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クリスタル・ワールド  作者: 文月 ヒロ
第1章破滅の少女
30/87

第20話近づく真相

気が付けば既に二十話目です。ここまでくるのは早かったですね(あくまで作者個人が一方的にそう思っているだけですが)。

と、前書きはこのくらいにして、第二十話近づく真相 お楽しみください!

 調査から数日が経ったあるの日こと。


「あーもう、なんでだよー!」

「分からない…。」

「……。」


 特魔部隊支部、休憩室。

 俺たちは休憩を取りながら、どうにもならないことに悩んでいた。

 二日前のことだ。

 俺たちは調査報告書を完成させ、日本の本部に提出した。レインが他の隊員からとってくれた証言もあり、ある程度は信用も得られる。

 …そう思っていた。しかし、提出しに行ったその先で、その報告書を見た本部の人間は鼻で笑い、「はぁ、こんな子供が作ったものを持って来られても困るんですよ。」と、それを俺たちの前で破り捨てたのだ。

 学校に通いながら何日もかけて作ったものだと言うのに、ろくに見ることもせずにそんなことをされた俺はその場で抗議しようとしたが、レインにいくら言ってももう無駄だと言われ、おとなしく引き下がった。

 そして今に至る。


「そもそも、俺たちは本部から認められた立派な隊員な訳だろ?それをただの子供扱いってどういう了見なんだよ。」

「俺たちは確かにまだ子供。でも、こんな扱いを受けたのは初めて。」

「……。」


 相手の行動の意図が分からない。レインによれば以前はこんなことはなく、別件でレインが調べたことを本部に届けた際はちゃんと受け取ってもらえたらしいのだ。


「まぁ、坊主たちの気持ちは分かるぜ。」


 そう言って入って来たのは鬼塚さんだった。


「あ、鬼塚さん。お疲れ様です。」

「そっちもな。」


 俺がそう言うと、席に座りながら鬼塚さんも俺たちに言ってくれる。

 今この部屋にいるのは、俺とレイン、さっきから黙りっぱなしのジンタ、そして鬼塚さんだ。


「言っとくが、今のは慰めじゃなく同情だからな?というのも、俺たち捜査班も同じ目に合ったからだ。」


 ため息まじりに鬼塚さんは言った。


「えっ?どういうことですか?」

「日本語が分からなくなっちまったか?そのままの意味だ、そのままの。って、八つ当たりだな、すまん。」

「いえ…。」


 謝罪する鬼塚さんの顔にはくまが出来ており、

 暗い表情がさらに暗く感じられた。


「えっと、俺たちと同じ、クリスタルモンスターの大量発生についての報告書でしたよね。」

「ああ。いろいろ調べて、坊主たちのとは別の発見もあったんだがな…。見事にビリビリにされちまった。」

「俺たちの調べた内容、知ってるんですか?」

「ま、かわいい後輩候補たちの報告書だからな、一応全部目を通させてもらった。」

「後輩って、まさか本気で捜査班に誘うつもりなんですか?」

「それも有りだって話だ。なかなか目の付け所が良いし、ちゃんとそれがその証拠から考えられる可能性であるのをまとめられたものだったと思ったしな。二つの組織が関わっている…だったか?」


 俺とレインは少し照れる。本部の人間には真逆の対応をされたからというのもあるだろうが、やはり自分たちの頑張りを認めてもらうのは嬉しいものだ。

 ちなみにジンタは、ぼーっとしている。と思ったらいきなり喋り出した。


「で?後ろに何があると思う?いくら何でも捜査班の報告を無視するとかおかしいやろ?」

「ああ、そうだな。考えられるとしたら敵の妨害くらいか?」

「そうか。」

「敵の妨害…」

「つまり、報告書を受け取らなかったあの男は敵の可能性があるってことですか?」


 俺とレインも会話に入る。


「あくまで、可能性だが、今回のはそれが高いな。」

「いや、あいつは黒や。完全にな。」

「何で分かるんだ?」


 俺が尋ねると、ジンタはよほど自信があるようで、人差し指を立てて、それを左右に振りながら言う。正直、見てると結構イラッとくる仕草だ。


「チッチッチッ、俺を誰や思うとるんや?」

「ヘンテコロ――――」

「ちゃうわ!!自分、ホンマ今日という今日は――」

「あー、はいはい。ジョウダンデスヨー、ジョウダン。」

「なんやその棒読み!」


 なぜか怒られてしまった。そんなにこの呼び名嫌いなのか?

