第13話事件のその後
次回投稿は12月28日の予定です。
それと、また次回予告を書いてみました。
それでは、始まります。
第13話事件のその後
お楽しみ下さい!
「まったく…、困った話だね。」
「ああ、本当困った話だよ。これのせいで娘との約束破っちまって、パパなんて大嫌い!って言われたよ…。はぁ…、まだ6歳だぞ?」
「それは辛かったね。」
「黒田。お前にはまだ俺の気持ちはわからねぇよ。」
「あの…。」
「鬼塚君、君の気持ちをわかろうとしているんじゃないか。」
「そう思うなら、まず結婚しろよ。」
「おっと、痛いところを突くね。友達に向かってそれはひどいと思うよ?」
「あの…。」
「なに言ってる。別にお前とは友達じゃねぇ。ただの知り合いだろうが。」
「本当に昔から変わらないね、君は。ほら、たしかまだ君が高校せ―――」
「あの!すみません、話が脱線してます。」
「「え?ああ、すまない(ね)。」」
「あ、いえ…。それで話の続きなんですけど…」
「うん。頼むよ桐島君。」
「はい。」
ここは、東京都江戸川区の特魔部隊支部。その応接室だ。
さっきまでしていた真面目な話から30代後半のおっさん二人による、ある意味真面目な脱線話になってしまったのを無理やりに元の話に戻した俺は、黒田さんに話の続きを頼まれる。
この場にいるのは、俺とレイン、加えて黒田さん、鬼塚さんだ。二人はそれぞれ、特殊攻撃魔導部隊の研究班、捜査班に所属している。
そして、その困った話についてだが、今さっきの脱線話のせいでどこまで話したかを忘れてしまったので一瞬にして思い出す。
昨日、俺とレインはクリスタルモンスターの出現で、その討伐を任された。現れたのは3匹の虫型だったが、レインによって一瞬で破壊。俺の初任務は息つく間もなく終了…するかに見えた。しかし、突如現れた男たちにより俺たちはピンチに陥った。
その敵が周りの人々を人質に取ったせいで俺とレインは動けずにいたが、敵の隙を狙い奇襲。そして、捕縛に成功した。
だがその後、応援部隊が敵を車で輸送している途中、突然黒いマントを被った敵の仲間とみられる者が現れた。そいつは、なんと魔法の中でも希少で高等だと言われている空間転移魔法を使い、捕まっていた奴らとともに姿を消してしまったのだ。
よし、思い出した。さあ、話を進めよう。
「それで、これなんですけど…。」
そう言って、俺は奴らが落としていった手掛かりを黒田さんたちに見せる。
「坊主、なんだこりゃ?」
「分かりません。でも黒田さんなら分かるかもと思って持って来たんです。どうですか?」
「うーん…残念だけど、私にも分からないよ。」
「そうですか…」
俺が持って来たもの。
正確には、俺とレインが現場から離れようとした時、レインが見つけたものだ。
それは、砕け散ったクリスタルモンスターの残骸の中で少量の赤い光を放っていて、手のひらサイズのひし形をしたものだった。
「まぁ、詳しく調べてはみるよ。これは、預かっておくね?」
「はい。よろしくお願いします。」
黒田さんはそう言って、それを懐にしまった。
「ったく、一体今回のはなんだったんだ?お前らの話じゃ、現場ではすでに多くの人間が拘束されていたんだろ?ってことは、それはクリスタルモンスターの仕業じゃねぇわけで、おそらく例の襲撃者どもがしでかしたこと。だが、それだとおかしな話になってくる。」
「そこにはすでにクリスタルモンスターが出現してたはず。」
そこでレインが話に入ってくる。
「ああ、そこだ。クリスタルモンスターは奴らにとっても脅威のはず。にも関わらず、逃げねぇでお前ら二人を待ち構えていたわけだ。もしかしなくても…」
「奴らとクリスタルモンスターには何かある。」
「だよな~。」
「そして、その手掛かりがたぶん、これ…だろうね。」
黒田さんは懐にしまった手掛かりの品を右手で押さえながら言った。
「何か、初任務で、これから起こるとんでもない事件の一端に触れた気がするんですけど。」
「今回のような話は聞いたことがないからね。それは十分ありえる。」
「というより、坊主、今回が初任務だったのか?そいつは大変だったな。どうだ、そっちの坊主とは仲良くやれてんのか?」
「ぼちぼち。」
「いや、なんでお前が答える。」
俺に聞いたのになぜかレインが鬼塚さんに答える。
まぁいいけどさ。
