空飛ぶヒーロー
『ヒーロー渋谷に現る』
今日のトップニュースだ。どのニュース番組でもこの話題ばかり。目撃された渋谷にレポーターが殺到している。
『今度は恵比寿で目撃された様です!』
『表参道の空を飛んでいたとの情報です!』
『中目黒だ中目黒!早く行って!』
馬鹿だなレポーターは。ヒーローなんかに振り回されて。どうせどっかの誰かが渋谷に現れて、模倣犯がそこら中にいるだけだろ。
折角楽しみにしていたお笑い番組をこんな調子の特番に潰されて、俺は機嫌が悪かった。
ヒーローなんかに興味が無く、俺みたいに機嫌を損ねている奴らが何人いると思ってやがる!
「ちょっとちょっとアンちゃん!窓開けてぇな!」
俺の部屋の窓に爺さんがへばり付いている。白いヘルメットを被り、白いマントを風に靡かせ、白タイツで全身を包み、白いロングブーツを履いている。
「あんたひょっとしてヒーロー?」
「え?何で分かったんや?」
「まぁ・・見た目かな」
「賢いなアンちゃん。せや、ワシ、ヒーローやねん!」
「俺のお笑い番組返せー!」
俺のパンチが窓を突き破ってヒーローに直撃した。
『速報です!原宿の空をヒーローが飛んでいきました!』
そう言えば、窓にへばり付いていたヒーローは殴られた後が沢山あった。
だから言っただろ?ヒーローなんかに興味が無く、俺みたいに機嫌を損ねている奴らが何人いると思ってやがるんだって!
今日は少し風が強めだ。俺のパンチもなかなかのものだし、あの方向だと新宿を越えて新大久保辺りまで行ったかな?
『新情報!池袋の空にヒーロー発見!』
俺のパンチは思ったより凄い様だ。