 いや、それよりも話を進めないと。


「いいから続きだ。」

「コホンッ。あのな、俺にはいろいろと機能があってな?その中に、相手の顔の造形とかそんなんから相手が整形してることが分かるっていうのがあんねん。」

「なるほど。俺たちの努力の結晶を一瞬でゴミくずにしてくれたあの野郎は整形してたと。」

「さすが、捜査班やな。正解や。それとな……」


 そして、ジンタは口から二枚の紙を取り出した。

 うげっ、汚い…。いや、ロボットだし汚くはないか。あれだ、そのたくさんの機能の中に印刷能力があるんだろう。高性能ってのは間違い無さそうだ。こりゃあ、ヘンテコロボットとは言えなくなってきたか?


「これは?」


 鬼塚さんが尋ねるとジンタが説明する。


「これは、あの男の毛髪から取ったDNAから調べた結果や。」

「アルフィオ・ジェスティ…。外国人なのか?その割には日本語に違和感とかなかったけど…」

「親が日本人とイタリアのハーフやしな。ある程度は違和感なく喋れんのやろ?」

「イタリア…。」


 何か心当たりがあるのだろうか、鬼塚さんは考え込む。

 そこにジンタがある単語を呟く。


「カンピオーネファミリー。」

「カンピ…!?まさか!」

「そのまさかや。」

「な…だとしたらまずい!」

「分かっとる。」

「あの…、俺たちを置いて行かないで欲しいんですけど…」


 カンピオーネファミリーという単語を聞いた瞬間鬼塚さんの表情がまるで下手物を食べたときのようなものになった。

 しかし、俺とレインはその単語の意味をよく理解していない。

 もちろん、単語からしてマフィアのことだということなのは分かるが。

 確か、カンピオーネってイタリア語で王者って意味だったか?


「おお、すまんな。普通知らんわな。んじゃ、説明するわ。カンピオーネファミリーってのはイタリアにある、この世界で最大のマフィアのことや。」

「なるほど…。」

「最大の…。そりゃまたすごいな。で、もしかしなくても…」

「そやな。あの男はそのマフィアの人間や。」

「やっぱりか。はぁ。」


 俺は額に手の甲を当て、ため息をつく。


「なんや、あんま驚いてないな。」

「十分驚いてるけど、それよりも話の規模が凄すぎて頭が混乱してんだよ。この時期にマフィア?そんなでかい組織が国際機関直属の部隊に入り込んでるだぁ?俺たちが知らないうちに漫画やアニメでしか聞かないようなことが起こってるとか本当に笑えないぞ!?」

「それで、ジンタ。そのマフィアの目的は?」

「それが分かったら良かったんやけどなぁ。すまんな、分からん。一応調べて見たけど、さすがに目的までは…けど、時期的にクリスタルモンスターの大量発生の原因かもしれやんってのはあるな。」

「そうか、ありがとう。ずっと調べてくれてたんだな。」

「だからさっきまで黙ってたのか。ありがとうな。」


 レインに続き俺もお礼を言う。

 事態は深刻だろうが、それでも何が起こっているのか分からないよりはましだからな。


「いやぁ、照れるなぁ。イケメンで超高性能、加えて男気溢れるジンタ様格好いいとかー。」

「誰もそんなこと言ってねぇよ。」

「一万步譲ってもお世話にも格好いいとは言えない。」

「…知ってる?言葉って時に物凄い武器になるんやで…?」

「はははははは。やっぱり坊主たちはこんな時でも明るいな。俺も見習わねぇと。」

「文脈ちゃんと読もな?これはただのいじめや。」

「そうか?俺にゃあ明るい会話に聞こえたぜ?」

「悪かった、文脈以前に自分の耳が壊れてるんやな。」


 鬼塚さんは立ちあがり、俺たちに言う。


「ま、何にしても元気をもらったよ。どうやらやらなきゃならんことが増えたみたいなんでな。先に失礼するぜ?あと、そうそう。マフィアがどうとかは誰にも話さないでくれ。」

