次元断―――」
「ぶち抜け」
レイズの詠唱が終わる前に、空間に無数の切り傷が生まれる前に、俺は彼女に氷柱の雨を浴びせた。しかし、その攻撃も彼女に直撃する直前に何かに弾き返され無意味に終わる。
―――空間を固めた?…なら。
「とっとと凍れ」
レイズごと空間を氷結させ、一瞬後、頭部を魔力銃で撃ち抜いた。
「なんて、…糠喜びも甚だしいわ貴方。でも、そう、その調子よ。その調子で足掻いて見せて」
斜め上空、俺を見下ろすレイズの淡白な声が降って来た。
この銀髪少女の言葉の真意は分からぬまま、しかし、俺は彼女を睨み付けた。
何を思おうと、何の為に動こうと、結局それが敵であるならば排除するのだから。
だが。
「…ッ。う、くっ…!」
強烈な眩暈と頭痛に、俺は苦悶の声を漏らした。
何が起こったのか、一瞬分からなかった。
しかし、その疑問はレイズの言葉によって解消される。
「…馬鹿ね、考えてみれば簡単な事よ。私達の頭には、『イメージを魔力と共に術式へ流す』という工程が必要だと刷り込まれているけれど、実際はそうじゃない。魔法は魔力とイメージさえあれば、詠唱も術式も必要ない。だから、頭にそう思い込ませようとするけれど、深層意識までは中々信じ込ませられない。それを取っ払うために、新たな要素―――大気中の魔力を支配し、魔法に組み込む。普通、魔法は自身の魔力で発動するけれど、それが周囲の物ならば?分からない、つまり、理論の埒外。だからこそ、深層意識へ付け込んで、既存の魔法構築理論を書き換えられる。それが私や貴方が使っている技。―――けれどそれって、かなり無茶で、かなり脳に負荷が掛かるの。当然、連発なんて負担が増すだけ。その点に注意して使うべきよ貴方」
「それ、が…どうしたッ!ぶっ刺せッ」
途端、レイズの足元に青く輝く魔法陣が浮かぶ。
そして、陣より巨大な氷柱が一瞬にして生成され、それと同時に彼女を襲った。
当然、この程度で倒せる程レイズは甘くなく、例の如く容易に回避され終わる。
「だから、甘いわ貴方」
「ッ…!」
魔力を俺の体が背後に感知し、レイズが魔法を放とうとしている事に気付いた。
恐らく、あの鎌鼬のような攻撃ではなく、不可視の手の魔法。
魔力で強化された脚力で地を踏み、上空へとそれを回避するように一気に跳躍。
直後に俺のいた場所の地面が爆ぜたのを視界の端に捉えつつ、正面に佇むレイズを見た。
構え、彼女に魔力の弾丸を撃ち込むも、その手前に現れた魔法陣の中へと消える。
ほぼ同時、その隣に魔法陣が生まれ、そこから魔力弾が飛び出し―――俺の右頬を掠めて俺を通り過ぎて行った。
傷口から噴き出た鮮血が宙を舞い、鋭い痛みに顔を歪める中、途切れかけた集中の糸を奥歯を噛み締め繋ぎ止める。
左手をレイズに向かって突き出し、そして。
「…くッ!集え、吹き…荒れろッ―――氷魔の散弾」
直後、掌の前に生れた魔法陣より、吹雪が一直線にレイズへ向かった。
「まだぁッ!」
大気中の魔力に干渉し、ついでとばかりに水の大玉10個を自身の周囲へ生成、同時レイズを四方から囲うように放物線を描き高速で発射した。
それら一切の攻撃は、彼女に触れる直前に不可視の壁に阻まれたかのように四散する。
放った攻撃の尽くが夜の闇へと消えゆくその様に、俺は確信した、今しかないのだと。
今ある魔法の全てを行使しようとも、この銀髪少女に俺が敵う事などありはしない。
本来ならば俺はもう彼女に敗れ、鮮血の絨毯の上に伏していた。
晶花と絆を守る事は出来ずに終わっていた。
詠唱なしで魔法を放つ技すら、レイズからすれば予期せぬ余興。
そう。この鼬ごっこの魔法戦自体、レイズにとって、ただの気紛れで始めた戦いでしかないのだから。
だが、そのお陰で、お前を殺す魔法がやっと今完成した。
「其は蒼き弾丸 穿つ魔の弾丸……」
レイズを中心に展開される、青く輝く数多の魔法陣。
「無限を刻み…」
頭に流れ込む膨大な情報量に、脳が焼き切れそうだった。
「無限より…現出せよッ……」
だが、その激しい頭痛も、鼻や目から流れ出す血も、殺人への忌避感すらも全部無視し、銃をレイズへ構えた俺は息を吸い込み。
「―――銃魔法・無限の魔弾」
次の瞬間、俺が銃の引き金を引くと、その魔法術式は起動した。
数分後、魔法は俺の意思により掻き消え、しかし、レイズはほとんど無傷だった。
どうも、最近、親知らずの野郎に歯茎をダイレクトアタックされ、その度に『あ痛ッッ!』と叫んでいる文月です。歯医者さんは偉大である、と心底思いました、まる。
まぁ、そんな小学生みたいな作文は一先ず置いておきましょう。
と言いますのも、もうすぐ7月だから【改訂版】の投稿しなきゃッ、という理由を付けて次回は事前に書いておいた【改訂版】を投稿して休もうかと思っておりまして。文月の不始末により、今週もまた忙しくなる羽目に…。
一応、時間を作って書こうとは思いますが、短編も書いている最中ですので無理かな、と…。
あ、一応『カクヨム』さんでその【改訂版】は既に投稿しています(まぁ、誰も読んでないですけどね♪しいて言うなれば、作者が読者です)。
では、また来週。
それと、
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