第12話 初めての共闘
さぁ、いよいよ二人の共闘です。果たして、しっかり共闘出来るのでしょうか。
ぜひ、お楽しみください!
「さて…じゃあ、いっちょやりますか。」
「刃、無理しなくていい。」
「はっ。どの口が言てっんだか。」
やっと正気を取り戻したレインが俺の心配をしてくる。
こいつ、さっきまで無理しまくっていたくせに本当によく言うな。
ま、でもいつもの調子に戻ってきたみたいだからよしとするか。
俺は、レインを横目で見て言う。
「レイン。さっき言った通り俺が隙を作る。だから、その後は頼んだぞ。」
「分かった。」
分かった、か。つまり、やっとこいつと共闘できる訳だな。ここまでくるのに長かったな。
って、なんでちょっと嬉しいんだ?
いや、今はそんなこと考えている暇はないな。
俺たちは敵から襲撃を受けた。あいつらが何者なのか、そして、どんな目的があって俺たちを含むこの場の全員に銃を向けているのかは分からない。こいつらはレインがクリスタルモンスターを倒した後、急に現れたんだ。けど、すべきことは同じだ。この場の全員を助けてハッピーエンド。
甘い考えなのも、力不足なのも分かってるさ。
敵がそれを聞いたらきっと笑うんだろうな。でも、それがどうしたというのだ。
馬鹿は俺だけじゃない。俺の隣にもちゃんといる。
俺は、目の前の敵を見る。
すると敵は不敵に笑いながらこう言う。
「で、もう始めてもいいよなぁ?悪いがそろそろ時間が押してきてんだ。わかるよな?」
「つまりは、今やってるのは茶番で、お前らがすべきことは他にあるってことか?」
「そういうことっ。何を話してたのかは知らねぇが、お前らには苦しんで死んでもらうぜ。」
「あっそう。待っててくれてありがとな。」
「別にいいさ。この状況で出来ることなんてお前らにはねぇんだからよ。」
たしかに、あいつらからしてみれば俺たちは無能なガキだ。なんたって、この会場にいるすべての人間があいつらの人質なんだからな。その上、敵のうち二人は武器を親子に向けた状態だ。俺たちが何かしようとすれば間違いなくあの親子は殺される。敵が余裕を見せるのは当たり前だと言える。
だが、お前らは知らない。その余裕は俺たちにとって、お前たちを倒すために必要な刃になりうることを。
俺は動かない。いや、実際はもう準備は整っているから今は時機をうかがっているのだ。
敵は銃の引き金に指をかける。小銃を突き付けられた親は目を閉じ、諦めの顔をみせる。
「じゃあ、まずは一人目だ。指咥えて見てろ、ガキども。」
だが、その瞬間、俺は唱える。
「照らせ!光波!」
「「「「「「「「うわっ!」」」」」」」」
敵は突如俺の刀から発せられた光に目を焼かれる。
光魔法「光波」。最近覚えた光属性の初級魔法。その魔法は単純に光を生み出すだけのもの。しかし、さっきまでずっと溜めていた魔力で生み出したそれは、閃光弾顔負けの光量をもつ光になる。
そして、その光は勝利に繋がる隙を作る。
「今だ!」
俺の合図とともにレインは、魔力銃を構え、そして撃つ。
その弾丸は狙い通り敵の足や肩、腕を掠める。
直撃はしていないものの、当たった者はその痛みにうめき声を上げ、尻もちをついたり、膝を地面につける。
一時的とはいえ、視力を失ったあいつらには何も見えていない。人間にとって、見えないというのは恐怖でしかない。自分の周りに何があるかを確認出来ない闇の中にいるのと同じなのだ。そんな状態のやつらが攻撃を受ければ当然そうなる。
上手くいった。そう思っていると敵の一人が叫ぶ。
「このクソガキがーーっ!ああ、痛ってえーー!ぶっ殺してやる!やれっ!」
やれ?一瞬考えてしまった。しかし、すぐに敵の意図が分かり冷や汗を流す。
俺の右斜め前方の建物の屋上から光るものが見えた。銃弾だ。
くそっ!間に合え!
俺は、刀で弾丸を防ごうとする。
ドパンッ
カチンッ
俺の隣から銃声が聞こえた。そう思った瞬間、俺を狙った弾丸は弾かれた。
「え…」
隣を見てみる。
やはりというか、俺を敵の銃弾から守ってくれたのは、うちの相棒だった。
俺は、一瞬の凍りつくような緊張が解けて、安心している。だがしかし、なぜか感じるとてつもない敗北感。悔しい。
理由は明白だ。
隣では、レインのやつが何事もなかったかのように真正面の敵を見つめていたのだ。
く、まさかこのタイミングで、こいつとの実力差を感じる羽目になるとは…。
上手いことを言うわけじゃないが、二重の意味で不意打ちだった。本当、物凄く悔しい。強くなろう。
俺はこの時、拳を握りしめ、一刻も早く強くなることを再び心に決めた。
それを横目で見ていたのだろう、レインが尋ねる。
「どうした?」
「あ、いやなんでも…」
「えっ、でも…」
「な、何でもないったら何でもない!」
「そ、そうか…」
「ああ。よしっ、気を取り直して任務だ任務。あ、それと…その…攻撃防いでくれてありがとうございました…。」
「別に気にしなくていい。」
何か締まらないやり取りだなぁ、と思いつつもきちんとレインにお礼を言っておく。
劣等感と礼儀は別物だ。
と、そんなことを思っているとレインが指を指して俺に言う。
「それより、敵。」
レインが指した方を見ると、何人かの敵は視力を取り戻しつつあるようで、立ち上がろうとしていた。
まずいな、早く捕まえないと。でも、もしかしたら他にも隠れている奴らがいるかもしれない。迂闊に動いたら、俺たちだけじゃなく、他の人たちも撃たれかねない。
いや、待てよ?
