第19話レーナの心
久しぶりの投稿です。
少々長く書かせて頂きましたので、いつもより楽しんで貰えると思います!
それではどうぞ!第19話レーナの心
「友達…か…。」
暗い、建物と建物の間の中を歩きながらレーナ・アルファーノは呟く。
建物と建物の間と言ってもここは少し広めのものとなっている。
真っ昼間だというのに彼女のような少女がこのような場所にいるのは気まぐれが理由ではない。連日、彼女はこういう、人があまり入らないようなところに入り誰にも邪魔されず、彼女自身の今後の計画について考えたかったからだ。
彼女が呟いた「友達」というごくありふれた言葉。きっと誰にでもできる存在。
だがそれは、レーナにとってずっと心の中で憧れていた存在だった。なぜ憧れるかは彼女の生活環境が原因だとしか言いようがない。
ふと、二人の少年のことを思い出す。
彼女をただのレーナ・アルファーノとして見てくれた友達のことだ。
「行かないと。」
そう、行かなければならない。彼女のすべきことは…戦いはまだ何一つ終わってない。
あれを壊さないといけない。
もちろん、それ自体は無害で便利なものだ。しかし、それを彼女の身内が使うことはなんとしても避けなければならなかった。
もう身内から逃げてきて三週間ほど経過している。その間、彼らに見つかっていなかったことは奇跡だと言える。
だが、まだ5月6日。7月にはまだ遠い。
おそらく、クリスタルモンスター出現件数がこの東京だけ多いのを多くの人は知っている。
だがそれまで、レーナは身内に見つからずにあれを壊し続けなければならない。何せ、壊しても壊しても、数日後には、彼女と同じくこの日本に潜入した彼女の身内が再びそれを設置し直している。かといって、彼女の行っていることは無駄ではない。
あんな大がかりな計画を成功させるには周到な準備を要する。
詰まるところ彼女の計画は、彼女の身内の計画の準備の邪魔をする事だった。その邪魔に当たってその設置物に仕掛けられているギミックが問題だったが、そこはもう何とかなっている。
本当は、自分がその命を絶てば良いだけの話なのだが、彼女には出来なかった。
日本へ渡った彼女は最初、その事に気づかなかった。当然だ。いままで周りの人間がそれを良しとしなかったために、まだその時は死のうとしても止められると思っていたのだ。
しかし、その一週間後。それが可能だと知った彼女は喜んでそれを実行しようと試みたが自分では出来なかった。
狂った環境で生きてきた彼女はいつも死は目の前にあるものだと思っていた。だが、違った。考えてみれば、それを自分で体験する事は初めてだった。ちょうど、映画や小説、アニメで体験したことを実際に試みても簡単には上手くいかないように、彼女は出来なかった。
自分を殺す時に彼女はとてつもない恐怖を感じ、一気に血の気が引いていった。そして、用意したサバイバルナイフの刃が己が掴んでいるにも関わらず、その刃自らがまるで狩人のように今か今かと彼女を狙っているようにも感じた。狂った環境でも狂わずに、常人以上に優しい性格を持ち合わせていた彼女にはひどく難しいことだった。
それでも、やらねばと必死にいろいろな自殺行為に及ぶが失敗。
それから一週間以上たった5月3日のことだった。
レーナはイタリアにいた時に知った謎の怪しい組織に接触し、彼らから実験に協力するならと、赤いひし形の結晶とその怪しい組織に捕らえられたクリスタルモンスターを譲ってもらい、日本に来てからずっと計画に使っていた。
あの不思議な結晶の力はクリスタルモンスターを操る力を持っていて、身内を止める計画に使えると思ったからだ。
そして、その日、その操れる化け物を使って死ねばいいと思い、自殺を実行。