「えっ、でも…」

「頼む。」

「…分かりました。」

「了解した。」

「しゃあないな…」

「ありがとう。」


 そう言って、鬼塚さんは部屋を後にした。


 その後のこと。


 ブー、ブー、ブー


 俺とレインの携帯電話に一通のメールが届く。

 内容は、本部から至急、文京区に来いというものだった。


「ん?レインもか。」


 どうやら、レインに送られてきたのも同じ内容だったらしい。

 しかし、一体何の用だろうか?俺たちはこの江戸川区を任されていて、クリスタルモンスターの出現が多いこの時期に任された区画から出るのはあまり良くない。まぁ、俺たち以外にもあと二、三の特魔部隊のチームがいるから呼ばれたことを伝えれば大丈夫だが。


「よし、取り敢えず行くか?」

「ああ。すぐに終わらせる。」


 席を立ち上がって、俺たちも部屋を出ようとする。

 すると、「ちょっと待ってくれ」とジンタがそれを止めた。


「どうした?」

「いや…、何か変やなと思って。」

「変って、何が?」


 その問い掛けにジンタは答えを返す。


「気づいてないみたいやけど、今この江戸川区任されてんの、自分らだけやで?」

「それが?」

「せやから、仮にここでクリスタルモンスター出てきたら対処すんの自分らしかおらんって言ってんのや。」

「いや、一応俺たちの他にも班があるから大丈夫なんじゃ…」

「おらん。急な会議で自分ら以外の班は出ていってんのや、知らんかったんか?」


 そうだ、そういえば今日は人が少ない。なぜだろうと思ったらそう言うことだったのか。


「なるほどな、確かにそれだとおかしいな。」

「やろ?」

「でも、それだと何で俺たちにこのメールが?さすがにここを空けるのはまずいって知ってるはずだよな?」

「当然。本部ならそれくらい知っている。」

「そう言うことや。怪しさ満載やな。」


 ふむ。

 どうするべきか。


「ん?」


 すると、またもやメールが届く。


「えー、なになに?…少しくらいなら担当区画を離れても構わないから来てくれ?いいのか?」

「ダメに決まってる。」


 レインはダメだと言う。そうだよな。ってことは…やっぱり、


「何かあるな、これは。」

「なんとなく、心当たりあるわ。さっき言ったアルフィオって奴の可能性がな。」


 ジンタを見ると、腕を組み、考える仕草をしている。

 そして、ひらめいたとばかりに人差し指を立てて言う。


「後をつけたら分かるな。」

 ――――――――――――――――――――――――


 そう言うわけで、そのメールの送り主を追うことになった俺たちは、ジンタの助力のもと動いていた。


「で?本当にこの江戸川区にいるのか?」

「間違いないな。ふん、どうや?超高性能なジンタ様の――――」

「あー、はいはい、スゴイデスネー。」


 俺が適当にジンタをあしらうと「だから棒読みやめろやー!」とか言ってきたが、無視する。

 今は仕事に集中だ。


「レイン、一応聞いとくけど人が相手でももう大丈夫なんだよな?」

「おい!無視すなー!」

「うん、問題ない。」

「聞いとんか!?」

「そうか、なら良かった。もしかしたら、メールの送り主が敵かも知れないからな。」

「…ああ。」

「おーい。聞いてまっかー?」


 レインを見ると顔が暗い。


「どうした?」

「いや、そういえばまだ俺があの襲撃があった時におかしかった理由を言ってないと思って…」

