第34話護衛役
投稿、遅くなって申し訳ありませんでした!
一応今日中にもう1話投稿する予定です!
「っで?お前らがここにいる理由を聞かせてもらおうじゃないか」
俺が通う水都台高校の屋上には、風がほどよく吹いてくる。
昼休憩。俺はそこに、注目の転校生であるレインとレーナを呼び出した。
変な時期に入ってくることになった転校生が、まさかのこの二人である。
しかも、こいつらのは厳密に言えば転校でもなんでもない。
取り敢えずそれは置いておくとしてもだ。
俺の頭の中は、疑問符で埋め尽くされ最早パンク状態だった。
さすがに、二人からの説明が必要だ。
腕を組みながら尋ねるとレーナがそれに答える。
「ははは…。なんか、来ちゃった」
来ちゃったって、そんな曖昧なこと言われても……。
「もう少し詳しく教えてくれ!分からんし、そんな理由で来られるか!」
「だ、だよね…」
やはりそんな説明では、俺に十分な理解を与えられないと分かっていたのだろう。短く返したレーナは苦笑いを浮かべている。
雰囲気からして、ふざけているのではなく、困っているような感じだ。
さっきはしっかりとした説明を求めたが、レーナの奴、敢えて説明を省いたのか?ということは、ここに来た理由は何か言いにくいことなのだろうか。だが、
「言っとくが、変にはぐらかしても無駄だらかな?ほら、言ってみろ。時間は少ないんだ」
「………」
「お、何だその反応。いよいよ気になってくるな?あ、こらッ、目を剃らすな!」
「で、出来れば言いたくないんだけどな……」
「良いから。さぁ、言ってみ―――」
「護衛だ」
「「えっ……?」」
何時までも話したがらないレーナにしつこく詰問していると、レインの口からそんな言葉が発っせられた。
俺とレーナの二人は、同時にレインへと視線を向けた。
「約束を破ってすまない。本当は……」
「ううん。うじうじと話そうとしなかった私が悪いの。だから、逆にありがとうだよ」
レーナは顔に微笑を含ませながらそう言った。そして、こちらに視線を戻し深呼吸して話を始めた。
「私がこの学校に来たのは、レイン君の言ったように、私の護衛を刃君とレイン君にしてもらうためなんだ…」
最初の一言は、それだった。その声は、ひどく真面目なものだったように感じた。
レーナの自白は淡々と続けられる。
「ファミリーによる事件が終わった後、私の処遇をどうするか話し合われたの。で、偉い人達の意見としては、私に人目につかない地下で生活してもらうのが良いんじゃないかってなって」
「なッ……それって監禁されてるのと同じじゃないか!?日本じゃ、正当な理由もなしに人を拘禁することは禁じられてるんだぞ!そんなことあるはずが……」
だがレーナは、「あるよ」と首を左右に振って俺の言葉を否定した。ただ、その目はとても悲しそうだった。まるで自分の不幸を無理にでも受け入れるかのような、そんな悲しい目だった。
「魔力を暴発させれば、簡単に人を殺せちゃう。しかも私、先天性魔力操作機能不全って病気なんだよ?自身の魔力を制御出来ない不安定な人間は物凄く危険。そんなの表に出しちゃ不味いに決まってるよ」
「けどお前、魔法使えてただろ?だったらそんなことする必要は…」
「ううん。それは勘違いだよ」
何を言ってるんだ、レーナの奴は…。確か、事件の最終局面の時、自分で魔法陣を操っていたはずだ。だがレーナは、困ったような笑みを浮かべて答えた。
「あの事件の時は、ジンタ君が魔法で、私の脳に働きかけて補助してくれたお陰で使えたんだよ。私だけじゃ、まだ魔法は使えない…」
「そんな…でも、魔力が上手く使えないだけで、暴発させる訳じゃない。監禁されるなんておかしいだろ!?」
「確かにそうだね。操作は出来なくても、力が暴走することはないんだから。でも、おかしくなんかはないんだよ。知ってるよね?カンピオーネファミリーはまだ壊滅してないって」
「ああ………頭の切れる幹部がボスとしてファミリーを率いてるって話だろ。……ああクソッ、分かっちまった!危険って、そういうことかよ!…お前、狙われてるのか?」
俺の質問に、無言のままレーナは頷いた。レーナがその身に宿す破壊の魔力の危険性が、カンピオーネファミリーというマフィアの陰謀が、為政者のトップ達に知れ渡ったんだ。だから、
「私という存在自体が脅威であって、しかも自分では魔力をまともに操れない。操れないから、無理矢理引き出させられたら抵抗も出来ない。そんな人間がもしカンピオーネファミリーに捕まったら、それだけでマフィアに力が戻るんだ。だから、偉い人達は私を目の届く場所で監視していたいんだよ」
なんだよ…それ。確かにレーナの力は発動させてしまえば危険だ。だから、マフィア連中が彼女を狙うのは分かる。
けど、監禁は違うだろ?