「へぇ、そうかい。思ったよりずいぶんと仲良くやれてるみたいで安心だな。」
「そうですかね。あんまり実感がないんですけど。」
「別に仲良くなったとはいってない。」
「はは、そうかいそうかい。」
本当にあんまり実感がないのだが、なぜか鬼塚さんは俺たちに生暖かい視線を送って笑う。
いや、だって共闘は昨日したけど、それだけで仲良くなったとは言わないだろ。
まぁ、前に比べたらましにはなったけど。
って、また話が脱線してる。
「まぁ、それは置いといて、今後なんですけど、俺たちも逃げた奴らを探すんですか?」
「いや、それは捜査班の仕事だ。お前らは引き続きクリスタルモンスターの相手しててくれ。だが、何時またこんなことが起こるかわからん。だから、十分気をつけてくれ。」
「分かりました。」
「ok.」
「よし、じゃあ解散と言うことで――――」
鬼塚さんの言葉でこの集まりは解散となる。
しかし、黒田さんがそれに待ったをかける。
「あ、ちょっと待ってくれないかい。」
「ん?なんだ、黒田。」
「いや、ちょっとね。」
そう言って、黒田さんは「入っておいで。」とドアの向こうにむかって言う。
すると、
「お?やっと終わったんかい黒田の兄ちゃん。遅いわ、遅すぎやで!ホンマ、ネジ錆びるくらい待ったわボケ!もっと早よ呼べや。」
なんだか少し、いや、物凄く見覚えのあるものがドアから出てきた。
そして、俺は思わずため息をつく。
「大丈夫だよ、ジンタ君。君に使っているネジはそう簡単に錆びないようにしているから。」
「いや、そう言うことやなくてな…あかん、もうええ。話進めよ。」
「ああ、そうだね。」
そう、入って来たのはジンタ。あのヘンテコロボットジンタだ。もちろん、口の悪さや関西弁は直っていない。
というより、
「あ、あの…早速質問なんですけど、なんでこのヘンテコロボットがここに?」
「あ!?誰がヘンテコや!シバクぞこらっ!」
「まぁまぁ、落ち着いてジンタ君。えっと、それでなんでここに彼がいるのかだったね?よくぞ聞いてくれました!実は、今日から彼には君たちの仲間になってもらうつもりなんだよ。」
「えっ。ってことはこれからは二人と一体でクリスタルモンスターの相手するってことですか?」
「いや、そのまま二人で活動してもらうつもりさ。ジンタ君の役割は二人を遠くから見ていて今回みたいなことがあれば、すぐに応援を呼ぶことなんだ。」
「ちなみに、見る言うてもこの魔導式小型衛星で見るんやけどな。」
「おお、何か凄そうだなそれ。」
ジンタが取り出したそれは軽く片手の中に納まるほど小さいものだった。
聞けば、作ったのは黒田さんだと言う。
俺の中の黒田さんへの評価が一段階上がった。
「でも、なんで俺たちを?」
「君たちが一番危ないからさ。」
「そんなことない。今回はなんとかなった。」
「ああ、知っている。でも、上はそれを偶然だと思っているんだ。君がまだ、人を撃とうとすると発作を起こすんだとね。」
「えっ、それ初耳なんですけど。」
そうだ。そんなの初めて知った。でも、なるほど。あの時、レインの様子がおかしかったのはのはそういうことだったのか。
「やっぱり、まだ知らなかったんだね。」
「何があったんですか?」
「それは本人の口から直接聞いて欲しいな。さすがに、私が勝手に話していい内容じゃないからね。」
俺は、レインの方を見る。しかし、目を反らされ、「まだ言えない。」と、言われてしまった。
「そうか。じゃまた話したくなったらでいいから教えてくれよ。」
何があったか気にはなったが、いずれ話してくれるのだと、この場で追求するのは止めておくことにする。
と、そこに
「いや、そこは徹底的に聞こらよ!自分このチンチクリンの相棒やろ?もっと粘れや!」
「ふんっ!」
「痛っ!何すんねんボケ!」
「お前ロボットだろうが!痛覚とかねぇだろ。て言うか、デリカシーってのが無さすぎだお前!」
「いやいや、俺は今後のことを考えてやなぁ。」
「だから、それは追い追い聞くからいいんだよ!ああ、もうお前黙っとけ。」
「ひどいわ!これから仲良くするいうのにそれはひどいわ自分!」
ジンタが俺に詰めより、レインの過去をこの場で聞くように言ってくる。
俺はひじ鉄をジンタに食らわせて黙るように言うが、この通り一向に黙ろうとしない。
本当、このヘンテコロボットは変わらない。
