84-本番。
料金を払い受付を済ませて会場に入り席に着く。
「思ったより安かった」
「プロのコンサートじゃないんですから気持ちじゃないですかね?」
1人様500円。ワンコインではいれます。この機会にぜひ?
「そんなもんなの?」
「1人1人順番にでてきて弾いて繰り返すだけですよ?高かったらみんな来ないですって」
「へぇーそんな感じでやるんだ。一回引いたら終わりなの?」
「確かプログラムに書いてますよ?えーと……ほらここ!」
プログラムを開いて指差し腕を伸ばして顔に近づけてくる。
「近すぎて見えない……」
「あ、すいません。ここですよ。ここ」
腕を少し引いて見やすくしてくれる。
「ありがと。んーと……10名が順番に課題曲を弾いて審査員が評価し一度結果発表を行い、上位3名が後半から自由曲を弾き審査発表で終わり?」
「まぁ、そんなところらしいですね」
「なら最後まで結局いないといけないのか……」
「おねぇちゃん残る前提ですか」
「え?そりゃ残るでしょ。天才だよ?」
「この大会意外と大きい奴みたいですよ?参加するのにも一定の成績が必要とか。おねぇちゃんがよく負けてる人も出場してますしね?」
「ありゃ、それじゃ先輩無理だ。お陀仏様」
「でもまぁ3人くらいには残れるんじゃないですかね?」
なんだ結局残れるのかい。1日コースかな。
「結果発表までのお楽しみだね?」
「ですね?あ、始まるみたいですよ?最初は……おねぇちゃんがよく負ける人だ。噂をすればですね」
「ちなみに先輩はいつ?」
「えーと……。あ、最後ですね」
全然12時くらいじゃなかった。
まあいいけど、なんで走ったのかわからなくなったよ……。無駄骨だ。
「寝ないように気をつけよう……」
照明が暗くなりステージだけが明るく照らされる。
拍手が起こり袖から1人の女の子がバイオリンを手に歩いてくる。中央で立ち止まり一礼し目を閉じて右手に持っていた弓をペン回しの要領でクルクルと回していく。
「何やってるんだ……?」
「あの人はいつもああですよ?ルーチンなんじゃないですかね?」
道具をあんな扱いして評価下がらないのだろうか?
一頻り回し終わるとバイオリンを肩と顔で挟み込んで構える。
最後の回し終わり少しかっこよかったな。右下に切り抜く感じ。
ゆっくりと目を開いて演奏を始める。
当たり前だけど先輩がずっと放課後に演奏していた曲だ。
なのに全然印象が違う。弾き方の問題なのか先輩のと違って突き抜けるような?自分の音を聴く人に主張してくる感じがする。
素人だから当てにならないけどね?とりあえずわかるのは感情が音から伝わってくるってことだ。
こりゃ先輩ダメかもね?
無事に最初の演奏が終わると次々に入れ替わりで演奏していく。
「次で最後か〜。眠くなってきたよ」
「やっとおねぇちゃんですね」
最初の女の子の印象が強すぎて後の人の演奏がどれも同じに聞こえてしまった……。
タキシード着た男の子も女の子と少し似たような感覚だったけど。てゆうか1人だけ優雅に礼をするときに右手を上げて前に降ろしてヨーロッパの貴族みたいな事をしてたから印象に残ってる。
「案外緩いんだね……」
そう零すと同時に会場が拍手に包まれる。
やっと先輩の番か。長かった。
袖からゆっくりと真っ白なドレスを身に纏った先輩が歩いてくる。
先輩って白好きなのかな?ワンピース白だったし。
首に桜のネックレスと左胸には誕生日プレゼントであげた桜のブローチがつけられていた。服が白いと目立つ。
中央で止まり一礼。するとその場で軽く数回ジャンプし始めた。
「えぇ……。それ今やるのか」
「これも毎回ですよ。袖でやってくればいいのに」
なんか重心が体の真ん中に来るようになるんだっけ?どっちにしろアホだ……。呆れた顔で見ていたら飛び終わった先輩と目が合う。すると何故かすぐに顔を横に逸らされそっぽを向かれてしまった。
「なんなんだ……」
てゆうかよく目があったな……。偶然かな?
先輩はそのまま目を閉じて右手を左胸に添えて深呼吸をし、バイオリンを構え弾き始める。
いつもの先輩の音だ。やっぱり最初の人のも良いけどこっちのが安心して聞ける。
包み込むような感じ。正反対だね?
最後まで恙なく演奏を終えて袖へ戻っていく先輩。
「おねぇちゃんまた上手くなってるし……」
そうかな?確かにいつも聞いてる時よりちょっとよかった気もするけど……。
「蘭ちゃんよくわかるね」
「いや歴然じゃないですか?!」
「いつもこんな感じだった気がするけど?素人にはわからないや」
「私も素人ですからね!!昨日の夕方聞いた時より上手くなってますよ?」
「そんな一日で変わるのかね」
「さぁ……?おねぇちゃんの中で何かあったのかな」
昨日の夕方から今日までにあったことって先輩のいつもの日課をしたくらいじゃないの?それで心が落ち着いたとか。
「本人に聞けば早いんじゃない?」
「そーですね。発表はロビーみたいなんで一回戻りましょうか」
「そうだね。先輩も来てるだろうし」