加えて、身内にも自分の死を知らしめるためにわざと自殺場所に人のいる場所を選んだ。
自殺場所に決めた場所でレーナはまず、周りに被害が及ばないようにクリスタルモンスターを使い、いつもしているように自分の周りにいる人間たちを追い払った。
自分が死んだら化け物は制御する者がいなくなり、そのまま本能に従って暴れ回るだろう。もちろん予測していた。だから、自分の中にあるあの忌まわしい力を魔法札という札に魔法を封じ込める魔道具に封じて懐に隠し、自分の死と同時に発動させるようにした。
相変わらず制御の利かない力だが、魔法札へなら多少使えた。
人もある程度いなくなり、あとは自分を殺すのみと、クリスタルモンスターの本能を解き放つ。操るために化け物の中に仕込んだ赤い結晶に供給している魔力を絶つだけだった。
その瞬間、クリスタルモンスターは本能を剥き出しにし、レーナに襲いかかった。
不思議と怖くはなかった。彼女の体が避けられない死を受け入れたからだろう。
「全部、終わる…。」彼女は確信していた。
しかし、運命が邪魔をした。
「おりゃーーっ!」と聞こえる声。気づいた時にはクリスタルモンスターへその声の主は斬りかかっていた。
そして、更に声が聞こえる。「逃げろ」と。
言われるままに彼女は逃げる。自分でも何をしているのだろうと思った。
少し離れたところで、彼女は突然自殺の邪魔をした少年を観察する。
敵を素早い動きで翻弄するその少年は武器に日本刀を使っていた。
日本のアニメなどを昔から隠れて見ていた彼女は、不覚にも「これがジャパニーズクール!」とこんな状況にも関わらず、少し興奮してしまった。
もちろん興奮しつつもその黒い服装から少年が特殊攻撃魔導部隊の隊員だということを彼女は確認した。
だが、おかしい。普通あの部隊は班を組んでいるはず。それなのに少年は一人で戦っている。一隊員にしてはやけに強いが、一人であの化け物を倒せるほどの力を持っているとは思えない。
そんなことを思いながら観察していると、突然、ドパンッという大きな音とともに蒼い鮮やかな一筋の閃光がクリスタルモンスターを貫く。そして、次の瞬間、貫かれた化け物は砕け散った。
驚く彼女は、その閃光を発生させたと思われるもう一人の青い髪の少年を凝視する。
あり得ない光景を見てしまった。
あの強そうな日本刀の少年でも倒せなかった化け物を魔力銃から放たれる一撃で破壊してしまったのだから。
そして、仕事とはいえ、自殺を止められたことを彼女は自覚した。だが、驚きのせいでちっとも腹立たしく思わなかった。
歩み寄り、なにやら楽しげな雰囲気を醸し出しながら話をしている二人の少年。
ふと、思ってしまった。「私もあの中に…」と。
そして、気がついたら彼女は彼らに話しかけていた。
そう。桐島刃とレイン・バレット、その二人に出会ってから彼女の中の自殺の二文字は鳴りを潜めてしまった。
あと少しだけ、あと少しだけ自分をただのレーナ・アルファーノとして見てくれる彼らといたいと思ったからだ。
携帯を取り出し、地図を表示する。
「次は…ブン…キョウ…区って言うんだっけ?頑張らないと。」
――――――――――――――――――――――――――――
「うわーーっ!」
「た、助けてぇ!」
数分前までの街中の楽しげな雰囲気は完全に消え去り、辺りは恐怖に包まれていた。
目の前に突然クリスタルモンスターが現れたのだ、そうなるのは火を見るよりも明らかだ。
休日の為か、夜でもこの文京区には多くの人がいた。
だからレーナは人払いのために目立たない所で クリスタルモンスターを操っていた。
「ごめんなさい…」
彼女の謝罪は、追い払う人々へ向けてのものだった。
もちろん、そんな小さな声は誰にも届かないことを彼女は知っていた。
人々の絶叫が響きわたる。
