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クリスタル・ワールド  作者: 文月 ヒロ
第1章破滅の少女
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第27話炎の化身とキザウザ魔術師

どうも、最近寝不足な作者です。

執筆に筆が…あ、使ってるのは筆じゃなく指でした。コホンッ、執筆に指が止まらないです。

そして、何だかレインの言動が秋葉原的なものになってきていることを自覚しました。だ、大丈夫、まだ健全な領域のはず…はず………。

なので今後も彼を温かく見守ってあげてください。

「うわぁ、めんどくせぇ…。」


 刀を右手に、俺は思わずそんなことを口にした。

 俺たちの目的はレーナの奪還。恐らくその時、一緒にいるらしい父親が邪魔をするだろうが、そこはどうにかするしかない。

 レーナは地下一階にいるらしい。俺たちは今、一階にいるからあと一階分下ればいいわけだ。

 ただ、それまでが大変そうなのだ。言葉を発したのは俺だけだが、レインも斧田さんも同じように考えているのだろう嫌そうな顔をしている。


「こんなに敵さんがいるとは思わなかったなぁ。」

「本当勘弁して欲しいですよ…。」

「激しく同意。」


 各々感想を述べる。

 一本道の通路には敵が大勢配置されていて、奴らは俺たちに気がついたようで武器を手にとって俺たちに攻撃を開始し始めた。

 そんな状況下で呑気に会話が出来ているのは、その通路の前に横に通っている道があり、交差する通路の壁の部分に俺たちが隠れているからだ。


「こりゃあ、夢見のほうも大変そうだな。」


 斧田さんの言う通りかもしれない。俺たち以外の人員は全員外へと避難している途中のはずだ。あの量の人たちを敵から守るのだ、むしろあちらの方が今は大変である可能性が高い。

 それに、


「爺ちゃんとジンタがバカやらかしてないといいんだけど、物凄く不安がよぎる。」


 あの二人は戦力としての扱いがややこしい。考えてみよう。どうやら今日も相変わらずのぶっ飛んだキャラな二人だ。冷静な思考のもと想像すると…


「ダメだ、みんなに迷惑をかけている光景しか浮かばない。」

「でも、戦力としては安心できる。」

「そりぁ、爺ちゃんに関しては前よりも強くなってるのは俺も確認してる。今ならクリスタルモンスターにだって勝てそうで恐いくらいだ。」

「流石戦闘民族。そのうち悪の帝王も倒せそう。」

「……レイン、お前は本当ブレないな。」

「何が?」

「いいや、何でもない。それよりも…」

「分かってる。」


 攻撃が止んだ一瞬で、レインは通路に出て敵に魔力銃を使った銃魔法を放つ。


「銃魔法・水の連弾(ウォーター・バレッツ)。」


 その瞬間、レインの銃口手前に魔法陣が出現し、水の弾丸の嵐が吹き荒れる。


 が、敵どもは身の丈ほどの盾を固めて防御に徹する。魔力で強化されているからか中々破れない。

 レインも舌打ちしている。


 遠距離系の技が少ない俺と斧田さんは今入ると邪魔になりそうだ。かといって、レインが攻撃を止めた瞬間飛び出ても敵の攻撃の餌食になる。数は力だとはよく言ったものだ。


 しかし、どうする?このまま時間を食うわけには行かない。今回はタイムリミットがある。時間を確認するがあと三十分といったところか。それまでにレーナを救出しなければ、あのクソッタレファミリーが彼女の力を無慈悲にも行使してしまう。


 それだけは何としても食い止めなければ。


「レイン。一旦戻れ。」

「ああ。」


 戻ってきたレインに作戦の提案を持ちかける。

 作戦内容は至ってシンプル。レインが幻覚魔法を使ってその隙に敵を叩くというもの。そういえばレインは幻覚魔法を使えたんだったと今さらながらに思い出したのだ。

 だが、俺の閃きは却下された。


「敵との距離が遠すぎる。」

「まじか。」

「まじだ。」


 どうやらレインは幻覚魔法こそ使えるが夢見さんほどは上手くないとか。

 それでも十分凄いとは思うのだが、今回は使えないらしい。


 手詰まりだな。

 そう思っていた俺はふと気づく。

 攻撃が止んだ。先程まで銃やら魔法やらの攻撃があったにも関わらず、静かになっているのだ。


 俺は怪しく思い、壁に隠れながら敵の様子を伺った。しかし、その見知った顔を見て驚いた。


 そこには、


「あー、お前らー武器を納めて納めてー。ほら早くー。俺の言うこと聞かないと焼くぞー?」


 なんとも気だるげな様子の火ノ宮錬魔がいた。

 それも敵の中を掻き分けて、その前に出て、でだ。


「な、あいつ…!」

「あいつは…。」

「知り合いか?イケメンだな。」

「知り合いというか、敵というか、軽く復讐してやりたい奴というか、言葉の選びどころに迷う奴ですね。」

「刃、最後のは個人的意見だ。」

「おっとそうだった。悪い。」

「で、結局敵か味方かで言うと?やっぱ敵か?まぁ、イケメンだしな!よし殺ろうすぐ殺ろう今殺ろう!」


 妙にやる気だな斧田さん。いや、あるのは殺る気のほうだろうか?


