85-旋律。
蘭ちゃんと一緒にロビーへ移動して先輩を探す。
「結構混んでるね……」
「基本出る人の関係者が来てますからみんな結果待ちですよ。それよりおねぇちゃんは……あ!いましたよあそこに!」
蘭ちゃんの指差した方向に先輩の姿があった。
先輩の他にも例のペン回しの女の子やヨーロッパの男の子が揃っていた。
三つ巴だ。勝手なこっちの基準だけど。
近づくとなにやら会話の途中みたいだった。
邪魔しちゃ悪いし後ろで待ってようか。
「汐音さん突然凄い上達したね?」
「そんなことないよ。それならりっちゃんだって今日凄かったじゃん」
「2人とも凄いよ……」
なんか男の方は意気消沈してるみたいだけど……。
「あんたはもっと練習したほうがいいんじゃない?汐音さんとどんどん離されていくわよ」
「そんなの言われなくてもわかってるよ!!てか自分は大丈夫みたいな感じで言ってるけど今日の演奏途中一瞬ずれたの知ってるからな!」
「あんたのその音感もこのままじゃ持ち腐れよ?」
「まぁまぁ……。2人とも落ち着いて!終わったらいつも言い合いばっかしてー」
先輩がまともポジションにいる……。
「やるならわたしも混ぜてよ!!」
あ、全然まともじゃなかった。
「って言っても今日の演奏完璧だったじゃない」
「悔しいけど同意見だね」
「なんかきづいたら演奏終わってたから自分でもどうだったかわからないよ」
「こんな大事な大会考え事しながらやってたの?恐ろしいことするね」
先輩だしそれくらいはスタンダードでは?それでやりこなせる所が凄いんだよね先輩は。
「いやーステージに立ったらスイーツが食べたくなってね?」
「甘いもの考えながら弾いた人に負けたのか……」
「いやあんたはもともと負けてるからね?」
さっきから女の子の男の子への当たりが強くて可哀想だなぁ……。
「なにも言い返せない……」
「2人ともあの美味しいスイーツを食べたらそんなこと言えなくなるよ」
ほう。あの先輩が他人に言うほど美味しいケーキがあるのか?少し気になる。
蘭ちゃんは何故かこちらを見て笑ってるけど……なんでだ?
「どこのケーキですか?」
「音羽さんの事だから凄い高いケーキだったりして」
「値段は知らないや。手作りのケーキだよ」
「誰の?」
「学校のこうは……。あ、彼氏のっ」
そこまで聞いてパンプレットを丸めて先輩の頭を叩く。
すぱーん。といい音がロビーに響き渡る。
女の子と男の子は目が点になって驚いている。隣では蘭ちゃんが大笑いしていた。
「あははは!小鳥遊さん最高ですね!!」
「痛っい〜!!なにするの?!って後輩くん?」
「人を勝手に彼氏に捏造しようとするからですよ」
「おねぇちゃんが見栄張ろうとするからだよ」
未だに笑っている蘭ちゃん。そんなに面白かったか?
「だからって急に後ろから叩かなくても」
自業自得だ。
「えーと……?」
おっといけないペン回しとヨーロッパの人のことを忘れる所だった。
「ほら先輩困ってますよ?」
「困らせてるの後輩くんだけどね?ごめんね2人とも、こっちは後輩くんの確か小鳥遊と妹の蘭だよ」
確か……?もしかして未だに覚えられてないの?
「こんにちは。小鳥遊です」
「こんにちはー音羽蘭です〜!」
「律です。こっちは馬鹿で構いませんよ」
「構うわ!ばかじゃないし、旋です」
律さんと旋さんか。
「まぁ、別にもう会う事ないだろうしお互い覚えなくていいと思うよ?」
「汐音さんの彼氏さんでしょ?これからも長くなるじゃない?」
「やめてください。これ以上誤解を広めないで……」
「いいじゃないですか。小鳥遊さん!私がなんかしなくてもおねぇちゃんが勝手に外堀埋めていってるみたいだね」
「じゃあ汐音さんの片想いってこと?」
「え?!そんなつもりはないよ!!違うから」
「なんか必死ですね音羽さん」
律さんも旋さんも余計なこと言わなくていいよ。
「先輩に恋愛感情は無理ですよ。子供ですからね」
「それ酷いよ後輩くん!!!わたしだって恋愛くらいはするからね!17歳の女の子だよ?!!」
「こんな汐音さん初めて見た気がする」
「斬新だね。これはもしかしたら本当に」
なんかみんな言いたい放題だなぁ……。
「盛り上がってるところ悪いんですけどおねぇちゃんも律さんも旋さんも結果出たみたいですよ?」
「え?本当だー見に行かないと」
「音羽さんは通ってるからみる必要ないでしょ」
「そうね。あんたと違ってね」
「自分だってわからないくせに!」
「ほら2人とも喧嘩してないでいくよ?」
先輩と旋律コンビは結果を見に走り出す。
「私たちも行きましょうかー」
「だね」
予想だとあの3人で決まりだと思うけどね。
そうなったらこの集まりは三強になるなるのか。
強い人達は強い者同士で競い合うから自然と仲良くなるのかな?
そんなことより本当にどうにかしないと先輩の恋人疑惑が広まってしまう。
どうしたものか。