彼女の耳にも響いてくるそれは、できれば聞きたくないものだった。
人の不幸は蜜の味、とは言うけれど彼女には苦い味に感じられた。
人の幸福を潰すこの光景は昔から嫌いだった。それを潰される気持ちを痛いほど理解できたからだ。ましてや、それを自分で行っている。
彼女にとって耐え難いことなのだ。
加えて、こんなことしているとをあの二人の少年に知られればきっともう友達ではいられないと理解している。そして、この気持ちのほうが耐えられないものだから彼らに話していないということも。
自分という人間は我が儘でひどい人間だなぁと彼女は思う。
結局は、自分の幸せのためならば、誰かを不幸にするという自分が嫌っていることが出来てしまうのだから。
だが、彼女は気づいていない。
人間は大義名分さえあれば戦争だって起こせる生き物だ。つまり、それさえあればどんな悪行も正義だと思って行えるのが人間だということだ。そして、身内が悪いからこんなことをしなければならないのだと、裁判で訴えれば情状酌量を貰えるほどの大義名分が彼女自身にはある。
実際身内が起こそうとしていることを止めようとしているのは変えることができない事実だ。大義名分が立てられない訳がない。
しかし、彼女はそれを立てない。しっかりとそれを逃げの方法だと理解しているからだ。
そう。彼女は自分が悪だと理解出来ているのだ。
もちろん、それを理解して悪を行うことが善いことなはずはない。しかし、視点を変えればこの場合、彼女はまっすぐで優しい人間なのだと捉えられる。
自分が行っていることが如何に大義名分が立てられるものだとしてもそれが悪でしかないと、とてつもない罪悪感を感じているのだから。つまり、彼女は本当に悪い人間ではないということだ。
「う…、ダメ。もっと小さい被害で…」
そんな優しい彼女は、出来るだけ壊れた建物が飛び散って人に当たらないようにクリスタルモンスターを制御することに力を入れる。
操れるといっても、抵抗が激しいため、しっかり押さえつけておかないと駄目なのだ。
そう思っていた時だった。
「見ぃ~つけたっ。」
「!?」
その声に、レーナはビクッとする。
そして、クリスタルモンスターの動きを止め、振り返る。
「あなた…」
「そ~ですよぉ~?わ・た・し、でぇ~すよぉ~。ベニートでぇ~すよ♪ひひっ。」
おちょくったような口調で彼女に話し掛けてきたのは、ベニートという人間だった。
不適な笑みを浮かべながら彼女の方に歩いてくる。
「もう逃がしませぇんよ♪」
「残念だけど、こんなところで捕まるわけにはいかないわ。」
「面白いことを言いますねぇ?レーナさ・まっ。私があなたを見つけたということはぁ~、もうあなたには逃げ道がないということなのですよ?ひひっ。」
「それはどうかしら?」
彼女はクリスタルモンスターを動かし、ベニートの前に進ませる。
「ほぉう。これはこれは、確かどこかの組織が開発したという、クリスタルモンスターを傀儡にする珍しいおもちゃではないですか。はぁ、まったく~……このガキやってくれやがるなぁ、おい!」
さっきまでのふざけた態度から一変して、ベニートは激怒の顔を表す。
そして、囁くような小さな声量で、しかし、ドスのきいた声色のまま続ける。
「なぁ、この俺様があの後ボスからどんな仕打ちを受けたかわかるかぁ?」
「…」
「見ろ!この片…方の…目玉がよぉ…ひひっ…目玉がよぉぉぉ!この通りぐちゃぐちゃに潰されちまったろうがぁぁぁ!」
狂ったような目付きで、彼は彼女に怒鳴りつける。
レーナは怯まずに、ベニートに言う。
「あら…私、あなたは薬はしないと思っていたけれど、こっそりキメてたのね?」