「何だ、そんなことか?別に気にしなくてもいいだろ。」

「えっ…」


 レインは少し驚いたようにこっちを見てくる。


「いや、言えないことの一つや二つあるだろ?相棒だからって全部を教えろなんて言わねぇよ。親しき中にも礼儀あり、だ。知ってるか?」

「…そうか。そうだな。でも、いつか…」

「おう、気長に待つよ。」

「聞・い・て・ま・す・か?」

「「……。」」

「聞いとんの―――」

「うっさい!聞こえとるわ!」

「話の邪魔をするな。」

「…えー、ひっど…」


 まぁ、そんな感じに騒がしい追跡をしていたが、それもここまでのようだ。人目があるため、手のひらサイズの小型衛星を使って同行しているジンタはこんな会話の中でもしっかり追跡対象の位置情報を調べていたらしく、「ん?動きが止まったぞ。」とその情報を教えてくれる。


「ここは…」

「よし、取り敢えずいってみるぞ!」



 メールの送り主が止まった場所に俺たちもたどり着いた。

 俺たちがいるのは廃工場の前。


「気を引き締めていくぞ!」

「分かってる。」

「任せとけ。」


 一応、敵か分からないので…といってもメールの送り主がこんなところにいるといことは、もう限りなく黒に近いのだが…。

 とにかく、そいつが敵かも知れないので気づかれないように、できるだけ音を消して中にも入る。

 物陰に隠れ、辺りの状況を確認しようとする。

 すると、突然誰かの声が聞こえてきた。


「ふぅ、今日は珍しく人がいない場所だったから楽だったな。」


 まるで一仕事終えたように言うその人の声は、心なしかいつもより疲れたようなものだった。


「確かにここならいろいろと便利そうだもんね。あの人たちもやっぱり賢いなぁ。」


 しかし、気になったのはそこではない。むしろ、この江戸川区のこんな場所に()()がいたことが気になった…いや、その表現は間違っている。正確には、なぜここに()()が?という疑問の念が浮かびあがっていたのだ。

 思わず物陰から出てきて声をかけてしまう。


「レー…ナ…?」

「そんな…」

「えっ……。」


 そう。そこにいたのはレーナ・アルファーノ、彼女だった。

 江戸川区の海沿いにあるこの廃工場で。

 俺とレインを見た彼女の顔は驚愕に満ちていた。


「ど、どうして二人が?」

「それはこっちの台詞だ。」

「それは…」


 俺の質問にレーナは言葉に詰まる。


「言えないようなことなのか?」

「……。」


 さらに問い詰めるが、レーナはそのまま黙り込んでしまう。

 俺は内心、まだ彼女に期待していた。しかし、この沈黙でその期待という光はどんどんと陰りを見せていく。そして、考えたくなかったことが自然と頭の中によぎる。


「レーナ、お前は…俺たちの敵…なのか?」

「……」


 依然閉ざされた口が開くことはなく、彼女の目は暗いものになっていく。

 …やめてくれ。悪い夢でも見ている気分だ。

 まだ僅かに俺の中にあった期待の光が完全に消えてしまう。それでも俺は、再度尋ねる。


「レーナ。敵なのか?なぁ、なんとか言ってくれよ。」

「…ごめん。」


 苦悶に顔を歪め、目を瞑り、俺たちを見ないようにしてレーナはやっとのことでそれだけ言った。


「ごめんじゃ分からない。どうして、俺たちが自分たちに届いたメールの指示に従わず、そのメールから送り主の位置情報を割り出して来た先にお前がいる?それは、俺たちが敵だからやったことなのか?」