「いや、すぐ決めつけるのは良くないですよ。」

「うっ、うっせー。俺だって、俺だってイケメンに生まれたかったんだよー!イケメン滅べぇ~!」

「た、大変でしたね…。ってそうじゃないです、俺の読みが正しければ…」


 火ノ宮の方を見てみると敵どもから歓声が上がっていた。

「やっちまえ!」だとか「あんたの炎に敵う奴なんていねぇ、こりゃあ侵入者も終わったな!」だとか、随分と信頼を得ているようだ。


 本人の方はというと、敵どもの方へと向き直り、火属性の魔力をその体から発していた。

 その様子に周りは、困惑の色を浮かべ始めている。


「あー、悪いが前言撤回ー。お前らが俺の言うことを聞こうが聞かまいが、関係無しに全員纏めて焼き殺すんで…そこんとこよろしく!」


 やる気のない間延びした声から一転、俺たちと戦闘した時のような強い覇気が籠った声になった火ノ宮は右の拳を握って魔力をそこに溜め始める。


「炎の力よ 我が求めに応じ 紅蓮の炎の渦と成せ!炎魔法 炎竜・咆哮!」


 その声が発せられたと同時、火ノ宮はその拳を突き出す。

 拳の手前に赤い魔法陣が出現し、そこから炎の渦が勢い良く飛び出て敵を蹴散らす。

 その炎はさながら竜のブレスのようだ。


「ほら、やっぱりやると思った。」

「ああ。」

「な、マジかよ!敵が敵をぶちのめしただと!?」

「まぁ、驚きますよね。説明してなかったですし。」

「ああ、驚いてるよ。俺の敵であるイケメンがどうやら敵じゃないみたいだってことにな。」

「何か驚く所ずれてる気がします。」


 どれだけイケメンが嫌いなんだろう、この人は。まぁ良いか。それよりも、だ。


 俺は壁の影から出て火ノ宮に近づく。


「よう、久しぶりだな坊主。お前がいるってことは…」

「ああ」

「俺もいる。」


 レインも出てきたようで、俺の隣に来て言った。


「で、そっちの、でっけぇ斧持った奴は…ああ何だ、特魔部隊日本所属の精鋭か。」

「ご名答。そして、一応俺にも説明頼む。」


 と、まぁ、そんな感じで火ノ宮錬魔と俺達は合流の後に、敵地へとさらにその足を向かわせた。

 実は火ノ宮とは会いそうな気がしていた。もちろん、味方として。名目上は敵だから当然だ。


「そういえば、あの変なロボットたちみたく床をぶち抜きゃゴールが近いんじゃねぇの?」


 地下へ向かう途中、一階の廊下を走りながら、斧田さんが突然そんなぶっ飛んだことを言ってのけた。

 …な、なるほど。確かにそれなら時間短縮にもってこいだ。だがしかし、それは不可能というものではなかろうか?


「えと、それだと問題が……」

「問題って、どんな?コンクリートよりかちょっと硬いが、俺の斧なら出来なくないぜ?」

「魔力感知が妨害されてるせいで、地下に誰がどこにいるか分からない。」

「…あ、そうだった。ミスったら、お前らの言うその可愛い女の子巻き込んで生き埋めにしちまうか。」

「はい。そういうことなんで無理ですね。」

「そうだ。やるなよ脳筋?」

「誰が脳筋だ!おいお前ら!やはりイケメンは撲滅すべきだぞ!」

「その前にてめぇを焼き焦がすぞゴラァァ!!」


 何だろう?この人たちは緊張感ってものが無さすぎる。偶然にも、ここは魔王城なんて呼ばれているんだ。俺達がいるのは、ゲームとかだとボスである魔王の部屋の前なんだが…。普通は、気を引き締めていくぞ!!とか、ここからが正念場だ!!とか言っててもおかしくない。

 いや、仕方ないのか?この敵と味方が混じっている面子だと。だが、もう少し仲良くしてもらいたいものだ。


 俺もレインも少し気を抜いていた。


 そんな時だった。


「「「「なっ…!」」」」


 角を曲がった瞬間、突然、何本もの光線が俺達へ向かってきた。

 辛うじて避けた俺達。

 攻撃があった方を確認すると、そこに一人の男がいた。


「やれやれ、この僕を前に言い争いをしているなんて…余裕過ぎやしない、かな☆」


 ………………………………。


「「「何だこのキザでウザいキャラは………!しかもナルシストが入ってる……!」」」


 金髪碧眼、中々に整った顔立ち。耳には金のピアスをつけている。魔術師のローブを着ているのを見るに、恐らく本物の魔術師なのだろう。

 そして何より、キザなセリフ。語尾に☆がついている。

 そのキザでウザい、キザウザさに俺達は思わずハモってしまった。

 唯一、火ノ宮は奴のことを知っていたのか無言だった。


「酷いなまったく、初対面の人間にそれだと……モ・テ・な・い・よ☆?」

「う、うぜぇー………。」

「ああ、ウザいな。」

「ウザい、ナルシスト、あとイケメンだ。殺るか?」

「悪いけど、死ぬのは君たちの方、さ☆」


 かくして、俺達の戦いの火蓋が切られたのだった。


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