俺は、思い付いたことをレイン話す。
「レイン。お前、魔力感知ができるんだよな?」
「できる。」
「なら、さっきみたいに俺たちを狙っている奴らを調べられるか?」
「半径50メートルまでなら、できる。」
「よし。じゃ、調べてくれるか?」
レインは、目を閉じ意識を集中させる。
「いた。三人。一人目はさっきのところ。二人目は左斜め前方のあの建物。三人目は真後ろの建物にいる。」
「分かった。じゃ、援護頼むぞ!」
そう言って、俺は走り出す。
魔法はまだ苦手だ。けど、修行のおかげでギリギリ実戦で使える程度にはなった。
淡い光の魔力を纏わせ、身体強化を体にかける。
そして、一気に加速する。
すでに敵のうち三人は立ち上がっていた。
だが、それなら何とかなる。
「このクソガキ!死ね!」
小銃を俺に向け、敵の一人が引き金を引く。
キィーン
俺は刀で、放たれた弾丸を防ぐ。
そして、敵に近づき攻撃する。
「はーっ!」
「ぐはっ!」
攻撃を受けた敵はその場で崩れ落ちる。
もちろん、みね打ちだ。
続けて、もう一人を倒そうとする。
と、その時。
ドパンッ
カチンッ
俺を狙った弾丸をレインが魔力銃で弾く。
さすがだ。
「ナイスショット」
言いながら、目の前の敵をみね打ちで倒す。
「気を抜くな。」
「へいへい。」
レインの言う通り、まだ気を抜いてはいけない。
ドパンッ
カチンッ
ほら、また撃ってきた。レインはそれをすかさず弾く。
狙撃手って本当怖いと思う。まぁ、うちには誠に遺憾だが、凄腕の相棒さんがいるから安心はしている。安心は。
「じゃ、引き続き頼む。はっ!」
レインにそう言って、さらにもう一人をみね打ちで倒す。
そして、懐から魔力銃を取り出し構えて言う。
「ちょっとでも動いたら、撃つ。」
それを見た俺の下に倒れている敵が言う。
「へっ、やってみろよ。」
「ああ、伝え忘れてたけど俺、銃撃つの下手だから、本当にどこ撃つか分からないぞ。」
「な、ふざけんな!お前、特魔部隊だろ?嘘に決まってる!」
「じゃ、試してみるか?」
俺の発言にそいつだけでなく周りの敵も一般人も、レインでさえも若干冷や汗をかいている。
っておい!さすがにこんなに大勢にそんな顔されたら俺も傷つくぞ!
只でさえ、脅しなんて慣れないことをしているのに、勘弁して欲しい。
と、俺が一瞬気をとられていると
「だぁーーっ!」
さっきまで、俺の下でうずくまっていた奴が俺に掴みかかる。
俺はそれをかわして、首に手刀をくれてやる。
「がはっ!」
俺の手刀に敵は再び地面に顔をつける。
「こいつ、俺が言ってたこと無視しやがった。どれだけ必死なんだよ。」
「こいつらは危険。早く拘束を。」
「ああ、そうだな。」
俺たちは懐に隠していた拘束用の魔道具を取り出す。これは、魔力を注ぐことによって鎖ができ、それで対象を捕縛するという優れもの。
正直、主にクリスタルモンスターと戦う特魔部隊はこの魔道具をあまり使わない。
だから、初任務でこれを使うなんて俺は思いもしなかった。
「よしっ!捕縛完了!」
俺とレインは敵の捕縛を終えた。
しかし、レインは俺に向かって言う。
「まだ終わってない。さっき隠れてた奴らを捕まえる。」
「あ…、そうだったな。」
しまった、忘れていた。
しかし、それだと面倒だな。捕まえていない敵はあと三人。そいつらは、レインの魔力感知じゃないと遠くて見つけられない。それに、今ここを離れるわけにはいかない。
「なぁ、それって応援部隊に任せたらいいんじゃないか?」
「いや、それだと遅い。逃げられる。」
「弱ったな。手の打ちようがない。どうするんだ?」
「こうする。」
レインはそう言って魔力銃に手をかざす。
「Form change.ライフル。」
すると、銃は形態を変化させ、ライフルになってしまった。
「なっ…嘘だろ?なんだよそれ!」
「俺の魔力銃は特注で作ってもらった。だから、いろんな銃に変化できる。」
「え…、もうそれってチートって奴なんじゃ…」
「ん?何か言った?」
「あ、いやなんでも…。」
うん。もう分かってる。これ以上突っ込んでも虚しくなるだけだって事くらい。だから、もう何も言わない。大事なことだからもう一度。もう何も言わないぞ!
と、レインはライフルを構え、一発目、二発目、三発目と弾丸を放つ。
そして、その弾丸は隠れていた敵に命中したらしい。
なぜなら、レインはこっちを向いて俺に言ったのだ。
「missioncomplete.お疲れ、相棒。」