「あぁ?おいおい、てめえボスの娘だからって調子に乗ってんじゃねぇ。この俺様が薬をキメるだぁ?笑わせんな!ありゃ、馬鹿な客に高値で売り付けるための道具だぜぇ?じゃなきゃ、触りたくもねぇ。」
「…そう。潔癖は健在そうで何よりよ。」
彼女はあくまで冷静を装っているが、実際はかなり焦っていた。このベニートという男は彼女の身内の一人だからだ。
しかし、怯まず彼女は彼の態度を馬鹿にしたのだ。
「ひひっ。まぁ、本当なら殺してやるところだが、てめぇは計画に必要なんだ。仕方ない、半殺しで許してやるよ。」
「嫌だって言ったら?」
「だーかーらぁ…、逃がさねぇって言ってんだろうがーっ!」
ベニートの怒声とともに、その部下たちが次々と物陰から現れ、レーナに襲い掛かってくる。
「うぅ……、行きなさい!」
「「「「「がはっ!」」」」」
「ちっ…。化け物使ってくるたぁな…。おもしれぇなぁ、ひひっ!」
現れた敵をクリスタルモンスターを使って蹴散らす。しかし、ベニートはそれに怯まず銃をこっちに向けて撃ってくる。
ただの銃とはいえ、当たれば痛いだけじゃすまない。レーナはクリスタルモンスターを盾に身を守る。
「半殺しって言ってなかったかしら?」
「言ったさ?おいおい、まさかこんな化け物相手に銃の一つも使っちゃならねのか?」
「あら、そう聞こえたのならごめんなさい。」
本当は怖い。
しかし、流れる冷や汗を無視して馬鹿にしたような態度で挑発する。
「そんな粗末なもので、私を半殺しになるまでに出来ると思っているなんて、そんなだから私を取り逃がして、挙げ句お父さんに目を潰されるんじゃないか?って言ったつもりだったのに、私、あなたのことを過剰評価し過ぎてたわ。もっと頭が良いと思ってたのだけど。」
「こんのぉガキィーーー!」
挑発が効いたらしく、ベニートは激昂し無計画に彼女に襲い掛かってくる。
しかし、近づいた瞬間に彼女はクリスタルモンスターを前に出し、死なない程度に攻撃する。
「ぐはっ!…クソ…。おい、てめえら…、なに寝てやがる!さっさとこのガキ捕まえろ!」
「無理ね。その人たち、あなたよりきつめのダメージを負っているからしばらく動けないんじゃないかしら?」
今回のクリスタルモンスターはカマキリ型のような鋭い鎌などの武器は所持していないものの、猪型のため、突進による攻撃はかなりのものだ。
「ぐ…。ひひっ、ならよぉ…これならどうだ?」
「なっ…。」
ニヤリと笑いながら、ベニートが取り出したのは手榴弾だった。
そして、それをこちらに投げつける。その途端、爆発により辺りは爆炎と猛烈な熱風に包まれる。
「ちっ…ちったぁ効くと思ったんだがなぁ。無理だったか。」
「……」
クリスタルモンスターの影に隠れてなんとかやり過ごしたレーナは、未だ黒煙の立ち込める前方にいるベニートを睨み付ける。煙のせいで体の輪郭しか把握できないがスーツ姿にオールバックの髪型から彼だと分かる。
煙が少し晴れ、相手の表情がうっすら見える程度になると、いつ見ても悪寒を感じる不気味なその笑顔が彼女を見ていた。
「けどなぁ、やっぱり最後にはお前が俺に捕まる未来しか見えねぇ…。ひひっ。」
「だから、そう簡単には―――」
「いくさ。」
表情はそのままで、さらに加えて彼女を蔑むような目で彼はそう言った。
そして、嘲け笑うような口調で、
「簡単にいくに決まってるだろ?なぁレーナさまぁ、お前の存在価値なんてその力がなけりゃごみくず以下だってこと、この短い間に忘れたんですか?」
「……。」
急に蘇ってくるここに来るまでの記憶。震える肩や手足。唇を噛み、作った拳に力を入れてぐっと堪えるが止まらない。沸き上がってくるひとつの感情。
「ひひっ。お前には権力も何もない。そう。何もかも、だ。あるのはその力と組織から盗んだ汚れた金だけ。」
「……。」