俺は見た。目の前の少女が外の世界を見て、肌で直接感じて、そして笑顔を見せたことを。
俺は聞いた。彼女はずっと一人だったということを。いつもいられるのは闇の世界だけで、外と繋がることを許されなかったことを。
それじゃあ、前とまるで変わらないじゃないか!
「何か、何か解決策は?」
「お、落ち着いて?落ち着いて、レイン君の言葉を思い出してみて?」
「護衛……だったけか」
「そうだよ」
レーナは一歩踏み出し、心をまた落ち着かせようと深呼吸した後でその言葉を言い放った。
「私を、私を守ってください。我儘に我儘を重ねてるのは重々承知してる。けど、私はもう、閉じ込められたくない。一人は嫌。外を見たい。だから、お願いします……!」
瞳を潤ませながら、レーナは精一杯頭を下げた。俺は自分の頬が自然と緩んでいくのを感じた。これが我儘だって?上等だ。
友人が明るく笑っていられる未来を作れるんだからな。
それ故に、俺が彼女に出すべき答えは決まっていた。
「俺はさ、自分の中で一つだけ決めてんだ。俺が守りたいと思った人達のことは、例え何があろうとも、必ず守ってみせるって。だからレーナ、俺はお前のその願い、快く聞き入れるつもりだ」
「ほ、本当に?」
「ああ、安心しろ。絶対俺が守ってやるからよ」
「うん!」
驚いたような顔をした後、レーナははにかむように笑った。笑顔がよく似合う少女だ。この表情を取り戻せたことは、本当に良かったと思う。
しかし、心外だな。
「何でそこで驚くんだよ。俺が断るとでも思ったのか?」
まったく、会って日が浅いのは仕方ないが、俺への信用が無さすぎる。そう思っていたのだが、レーナは違う違うと慌てて言った。
「さっきの台詞、全く同じことをレイン君も言ってたから、何かびっくりしちゃって…」
「ほう、それは良いこと聞いたな。おいレイン、もう一回言っといたほうが良いんじゃないか?」
「相手が覚えてるなら言う必要がない」
ありゃりゃ、俺のいじりが華麗にスルーされてしまった。
けど、俺はちゃんと知ってるんだぞ?実はただ単に、恥ずかしくて言えなかっただけだってことくらいはな。
その証拠に顔が少し赤いし、目を瞑ってそっぽ向いてる。
「そうかそうか、そりゃ残念だ。俺も聞きたかったんだが仕方ないな。でも、こういうのはな、何回言われたって嬉しくなるもんだぞ?な、レーナ?」
「え、ああ、うん!」
多分、どうして俺がレーナに振ったのか、その理由を本人は知らない。実にピュアである。アニメとかだとあるんだぞ?こういうシーン。
「………友人のためなら、守るくらいはする」
言葉を変えたやがったか。だが、な?普段クールな奴がデレるなんて、あんまりないだろ?もちろんレーナは未だに気づいていない。本当にピュアである。
「ん?」
人知れず心を浄化される気分でいると、屋上の下に付いていたスピーカーからチャイムの音が鳴り出した。
「っと、予礼が鳴ったのか?というか、休憩って何時までだっけか?」
ダメだなぁ、俺。
もう一学期が終わろうって時期なのに、予礼の時間も覚えてないとは…。
いや、覚えていたんだが…ほら、色々あったし。
「えっ、覚えてないの刃君?」
「そりゃあ一ヶ月ぶりに登校したからなぁ…」
正確には、一ヶ月以上休んでた訳だがな。
もちろんその間、学校から送られてくる宿題はちゃんとこなしたぞ?お陰で授業が全く分からん訳ではない。
まぁ、中間試験と期末試験を受けてないから、成績が非常にまずい状況なのは確かである。しかも出席日数がかなり不足気味だ。
