第30話 颯爽登場、正義の味方――ギルド・オブ・セブンソード その1
■登場人物紹介
・ヨッシー皆本
ギルド七天抜刀隊のギルドマスター。ギルドのメンバーは7人。
黒髪ポニーテールの少女。
個性的なギルドメンバーをまとめるために、日々苦労している。
剣の腕前は抜群で、名実ともにギルドのエース。
口うるさいが、何があっても仲間たちだけは守ることを心に誓っている。
・フウナ数見
ギルド七天抜刀隊のメンバー。
金髪ショートツインテールのかわいこちゃん。
魔法少女に憧れていたので、あえてミニスカ。
しかし、彼女のパンツを見たら50円取られます。
この世界に円はあるのか……?
・佐々木イジロウ
ギルド七天抜刀隊のサブマスター。
黒髪を長めに伸ばした男の子。イケメン。
剣の腕はギルドの中でナンバーツー。
彼の刀の攻撃力は非常に高く、必殺技は反則級。
・ムサイ宮本
ギルド七天抜刀隊のメンバー。
赤毛を逆立てた、ツンツン頭の少年。
佐々木イジロウの大親友。
ギルドの中では精神的な支柱になっている。
・ボクチン塚原
ギルド七天抜刀隊のメンバー。
緑色の髪をおかっぱに切りそろえた男の子。
常に口を動かしているムードメーカー。
というか、文句たらたらの甘えん坊。
罰ゲーム用の『必殺・白濁液』を常に持ち歩いているヘンタイ。
・バッキー滝沢
ギルド七天抜刀隊のメンバー。
ボクチン塚原の親友。
ハゲは性欲が強いと聞いたので、あえてスキンヘッドにしている。
エロ大好き。
・柳生ムネニク
ギルド七天抜刀隊のメンバー。
ボクチン塚原とバッキー滝沢と、3人で行動することが多い。
体格のいい、金髪ロングツインテール。
かなり奇抜な外見。というか、ドヘンタイ。
普段は口数が少ないが、けっこう頭、いっちゃってます。
昼下がりの曇り空の下、7人の旅人が北に向かってのんびりと歩いていた――。
そこはクランブリン王国の南の端にある国境から、徒歩で数時間ほどの山道だった。幅の広い土の道の左右には雑草が生い茂る空き地が広がり、その先にはどちらにも深い森が見える。そして森のはるか奥には高い山々が峰を連ね、まるで壁のようにどこまでも伸びていた。
7人の旅人はすべて若い男女だった。
いずれも10代半ば過ぎで眉目は秀麗なのだが、中にはとても個性的な髪型をしている者もいる。長い黒髪を頭の後ろで一つにまとめた少女と、金色の髪を頭の左右で短い房にした少女は普通の方だ。黒髪を肩まで伸ばした少年と、短い赤毛を逆立てた少年、それと緑色の髪をおかっぱに切りそろえた少年は少し珍しい方かもしれない。髪の毛をすべて剃り上げた少年はおそらく人目を惹くだろう。そして長い金髪を頭の左右で結わえた筋肉質な少年は、奇異の目で見られることは間違いない。
そんな7人に共通した特徴は紫色の布だった。
2人の少女は紫色のリボンで髪を結わえ、全員が腰に提げた刀の鞘には、鍔に近い部分に紫色の細い布が巻かれている。おそらく仲間の証なのだろう。防寒用のマントを羽織った7人はいずれも軽い手荷物だけを携えて、ひたすらのんびりと北に向かって歩いている。すると不意に緑髪のおかっぱ少年が声を上げた。
「ねぇ、ギルマスぅ~。次の村まであとどれくらぁ~い? クランブリンに入ってから、もう3時間ぐらい歩いてるんですけどぉ~?」
「うっさい、塚原。そんなこと私が知るわけないじゃない」
少し甘ったれた響きがある少年の声に、先頭を歩く長い黒髪の少女はぶっきらぼうに言い放った。
「初めてきた土地なんだから、どこに村があるかなんてわかるわけないじゃない。スマホで地図を検索できるわけじゃないんだから、無駄口叩いてないで黙って歩きなさい。これ以上文句言うなら、そこら辺に埋めて捨てていくわよ」
「はぁ~い、ご褒美ありがとうございまぁ~す」
怒気を含んだ少女の声に、なぜかおかっぱ少年の塚原はニヤニヤと笑いながら周りの男子に目を向ける。するとロングツインテール金髪男子とスキンヘッド男子は即座に親指を立ててうなずき、黒髪男子と赤髪男子はニヤリと笑って肩をすくめる。
「まったく……。うちの男子どもはどうしようもないアホばかりね」
先頭を歩く少女は首だけで振り返り、男子たちの仕草を見てため息を吐いた。すると金髪の短い房を揺らして歩く背の低い少女が口を開いた。
