第57話レインVSレイズ(1)
文月です。
今回は少々文章少なめです。
「…ただ、この戦闘においては手を抜かない、と…私は決めたわ」
その無気力な瞳と声は、今、確かに俺を戦慄させた。
感じ取ったのは僅かな―――殺意。
急速に高まる緊張感と共に、強烈な危機感が俺を襲った。
刹那。
「切り刻め―――次元断絶」
側方へ大きく飛び退く体。
その最中、直前まで俺がいた場所を、発動したレイズの魔法が周囲の木々ごと切り裂いた。いや、その表現は的確ではない。
―――一瞬の一撃で、次元を切り刻んだ…?
早い話、先程までの鎌鼬のような攻撃が、更に強力になったのだ。
直後、着地。
だが攻撃は止まらない、終わらない。
「次元断絶、次元断絶、次元断絶」
断続的に襲い来る不可視の多重斬撃。
それら全てを、俺は紙一重で回避する。
だが。
「貴方知っている?『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』のよ」
「……くッ」
避けきれず、魔法が掠っていた。
背中に遅れてやって来た痛み。
だが問題ない、これは軽傷。
―――それより、動け、止まるな。
こちらの負傷など相手は気遣うはずもない。
寧ろ今は好機。攻撃の手を休めず、レイズは魔法を放って来ていた。
避ける、そうしなければ死ぬのは俺。
そして、それよりも、何よりも。
―――次に放つ魔法発動速度が、徐々に早まって来ている。
焦燥感。
現状、この状況を打破する術がない。
乱れ始めた呼吸。
じわりじわりと追い詰められていく。
だが、突然、魔法攻撃の雨が―――止んだ。
静寂に包まれた薄暗がりの中、レイズは半眼を俺に向け言った。
「……貴方、理解不能よ」
それが侮蔑、呆れ、あるいは好奇心故の言葉だったのか、無表情なレイズの顔からは読み取れなかった。
俺は、どういう意味だ…、と軽い息切れの中レイズを睨み付け尋ねる事しか出来なかった。会話が好きだという彼女の言葉を信じて。
「含みなんて何もないわ。今のは、ただ本能に従順な私の、単純明快なる疑問でしかない」
「……?」
「…あら、自覚がないのね。じゃあもう一度指摘して見せようかしら、今度は絶対的な確信を言葉に乗せて……。―――貴方、その腰の銃は使わないのかしら?」
「…ッ」
あまりに的を射た発言に、俺は思わず目を見開いた。
その一瞬、動揺がそう錯覚させたのか、レイズの青い瞳から放たれる無気力な視線が全てを見透かしたかのような物に感じられ、俺は思わず一歩後退った。
「どう足搔こうと、私には勝てない。かと言って、私から逃げ遂せる策もない。貴方も薄々それに勘付いている…と、私にはそう見える。…だというのに、本気すら出さないなんてふざけているの?」
「…ふざけてなんて、いない……ッ」
「なら、その銃を使いなさい。心だけでも怪物になりなさい。…一対一において、人間如きが怪物に勝てる道理などないのだから」
自身を怪物と比喩する彼女に、しかし、傲慢さが全く感じられなかった。寧ろ、本能の方がその発言を自然な事だと感じている異常。
何故、どうして、理解不能。
「それと貴方、勘違いしているわね。私は確かに、手を抜かない、とは言ったわ。けれど、それは本気を出すという意味ではないの」
「どういう、意味だ」
「…そうね、つまりだけど―――貴方、踏み潰そうと思った蟻を殺す時、全身全霊で殺そうとはしないでしょ?そういう事よ」
言い終えると、レイズは俺の右手に握る水の魔力刀に視線を移し―――。
「……ッ」
魔力刀は真っ二つに切断され、ただの水へと帰した。
俺がそれに反応できたのは、その直後。
「理解、できたかしら?」
「レイズ・ネル・ネルダよ。今回は、怠慢にも途中で思考を放棄し、私の名前を適当に付けてくれた作者・文月ヒロに代わって後書きの役を務めさせてもらうわ。
というのも、何とも怠惰な事に、今回は2000字にも満たない文章量だったから、作者の無駄で長ったらしい後書きに、せめて私というキュートでピュアなキャラを流用する運びになったからなのだけど…。本編、では私、絶賛戦闘中な事忘れているわあの作者…んぅ、眠い…。
…さて、本題―――お知らせに移るわ。作者の日常が少しばかり忙しくなるようだから、来週は最新話の投稿が出来ないかもしれないわ。
よって、来週は第5話の【改訂版】を投稿する予定よ。あぁ、それと、
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…と、そんな読者の皆様へのお願いすら作者が横着したみたいね、私がする羽目になったわ。よろしくね。それじゃ、また来週。…はぁ、眠いわ……」