「えっ、どういうこと?」


 レーナは顔を上げ、きょとんととした表情になり尋ねてくる。

 本当に分からないふうだった。だから、状況の整理をしようとレーナに言おうとする。しかし、その前に予期せぬ者の声が聞こえた。


「なるほど。ふむ、子供だと侮っていましたがこれは考えを改めねばなりませんかねぇ?まさか、後をつけられていたとは。」

「な…お前は…」

「お久しぶりですね。」


 俺たちの話し合いに水を指したのは、たった数時間ほど前に話題に出てきた男だった。


「アルフィオ・ジェスティ。」


 そう。例のマフィアからの妨害者アルフィオという男だった。

 レインが自分の本名を言い当てたことにアルフィオは、「ほおぅ」と声を漏らす。


「すでに身元がバレていましたか。では、我々が何者かもご存知で?」

「確かカンピオーネファミリーだったか、そっち側の人間なんだろ?」

「そうですか…。もうそんなに知っているのですか。とてもまずいですね。」


 そのわりに、奴の顔はとても冷ややかなものだった。


「おい、後をつけられてたって、つまりお前が俺たちのメールの送り主なのか?」

「ええ、ここに来るまで上手く騙されたなと思っていたので、驚きましたよ?」

「そうかよ…。」


 視線をレーナに戻す。

 彼女のさっきまでの苦しそうな表情は変わらず、けれど視線はアルフィオに向いていて、冷や汗を流しながら一歩後ずさった。


 この態度…彼女はアルフィオという男を知っている?

 俺たちを騙そうと画策したのはあの男だ。ってことは、やはり東京での異変への関与は決定的だが、まだ希望は捨てずにすむ…のか?


 見下したような目で俺たちとレーナを見るアルフィオ。

 そして、突然口を開く。


「それにしても…レーナさん、貴方がここにいたのはある意味幸運です。さぁ、こちらに来るのです。」


 冷ややかな笑みを浮かべ、レーナに手をさしのべるアルフィオ。


 …これは…、やっぱり敵なのか。


 拳を握りながら、レーナは「いいえ、私は貴方たちの言いなりになんてならないわ。」とアルフィオに告げる。

 その言葉を聞いた奴の表情は、完全に冷たいものになる。


「はぁ…では、仕方ありません。力ずくででも、貴方を連れ戻します。」

「簡単に捕まる訳ないでしょ。」


 そう言って、レーナはアルフィオから逃げるため、動こうとする。

 が、しかし。


 ドパンッ


 銃声とともに彼女の肩から赤いものが飛び散った。


 ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ


 自分の心臓の音が聞こえてくる。

 そしてまるで、時の流れがゆっくりになったかのようになる。

 俺は目を見開き、その遅くなった時の中で、銃で撃たれた痛みで呻き態勢を崩して倒れそうになる彼女を見て叫ぶ。


「レーナ!」


 …もう、その時の俺に彼女が敵なのか味方なのかなんてどうでも良かった。

 ただ、目の前で撃たれ血に染まった彼女に一刻も早く駆け寄り彼女を守らねばと、それだけ思った。

 駆け出す俺の後ろでは、レインも俺と同じように思ったのだろう地面を踏む足音が聞こえた。

 もちろん、今はそんなことどうでもいい。


 早く、早く行かないと!


 しかし、俺たちの行動を阻む者がいた。


 ボォーーッ


 目の前を横切る赤い炎。

 放たれた方をキッと睨む。


「ひひっ。やぁーっと捕まえたぁ。」


 レーナを見て汚い笑みを浮かべながら銃を片手に構える左目に眼帯をした男。

 そのとなりには、さっきの炎を産み出したと思われる赤毛の男。


「てめぇー!」


 俺は銃を持った男に沸き上がる怒りをぶつける。


「あぁ?」


 だが男は、どうかしたのか?とでも言うかのような声で俺を見てくる。

 …ふざ…けるな…。


「人を撃っておいて、なぜそこまで喜べる!当たり前のことだと思える!」

「るせぇなぁ。んだよこのガキぃ。おいアルフィオ、こりぁどういうこった?」


 舐めた態度でアルフィオに状況の説明を求める眼帯の男。


「ああ、ベニート。少し、特魔部隊の子供に後をつけられてな。」

「このガキどもがぁ?」

「そうだ。」


 眼帯の男、ベニートは今度は俺たちの方を見て舌打ちしながら言う。


「チッ、面倒だ。おい、火ノ宮(ひのみや)ぁ。()れ。」

「仕方ねぇか。命令にゃあ従わねぇと。」


 火ノ宮と言われた赤毛の男はニヤッと笑って拳を構える。

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