ほら、今度はレインに何か言ってる。
「自分も早よ言えや。でないと相棒の信頼無くすで?」
「だから、まだ話せないだけでいつか――――」
「いつかって何時言うん?はぁ、あかん。自分そんなんやから心も身長もチンチクリンなんとちゃうん?」
「刃、コイツ撃っていいか?」
「はっ、撃ってみろや!仲間にそんなこと――――」
「撃っていいよな?」
どうやら、チンチクリンという単語がレインには禁句だったようで目がマジになっている。
何か、初めて見るな、レインが怒ってるところ。やっぱり、このヘンテコロボットには人を怒らせる才能が備わっているらしい。
「いいんじゃないか?そしたら黒田さんに修理してもらう時に、少しはましな性格に直してもらえるかもしれないからな。」
「なるほど。じゃあ…」
「すんませんっ。もう言わんから許してくれ、ホンマ頼む!この前治ったばっかりなんや。てっ、ちょ、早まんな!銃下ろそ?」
「覚悟!」
「止めてぇーー!あぁぁぁぁぁぁぁ!」
こうして、俺たちに新たな仲間ができたのだった。
「いやぁ、めっちゃ焦ったわ。」
俺は、さっきのことを思い出しながら言う。
と、そこに
「何が「焦った」だ。お前、ロボットなんだからそういう感情ないだろ?っていうか、別に後で黒田さんに修理してもらえばいいんだから一発くらい撃たれてやれよ。」
「何か自分、扱いひどない?一応俺、仲間やで?それに、俺は最新の超高性能のAIなんやから、感情に近いもんはちゃんとあんねん。」
「はっ。高性能って言うより口性能じゃないのか?関西弁でベラベラ喋りまくってるし。」
「うるさいわボケ!さっきから何やねん!それとこのチンチクリンもひど過ぎや…」
「チンチクリン言うな。」
「ちょ、待って、とりあえず落ち着こ。そんで銃下ろそ。な?」
はぁ。このレイン言うガキ、ホンマ危ないねんけど…。
さっきかて、ちょっとチンチクリンとか言うただけで銃こっちに向けてきよるし。まぁ、あの時は黒田の兄ちゃんが止めてくれたからなんとかなったけど…。
「で?俺たちに何か用か?」
「早く帰りたい。」
「おお、そうやそうや。実はな、面白いもん見せてやろ思てな。」
そう。
わざわざこのガキ二人を呼び止めたんには理由がある。
「これなんやけどな?」
「ん?なんだこれ?」
「手紙?」
俺が取り出したんは、前に送られてきた良く分からんデータを紙に印刷した物。何か、次回予告とか書いてたな。
「これな、何か送られてきたねん。誰が送って来たんか分からんけど。で、これが今日送られてきたやつやねん。たぶん、送り主同じやで?」
次に俺が取り出したんは、今日送られてきた差出人不明のデータ。それを紙に印刷した物。
たぶん、差出人は同じ。
何でって、次回予告パート2とか書いてるもん。
「それで、これがどうしたって言うんだよ。」
「ん?何か俺一人でこれ読むんが急に虚しく思えてきてな。自分らと読んだら多少紛れるかな思ったんや。」
「いや、一人で読めよ。」
「ええやん。すぐ終わるし。な?」
「はぁ、仕方ないな。」
「早く終らせる。」
「んじゃ、始めるで?」
「どうするんだ?」
「ここに書かれてる文を交代で口に出して読むねん。」
「分かった。」
「うん。」
「とりあえず、俺からや。」
そう言って俺は、紙に書かれた文を読み始める。
「次回予告。桐島刃の初任務はいくつもの謎が残るまま終わってしまった。」
「ん?俺?」
「そうやねん。何でか自分らのこと書かれてんねん。ま、気にせんと続けよ。ほら、次自分の番やで?」
「お、おう。えー、なになに?物語はまだまだ続く。舞台は変わらず、東京都江戸川区。ゴールデンウィーク中にも関わらず、桐島刃はボッチの生活を送っていた…っておい!」
「あははははははははは。すまん、笑いこらえられへん。」
「うるさい!ほら次レイン。」
「うん。刃は気晴らしに一人映画に行く。しかし、そこでまたしても事件が勃発。」
「…おい。嘘だよな?うん、絶対嘘だ!俺はボッチじゃない!」
「いや、案外ばかにできへんで?この前のデータも当たってたし…。」
「お、俺は信じない。信じないったら信じない!」
「早く進めよう。」
「お、おう。そうだなレイン。」
「じゃ、続きや。そこで待ち受けているものとは!」
「次回、新たな出会いと不穏な影!」
「Don't miss it!」




