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気分屋

作者: 羽愛風花

小説を初めて書きました。まだまだ未熟な文章ですが、読んでいただけると幸いです。

 私が生まれたときから携帯電話はあって、小学生のときには周りにスマートフォンを持っている人が増え、高校生になるとスマートフォンを持っているのがあたりまえになった。クラスのみんな、もっと言えば、学年、学校のみんなとなんの躊躇もなく見えない何かでつながっている。知らない人とも簡単につながることができる。みんなが共有、共感を求めて四角い物体に夢中になっている。「そんな状況、気持ち悪い。」と言いつつ、私もやっている。そうしなければ生きていけない。いや、生きていけないことはないかもしれないが、とりあえずみんなに合わせることが1番妥当だと自分に言い聞かせ、気持ち悪い行動をとっている。たまに何かを誰かに言いたいときがある。そのとき、私は四角の物体に向かう。でも、思い通りに何かを誰かに伝えられたことは一度もない。勘違いされることや自分の意見を批判されることを恐れて、文章を練りに練っているうちに伝えたかったこととは少し変わってしまう。そして、同じような意見の人の書き方を見て、そうそうこう書きたかったんだ、と共感の意思を示すと同時に、少し嫉妬する。きっと私は四角の物体を使うことに向いていない。やめたほうがいいのだろう。私はたまに、もっと昔に生まれていたらな、と考える。スマートフォンなんてなくて、友達とすら簡単につながることができず、恋人と連絡を取りたいときに親がでるんじゃないかとドキドキしながら電話をするあの時代に生まれていれば、こんなに息苦しく、何故か少し寂しい思いをしなくてよかったのではないかと思ったりする。なぜ親世代の人はコンピュータを使えなくても「あーわからない!」で済むのに、私たち世代の人がコンピュータを使えないと「そんなこともできないのか。」と見限られてしまうのか。私には理解できないのである。不公平だ。ふと、スマホを見る。「明日一緒に行く?」彼氏からだ。「明日?どっちでもいいよ。」付き合って2ヶ月も経っていない。お互い絵文字なし。用があれば連絡を取り合うというスタイルのため、毎日連絡を取ることはない。祝うのはお互いの誕生日ぐらいだろう。友達からは心配される。でも、これくらいがちょうどいい。ベタベタしすぎは自分たちも第三者も気分がよくない。それに、この先の人生で振り返ったとき封印したくなる過去を作るのは出来る限り避けたい。彼とは同じクラスで、たまたま席が前後だった。一言で言えば生きるのが上手い人。必要最低限のことだけをして生きている雰囲気が気に入った。彼はスマートフォンを必要以上に使わない。友達と連絡を取るときにだけ使っていたし、自分が友達だと思っている人しか連絡先を交換していなかった。自分にはない強さを持っているのが、うらやましかったし、そばにいると安心した。「どっちでもいいってなんだよ笑どっちがいいか言ってー」「んーっと、じゃあ一緒に行く。」「オッケー。じゃあいつものところで!」「はーい、おやすみ。」「おやすみー」彼とは毎日一緒に登校するわけではない。付き合いだしてすぐ、彼に「毎日一緒に登校しない?」と誘われた。私は気分屋で、朝は誰とも話したくないと思ってしまう日がある。誘ってくれた瞬間はとても嬉しかったが、正直、毎日はちょっとな…と思った。でも、こんなに自分勝手な理由で断ると申し訳ないと思って、「そうしよう!」と言った。私は出来るだけ朝から元気に振る舞おうとした。彼との登校はとても楽しかったし、彼となら毎日でも大丈夫かなと感じてきていた。しかしある日の登校中、彼が「毎日はやめる?」と言ってきた。私は少しドキッとした。その日はあまり気分が上がらない日だった。「どうして?」「見たらわかるよ。」「ごめん。一緒に行きたくないわけじゃなくて…」「大丈夫。わかってるって。」そう言った彼はとても優しい顔をしていた。私が彼に色々なことを話すようになったのは、この日からだと思う。家族や友達に話せないことも彼には話せたし、なぜだか隠し事はすべてばれている気がした。彼はいつも私の話を静かに聞いてくれて、私に寄り添ってくれる。あの日の優しい顔を思い出し、明日は何を話そうかな、明日の約束をすぐに出来るからやっぱりスマホがある時代に生まれてよかったかも、なんて思いながら、私は眠りについた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 混乱と純粋と とても素敵な作品でした。 ありがとうございました。
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