89-バジリコ。
先輩の大会明けの月曜日。
「後輩くん!何ですぐ帰っちゃったの?!」
「先輩がうるさそうだったからです」
「酷い……」
「蘭ちゃんが居たからいいじゃないですか」
「後輩くん居ないから勝手に2人に今度後輩くんスイーツ食べさせるって約束しちゃったよ?」
勝手に何してんだ……。当分会うことないでしょうが。
「なんで居ないのに勝手に決めてるんですか」
「いや〜なんていうか流れでね?」
「使えない先輩ですね。だから先輩は先輩なんですよ」
「悪口な気がするよ」
「どうでしょうね?」
貶してるのは確かだけど。
「まぁ、今度だから別にいつでもいいんじゃない?」
「雑ですね」
「正確にいつとは言ってないからねぇー」
詭弁だ。そのままお流れになってくれた方が楽でありがたいんだけど。
「なら来年辺りで頼みますね」
「それは流石に遅すぎじゃないですかね後輩くんよ……」
いつでもいいっていったじゃん。
「ならそのうちで」
「じゃそういうことでよろしくね。てことでケーキ食べよっか?」
そう言って紅茶の用意を始める先輩。
「バイオリンに触れすらしないんですね」
「終わったばっかなのに嫌だよ〜。わたしは優雅なティータイムに酔いしれたいのよ」
「優雅の要素ないですけどね」
「これにピアノの音でもあれば少しは優雅さ出るのにね」
「自分で弾けばいいんじゃないですか?」
「そっか。なるほど後輩くん頭いいね」
「先輩は頭悪いですね」
「なんで?!」
「自分で弾いてたら食べれないし飲めないしそもそもティータイムじゃ無くなりますからね」
「あ、たしかに……。嵌められた」
別に誰も嵌めてない。勝手に馬鹿を丸出しにしてるだけですよ。
「今日はこれですよ」
箱から紙皿に取り分けて先輩に渡す。
「オレンジと抹茶?」
「違いますね」
「緑で抹茶じゃないの?ならミントとか?」
「食べればわかりますよ」
「まぁそっか。いただきまーすっ!」
作っておいてなんだけどこれ苦手なんだよね。だから今日はたくさんあるから遠慮なく食べさせよう。
「ん?なんか食べたかとある味だ……」
ケーキに鼻が付きそうなくらい近づけて匂いを嗅ぎだす。
「食べたらすぐわかると思うんですけどね」
匂いもだけど味も大概だと思うけど?
「正解は?」
「バジルですよ」
「え?バジルってあのバジル?」
「どのバジルかは知りませんけどバジルですね」
「なんでケーキにしちゃったの」
「なんでと言われましてもそういうレシピですから」
「確かに斬新だけどね?まぁ不味くはないけど……」
「美味しくもないと?」
「これ好きな人いるのかなぁ」
「独特ですからね」
「まぁ食べる分には美味しいからいいけどたくさんはいらないかな?」
「せっかくたくさんあるのに」
「後輩くんが嫌いだから残飯処理でしょ?」
「よくわかりましたね」
「後輩くんの好みがわかってきてるからね」
「無駄なスキルですね。まぁ要らないなら処分するからいいですよ」
「それなら勿体無いから食べるよ!蘭と一緒に食べる!」
「ならこのまま持って帰ってください」
そう言って箱ごと渡す。
「ありがと。それで後輩くん」
「はい。なんですか?」
「わたし食べたいものがあるだけど」
「聞くだけなら聞きましょうか」
「プリン!」
「プリン」
「カスタードプリン」
「カスタードプリン」
「そう!」
「コンビニで120円ですよ?」
「……」
そんな最低な人を見る目をしなくても。せっかくの可愛い顔が台無しですよ?
「なんで突然プリンなんですか?」
「コンビニとかで買うプリンとケーキ屋のプリンって全然違うじゃない?」
「まぁ違いますね」
「だから後輩くんのを食べちゃいたくなったわけですよ?
「全然言ってることの脈絡が無いんですが……」
「つまりプリンが食べたいってこと!!」
それはわかってるよ。プリン持ってくるのがめんどくさいじゃん。
「プリンならなんでもいいんですね?」
「コンビニで買ってこないでね?」
「ちゃんと作りますよ」
「ならいいよー」
「明後日でいいですか?」
「おっけー!!ちょっとわたし今日忙しいからもう帰るね?明後日ちゃんとプリンよろしくね?」
「珍しいですね。わかりましたよ」
「わたしだって忙しい時くらいあるよ!!じゃあね後輩くんっ!」
慌ただしく帰って行ってしまった。
大会のことなのかな?先輩の忙しいはろくなことしてない時だったりして。
まぁ先輩のことなんて考えるだけ無駄だし帰るか。
明後日のプリンも考えないといけないし。