「けど、仕方なかったしな。俺達が生きてるのバレてたら、面倒なことになるのは間違いなかったし。あの時は、学校行かないで、隠れてるのがベストだったんだよ」
「そ、その話、詳しく聞かせて!」
「いや、別に取り立てて騒ぐようなことじゃないぞ?ただ単に学校サボっただけ――――」
「詳しく聞かせて!!」
「なッ…は、はい」
俺が事件解決のために学校を休んでいたことや周りから不良だと扱われていること。
結局俺は、そのことを放課後の帰り道でじっくり白状させられてしまった。
どうせ知られるのは、時間の問題だと思っていた。いたんですがねぇ…。こうも直ぐにバレるだなんて思ってもみなかったです、はい……。
「やけに周りからの視線が、教室の端に向かってると思ったら…」
「そういうことか」
「いや、レイン。全然これっぽっちも笑えねぇよ!?」
「笑ってない」
嘘つけ!若干頬がつり上がってるから丸分かりだ。内心「面白いことを聞いた」って感じだぞ?
「まぁ、いいんだけどよ」
「流石に良くはないと思うよ?」
「別に、お前らとの距離が短くなるわけじゃない」
「うーん。言われてみれば、確かに」
「だろ?だったらそれで良い。もっとも。一人、この状況を少し面白がってる奴はいるがな」
「あはは……」
レインに目を向ける。すると、「となると俺は裏番か」とかアホなこと言ってるな。何でそうなる!?その言い方だと、俺が表の番長みたいじゃねぇーか!!
「おーい、レインくーん。俺らの学校に、そんな役職ありませんよー」
「無いのか?」
「あってたまるか!」
お前の中ではうち学校がどう見えてるんだ。よく見てみろ、普通の高校だろうが!
「アニメではあった」
「二次元と三次元を混同すんな!」
「あ、でも確かにあったよね。ほら先週のアニ―――」
「お前ら知識が偏り過ぎだ!」
盛大に否定してやった。だが、おい!露骨に落胆すんな!ったくこの二人、そういう話になると意気投合するよな。
そこでふと、俺はある事を思い出した。
鞄を左の脇に挟み、意識を少しだけネックレス型の収納魔導具へ向ける。
「ん?何してるの?」
「ああ、ちょっとな」
瞬間的に右手に現れたそれ。本当は、もう少し後になると思っていたから忘れていた。何せ二人が転校してくるだなんて考えてもみなかったからな。
「あ…これって」
「おう。遊園地のチケットだ。東京案内してた――…つってもほとんど買い物だったけど…その時行きたそうに見てたろ?」
「それは当然いつか行ってみたいと」
「じゃあ、行くか!」
こうして俺達は遊園地へ行くことになったのだった。
自分の作品『クリスタル・ワールド』を読んでいると、ここ書き直したいなぁ、なんてことが多々あって困ります。白熱加減が足らないよぅ!とか、言葉の選び方が物語に合ってないよぅ!とか、つい考えてしまうんですよね!
作者としては、序盤の話を書き直したいと思っていたり(物語の初めの部分って大事だと思うんです)。
そういう気持ちとは裏腹に、読んでくださる方々にとっては読み直しってキツイものだったりするような気もして……悩みどころです。
でも、やっぱり書き直したいと思います(時期は未定です。話を進めないといけないので)。
そして、出来るだけ投稿済みを書き直さないように、投稿前には推敲を心がける所存です!
諦めないのが俺の魔⚫️だぁぁぁぁぁ!を胸にスマホの画面をタップする作者でした。
あ、決め台詞考えないと!その幻想をぶち⚫️す!とかがいいでしょうか?