「そんなごみがいくら抗おうが無駄な努力なんだぜ?俺たちに逆らったらどうなるか…知ってるよな?何度も言うがよぉ、その力だけは価値のあるものだ。だから、今すぐこっちに戻るんならまた道具としてボスが使ってくれる。そしたら、それをボスは誉めてくれるし、俺の目だってなんとかしてもらえる。それに、またお前の居場所ができる。いいことずくめじゃねぇか。」
「…嫌。」
後退りしながら、苦し紛れにそれだけ答える。
もう…戻りたくない。
彼女はそう思う。
彼女の周りの人間は、自分たちのすることを理解しない彼女自身には価値を見出ださず、生まれた時からあったその力だけに執着し、利用した。
それを彼女は理解しているし、自分の力を呪われたものだと思う。
実際、その力でどれだけの人が自分の意図とは関係なく不幸にされたことか分からないのだから。
故に、彼女は怒る。
あの呪われた力を使った彼らに、そして、それを良しとしてしまった自分自身に。
「なぜ断る?いつもそうだ、てめえはよぉ。ボスが誉めてくれることなんて滅多にないんだぜ?嬉しくないはずがねぇ。娘なら尚更だ。」
「そんなことも分からない人には話したって無駄よ。」
誉めてくれる?それは道具としての私でしょ?
と内心彼女は思う。
いつだって彼女の父親が彼女を誉める時は道具としてだった。
彼女には目もくれない。
そんな彼女は、自分をただの自分としてくれる存在に憧れた。
だから作ろうとした。
友達。
彼女は最初、簡単だと思った。しかし、現実は甘くはなかった。
彼女がそう思い始めたのは七歳の頃からだ。イタリアに住む同年代の子供たちが遊んでいる輪の中に彼女は入ろうとした。だが、彼女が近づいた瞬間、子供たちは彼女に気づき、その場から逃げるように別のところで遊ぼう、と遊び場を変えた。
何度も試みたが、やはり同じ結果に終わった。
子供たちでさえ彼女の正体を知っていた。当然と言えば当然だった。
そしていつしか、諦めるようになっていた。
自分には無理だと。
だが、憧れは消えていなかった。
それ故に彼女は、無自覚ながら彼女の自殺を止めたあの二人の少年を見て、その中に入りたいと思ったのだ。
彼女が初めてあの少年たちに話しかけた時、彼女は内心、不安で仕方なかった。
もちろん、それをあの二人は知るはずもない。
速まる心臓の鼓動。緊張で変な声が出てしまいそうにならないように慎重になりながらも、かつ、出来るだけ自然に話しかけた。
するとどうだろう、彼らは快く会話に交ざってくれた。
自分の正体を知らないから当然といえば当然なのかもしれなかったが、彼女は嬉しくて堪らなかった。
彼らが彼女に優しく接した時に彼女が感じた感覚はとてもむず痒くて、でも、ずっと求めていた感覚だった。だからか、自然と笑顔ができてしまった。心が気持ち良くなってしまった。
温かかったのだ。
誰かと話をして、笑って…ただそれだけのはずだったのに、満たされていくものが彼女にはあった。きっと他の人には、そんな普通のことで…と、理解してもらえず笑われてしまうだろうが、彼女はその普通に幸せを感じた。ただの彼女として見てくれる人たちがいる。ただそれだけで彼女はうれしかった。
だからもう戻らない。
戻って父親に良いように力を使われて、彼らを殺してしまわないように。
事件が終わった後にはもう会えなくなってしまうだろうが、未だ胸に残る温かい思い出を悲劇に終わらせないために。
彼女は抗う。
「まぁいいや。お前の意思に関係なく、俺たちゃお前のを連れ戻す。戦力が足りねぇなら増やしゃあいいだけのこと。」
ベニートがそう言うと、更に増援が増える。
「捕まらない!絶対に!」
「捕まえてやるさぁ!絶対にな!」
二つの意思がぶつかり合う。
この日、文京区に銃弾と爆炎が降り注いだ。