「でもヨッシー。たぶんあと3時間ほどで日が暮れちゃうよ? あたしが上から見てみようか?」
「大丈夫よ、フウナ。野宿になっても私がいれば雨風は防げるからね。それにこんな明るいうちに空を飛んだら目立っちゃうじゃない」
「それはたしかにそうだけど……」
細身の金髪少女フウナはわずかに顔を曇らせて、おそるおそる黒髪のヨッシーにさらに言う。
「でも、シンプリアのおうちを出発してから、もう10日でしょ? あたし、そろそろちゃんとしたベッドで寝たいんだけど……」
「そうだそうだぁ~。ボクチンもベッドで寝たぁ~い」
おかっぱ少年塚原がフウナの意見に便乗して再び声を張り上げた。すると塚原の左右を歩くスキンヘッド少年とロングツインテール少年も両手を上げて賛成する。
「おいどんもおいどんも~」
「わがはいもわがはいも~」
「よーし、いい度胸ね、一年の三人組ぃ――」
ヨッシーは両手を上げて抗議している男子3人を歩きながらにらみつけた。
「つまり滝沢と柳生も、塚原と一緒に埋まりたいってわけね?」
「ごめんなさい。おいどんはまだ死にたくないです」
「わがはいもごめんなさい」
ヨッシーが力をこめて両目を見開いたとたん、スキンヘッドの滝沢とロングツインテールの柳生は速攻で頭を下げた。しかし塚原だけはニヤニヤと笑いながらさらに言う。
「ボクチンは謝りませぇ~ん。むしろヤレるもんならヤッてみろぉ~。おらおら、どうした、かかってこいやぁ~、ギルマスさんよぉ~」
そのとたんヨッシーは塚原に近づき、塚原のマントの内側に手を突っ込んだ。そして腰に提げてあった小さな革袋をひったくり、塚原をじろりとにらむ。その瞬間、塚原はいきなり土下座して謝った。
「――大変申し訳ございませんでした。ボクチンがわるうございました。もう生意気なことは言いませんので、どうか殺さないでくださいませ」
「……バカ」
ヨッシーは冷たい視線で足元の緑色の髪を見下ろした。そしてその頭に革袋を放り捨て、再び北に向かって歩き出す。するとそれまで無言だった短い赤毛の少年が塚原に手を差し出した。
「どうやらおまえらは、ヨッシーの扱い方がまだわかっていないみたいだな」
「宮本パイセン……」
塚原は赤毛の宮本の手をつかんで立ち上がり、革袋を拾って腰に戻す。
「村が見当たらなくて一番イラついてんのはヨッシーだ。あいつは責任感が強いからな。オレッチたちが長旅で疲れているのをわかっているから、よけいイラついてんのさ。見ろよ、あの背中を」
宮本は前を歩くヨッシーの細い背中を指さした。よく見ると、わずかに首を前に突き出して背中が丸くなっている。
「ヨッシーは機嫌が悪くなると体が少し前のめりになるんだ。ああいう時は話しかけない方がいい。100パーセント怒鳴られるからな。だから見ろよ。ジロウなんか――じゃなくて、イジロウなんか一言もしゃべらないだろ?」
「ああ、そう言えば、佐々木パイセン――サブマスも黙ったままっすね」
塚原は肩まで伸ばした黒髪の少年を見つめて呟いた。そして宮本と一緒に歩き出しながら言葉を続ける。
「でもボクチン、静かなのってマジで苦手なんすよねぇ~。せっかく見知らぬ国まで出稼ぎに来たんだから、もっとこう派手なイベントがドワーッて発生してくんないと――」
「――ウワァーッ! たぁーすけてくれぇーっっ!」
「……はい?」
いきなりどこか遠くから男の絶叫が響いてきて、塚原は思わずパチクリとまばたいた。同時にヨッシーとフウナは前方に目を凝らし、黒髪少年の佐々木は周囲に視線を飛ばす。
「佐々木っ!」
「周囲は異常なしでござる」
鋭く放たれたヨッシーの声に、佐々木は淡々と言葉を返す。続けてヨッシーはフウナに顔を向けて空を指さす。
「フウナっ!」
「はいはーい――飛翔剣っ」
フウナは即座に青い鞘から刀を抜き放った。同時に青い刀身が淡く輝き、フウナの体が宙に浮く。フウナは金髪のショートツインテールを揺らしながら数十メートルほど上昇し、すぐに地上に降り立った。
「なんかこの先で馬車が襲われているみたいだったよ。あれは盗賊なのかなぁ? たぶん20人ぐらいで3台の馬車を囲んでいたから、商人とかだったら絶対勝てないと思うけど――って、あんたたち? なにやってんの?」
