第16話レーナという少女
第15話の話がおかしくなっていたので修正しました。ミスが多くて申し訳ございません。
「あっ、いたいた!おーい…ってあれ?どうしたの?」
部屋から出て、支部の出口に向かう途中で俺とレインに話しかけて来たのは、レーナという少女だった。
「えっ、あ…いや、何でも…。」
「……。」
「そうは見えないよ?さっきより雰囲気が暗いし。ま、聞かないほうがいいんだよね?仕事の悩みみたいだし。」
「ああ、そうしてくれると…嬉しいかな。はは。」
どうやら、さっきからのモヤモヤした気持ちが顔に出ていたせいで、気を使わせてしまったようだ。
気持ちを切り替えよう。
「で、どうしてまだここに?取り調べは終わったんじゃ…。」
「ん?君たちを待ってただけよ。」
「えっ、なんで?」
「むぅ、何か失礼じゃない?イタリアの男性ならもっと紳士な対応してくれるんだけどなぁ。」
「す、すみません。」
俺の対応、そんなに失礼だったのか?
確かに紳士な対応じゃあないけどさ。
「まぁいいわ。ねぇ、君たちこれから暇?」
「え、まぁ…」
「暇だ。」
「じゃ、今から東京を案内してほしいな。私、あんまりここに詳しくないんだ。」
「うん、そうだな。いいよ。レインは?」
「ああ、別に構わない。」
「それじゃ、レッツゴー!」
とまぁ、そんな感じで俺たちはレーナに東京を案内することになったのだった。
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「うわぁ!これが魔王城?大きい!」
「初めて見た。大きい。」
「へぇ、二人とも初めて見るのか?」
俺たちは今、魔王城にと呼ばれる建物の近くに来ていた。
レーナが見たいと言ったので、昼飯を食べてからすぐに来たのだ。
相変わらずの大きさだ。
「ここで五か国会議があるんだね。」
「うん。」
「なるほどなぁ。確かに、ここなら安全そうね。」
「伊達に30年前のクリスタルモンスターの大襲来から多くの人を守った訳じゃないからな。そりゃ、頑丈に造られてるさ。」
「さすが、その強固な守りから魔王城って呼ばれるだけはあるね。」
「見た目は、長方形の黒い建物。城っぽさがない。」
「まぁ、気持ちは分からんでもないな。」
そう。レインの言う通り、魔王城は城ではない。クリスタルモンスターから人々を守るために造られたこの建物は、物語に出てくる魔王の居城のように攻め落とすのが困難と言われており、実際30年前のクリスタルモンスター大襲来の時はクリスタルモンスターはこの建物を破壊する事も、中の人間を誰一人殺すことも出来なかった。それ故に、魔王城。
だが、しかし、俺はここを安全な所だとは思わない。日常は簡単に壊される。それを知った頃からだろう、そう思うようになったのは。
他の人がどう言おうが俺はそう思うのだ。だから、もしテロが起こってしまえば…と不安になってしまう。聞かなければ良かったのだろうか?どうせ聞いたところで、俺はこの建物の警備には呼ばれていない。無力なのだ。
「ん?どうしたの?急に黙りこんで。」
おっと、また沈んでたな。これ以上は良くない。少し深呼吸をして言う。
「いや、何でもないよ。それより他に行きたいところとかあるなら言ってくれ、連れていってあげるよ。」
「うーん、そうだなぁ…。あ、秋葉原に行ってみたい!」
「秋葉原?なんでまた。」
「だって、日本の漫画やアニメの聖地なんだよ?行ってみたいって思うのは当然でしょ?」
「気持ちは分かる。」
「えっ…」
レーナの言葉にレインも頷きながら言う。
漫画やアニメは確かに俺も好きだが、そんなものなのか?よく分からない。
まぁ、行くのは構わないんだけどさ。
「よし、じゃあ、行くか。」
「うん!」
――――――――――――――――――
レーナが秋葉原に行きたいということで、向かったのだが
「ねぇ、レイン君!これこれ!」
「なるほど。これは…。」
レーナはさっきから、店の中で、最近の人気アニメのキャラクターフィギュアたちを見つけては興奮してレインを呼び、レインはレインでそのフィギュアを見ながら感動している。しかも、さっきより二人とも仲良くなっている。
レーナはともかく、レインもこういうのに興味があるとは…。意外な発見だ。
「で、二人とも、買いたいもの、見つかったか?」
「うん!これと、これと、これ!あとこれも!」
「どんだけ買うんだよ!お金足りないだろ?」
「大丈夫、ちゃんと値段は見てるし。」
「そうか…金持ちだな。で、レインは……」
俺は思わず言葉を失ってしまう。
俺の視線の先には、レインが買い物かごに大量のフィギュアと漫画、あと小説を詰め込んでいたのだ。
「お、おい…レイン。さすがに予算オーバーじゃ…」
俺がそう尋ねると、レインは表情一つ変えずに、「大丈夫、ちゃんと値段は見てる。」なんて言っていた。
いやいや、それは無理があるだろ!明らかに、高校生が払える金額越えている。
そんなことを思っていると、いつの間にかレインはレジに並んで会計を済ませようとしていた。
「10万6000円になります。」
「カードで。」
な、あいつクレジットカードなんて持ってんのか。って、なに!?10万6000円!?いくらなんでも高過ぎだろ!
「ありがとうございました。」
会計を済ませ、こちらに向かってくるレイン。
そして、俺に向かって言った。
「うん。いい買い物をした。刃、次は…」
「行かねぇよ!買いすぎだ!」
「いいじゃない、行こうよ。」
そこにレーナも会計を済ませたのか、手提げ袋に買ったものを入れて俺に言って来た。
「はぁ、わかったよ。でも、あんまり買いすぎるなよ?」
「分かってる。」
「うんうん!」
あ、ダメだこいつら。絶対分かってない。
そのあと、俺たちはいくつかの店に寄った。
案の定、二人は大量にグッズやら何やらを買いまくった。
俺は、冷や汗を流しながらそれを隣で見ていた。もちろん、買いすぎるなとは言った。言ったのだが、あいつら大丈夫大丈夫とか言いながら買い物かごに商品を詰め込んでいたのだ。
って、何で俺が心配しなきゃならなかったんだろう。意味が分からない。
「あぁ、楽しかったぁ。」
笑顔でそう言ったのはレーナだった。
買い物が終わって日も暮れて来たので、今はその帰りだ。
「まぁ、東京の案内と言うよりショッピングだったけどな。」
「確かにほとんどそうだった。」
「でも、買い物って言っても、誰かと騒ぎながらだと私は楽しかったよ?」
「それは、良かった。付き合ったかいがあった。」
「うん。」
「いや、レイン。お前は買い物してただけだろ?」
「そんなことは…」
「あるわ!」
「ふふ。」
「ん?なんだよレーナ。笑うなよ。」
「ごめんごめん。」
ま、でも楽しんでもらえて良かったな。それに、俺も気持ちが楽になったし。
「ねぇ、また遊んでくれる?」
「え?」
「ダメかな?」
「あ、いや、構わないよ。なんだろうな、俺たち案外気が合うみたいだし。」
「俺も構わない。」
俺たちが、そう言うとレーナは今までで一番の笑顔で言う。
「良かった。じゃ、また遊ぼうね!」
レーナという少女。
彼女と出会ってまだ1日も経っていないと言うのに、俺もレインもここまで親しくなれてしまった。
きっと、彼女からにじみ出る優しさ、そして、絶えない笑顔が俺たちの距離を縮めてくれたのだろう。




