第44話善と悪
すみません遅くなりました(汗)!
夜の闇を照らす焚き火の炎に、周りから聞こえる喋り声や笑い声。
今は夕食の時間である。
メニューは定番のカレーで、普段使っているような電化製品などは使わず火で飯を炊きカレーのルーを作った。
料理が完成次第、各班で食べ始めるよう言われている。
うちの班も出来上がってもう食べている。
『そうか…絆が……』
「あぁ」
食事中のレイン達から少し離れた木の影で、1人先に食べ終えた俺は師匠と携帯越しに話をしていた。
林間合宿の様子や何だかんだ言いながら晶花は周りと馴染めていること…。とにかく、今日の出来事全てを話した。
その中で、やはり師匠が食いついた話題は絆とのことだった。
『あの2人はどんな様子だった?』
「うぐっ…ちょ、直球だな……。まぁ、険悪だったよ」
『はは、そうか。なら、聞くまでもなかったな…』
聞こえたのは空元気な師匠の声だった。
俺は溜め息を付いた。
「その様子だと、本当にたまたまだったのな…」
『なんだ?私が仕組んだとでも思ったのか』
「…ま、まぁ」
林間合宿に晶花を連れて行けと言い出したのは師匠で、その通りにしたら絆に出くわしたのだ。
そこに何らかの意図を感じてしまうのは当然と言える。
とはいえ、それが勘違いだと気付いた今となっては、もう誰も責めることは出来ない。
「はぁ―……」
『ん?どうした』
「いや、どうもしてない…」
『その発言する奴は大抵何か隠してるって相場が決まってんだが?』
「なら察して下さいませよ師匠様っ」
『おーいおい、丸投げかよ』
どうにも今は、この憤りを誰かに話す気にはなれない。慣れない野外での活動で流石に疲れたのだろう。
『まぁ良い、察してやろう』
「そりゃどうも」
『…んで、どうだった?絆の印象はよォ』
「どうって…」
普通の女の子、というのが第1印象であり、そこは今でも変わっていない。
だが、それを意識すればするほど俺にはあの勝煌絆という少女が、
「人のことを裏切るような奴には見えなかった」
そう思えて仕方がなかった。
『そうか、はははっ。なら、仲良くしてやってくれ、あの子も友達は少ないんでな』
「んなことしたら、晶花の方を刺激するだけだろ」
『構いやしねぇさ、何も心に傷を負ってんのは晶花だけじゃない』
「……」
言われて、少し思い出した。
『私にはあの子と会って話す資格なんてないから…』
絆のあの言葉、彼女は晶花に負い目を感じているようだった。
俺が黙ったままいると師匠は語り出した。
『この世に、悪意を持って生まれてくる奴なんざいねぇ。生まれたての人間の心ってのは真っ白なキャンバスみたいなもんで、人格は経験って色のついた筆によって後付けされてくようなもんだからな。…そう、生きてんなら誰も彼もが善にも悪にも成り得るのさ』
「…1年前は……」
『あぁ、絆がそうだったな。…ただ、勘違いしちゃいけねぇ。今も昔もあの子の本質は、年相応の喜怒哀楽を持ち合わせる、紛うことなき『善』だ』
そして最後に師匠は言った。
『だからこそ、絆はあの事件での自分の行動を後悔してる。ダチとの『絆』が切れちまって傷付いてる』
例えそれが自ら引き起こした事態であっても。そういう事なのだろう。
分かる気がした。
「俺は、どうなんだろうな…」
『って言うと?』
「言ったろ…今日、人を殺しかけたって。やむを得ずっていうのもあった、けど……どう言い訳しても、俺は自分の意思で人を」
『殺そうとした、か』
「…あぁ」
善か悪か、その辺りの話を聞いてふと思い出したのだ。
絆と出会う瞬間の自分の心境を。
あの時、もしも人を殺した後、俺は俺でいられなくなるなるような気がした。
それは多分、罪悪感と自分の善性の消失に心が耐えられなくなるからだ。
今後もそれがないとも言えない。
だったら、他人から俺は根っからの悪だって決めつけて貰えば、少しは負担が消えるかもしれない。
今のは、そう思っての発言だった。
だが、師匠は笑って言った。
『何かを守ろうとしてる奴が悪い訳ねぇだろ?もっとも、主観的に見ればの話だがな。…それでも、私はお前を悪だなんて言いやしないさ。ま、今後はもう少し慎重に行動しろよ?』
その後、んじゃあな、なんて師匠は言って俺の返事を待たずに電話を切った。
「ったく、せっかちな…」
まぁ、でも。
「ありがとな、師匠」
そう小さく言った。
「さて、戻るか」
その後、林間合宿1日目は無事に終わりを迎えた。
どうも、文月です。
前書きにも書かせて頂きましたが、投稿が少し遅くなりました。ホントすみませんでした。
他の作業も平行してやっていたら、ついそっちに熱が入ってしまいまして…。
さてさて、本題です。
連絡と言いますか意思表示と言いますか、今月中に元の第1~3話までの話の改訂を済ませて、それを投稿したいと思います。
第1話は予定の半分程度書き終えてます。それは来週もしくは再来週のどこかで投稿したいですね。いや、再来週だと遅いですね。とにかく投稿を予定しています。