フウナはふと横を見た。すると柳生と滝沢と塚原が、なぜか地面に這いつくばっている。しかも3人はフウナと目が合うとニタニタと笑いながら立ち上がり、一斉に頭を下げた。
「「「ごちそぉさまぁーしたぁーっ!」」」
「……あ、そゆこと。あんたたち、あとで50円ずつ罰金ね」
フウナは呆れ顔で丈の短いスカートを手で押さえ、ヨッシーに体を向ける。
「で、どーする、ヨッシー? 今からなら、まだ間に合うと思うけど」
「そうねぇ……」
ヨッシーはあごに手を当てて考えながら口を開く。
「馬車が3台か……。たしかにもうすぐ夕方だし、馬車があれば日暮れ前にはどこかの村にたどり着けるかもね……」
「だったら、行動は早い方がよいでござるな」
ヨッシーの横に立った佐々木が言葉で軽く背中を押した。その意見にヨッシーは一つうなずき、勢いよく声を放つ。
「ぃよしっ! それじゃあみんな! 戦闘よ! 今回の敵は馬車を襲っている方! 私たちは正義の味方だからね! 颯爽と助けにいってパパッと蹴散らすわよ! ド田舎の山賊相手にケガなんかしたら承知しないからねっ!」
その威勢のいい指示に、他の6人は声をそろえて返事をした。
「よし! それじゃあフウナっ! 速攻で運んでちょうだい!」
「あいあーい、そんじゃいくよぉ~――飛翔剣っ!」
フウナは先ほどより鋭い気合いを込めて刀を素早く抜き放つ。すると青い刀身が強く輝き、7人全員の体が宙に浮いた。さらに次の瞬間、全員が高速で空を飛んだ。7人の少年少女はマントを風にはためかせて空を駆け抜け、あっという間に馬車を取り囲む盗賊たちの前に降り立った。
「なっ!? なんだなんだぁ!? テメーらいったい何者だぁっ!?」
20を超える武装した男たちは、突如現れた7人を見て目を丸くした。しかしすぐに顔を険しくしかめながら、口々に怒りの声を張り上げる。
「敵か!? 敵だな!? テメーら敵だな!?」
「ちょっと魔法が使えるからって調子こいてんじゃねーぞっ、クソガキどもがぁっ!」
「オレたちは働かずに楽に生きていきてーんだぁっ! こちとら必死なんだよぉーっ!」
「そうだぁっ! 邪魔すんじゃねぇーっ! 猫が家でオレの帰りを待ってんだよぉーっ!」
「オラァーッ! 先にあいつらヤッちまうぞぉーっ! 全員で一気にぶっ殺せぇーっ!」
剣や斧やナイフを握りしめた男たちは、いきなり目を血走らせながらマント姿の7人に襲いかかった。しかしヨッシーは敵性武装集団を冷静に見据えながら淡々と指示を出す。
「七天抜刀隊――戦闘準備」
そのとたん、6人はヨッシーの左側に素早く整列し、全員同時にマントの留め金を外して地面に落とした。そしてヨッシーから順に名乗りを上げて刀を抜き放っていく。
「ヨッシー皆本、妖刀・薄緑抜刀――」
「フウナ数見、妖刀・空姫抜刀――」
「佐々木イジロウ、妖刀・黒光長竿抜刀――」
「ムサイ宮本、妖刀・桃竹鳩宗抜刀――」
「ボクチン塚原、妖刀・光陰裏卜珍抜刀――」
「バッキー滝沢、妖刀・爆血村々抜刀――」
「柳生ムネニク、妖刀・満臭萌肉丸抜刀――」
緑、青、黒、桃色、黄色、紫、赤――色とりどりの妖刀が滑らかに次々と鞘から引き抜かれ、陽の光を浴びて淡い輝きを放ち始める。
「七天抜刀隊――戦闘開始っ!」
20人以上の男たちが目の前に迫った瞬間――ヨッシーの凛とした声が放たれた。同時にヨッシーは鋭く踏み込み、襲いかかってきた2人を瞬時に切り伏せた。
フウナは斜め上空に向かって急上昇しながら1人の首をはね飛ばし、宙から敵を攻撃する。宮本は桃色の剣を連続で激しく振り下ろし、2人まとめて叩き伏せる。塚原と滝沢と柳生は3人で連携しながら1人ずつ囲んで確実に始末していく。そして敵の残りが10人を切ったとたん、佐々木が全員に声を飛ばした。
「全員っ! 散開するでござるっ!」
瞬時に全員が佐々木の正面から退避した。同時に佐々木は黒く光る長刀を構え、鋭い気合いを一気に放つ。
「次元剣っ! 必殺っ! 次元斬――つばめ返しぃぃーっっ!」
閃光連斬――。
佐々木は一歩踏み込み連続で長刀を振り抜いた。瞬間――残りの敵すべての体が縦、横、斜めに分断されて血を噴いた。まさに瞬殺の必殺剣――。男どもの肉体は肉塊となって土に転がり、血は地に赤い花を咲かせて散った。




