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83-ホール。


「小鳥遊さん眠そうですね?」


「昨日帰ってからすぐ寝ちゃって夜なかなか寝れなかったんだ」


 それだけじゃないけどね。


「一昨日に夜更かしでもしたんですか」


「昨日早起きして先輩にケーキ作ったんだよね」


「朝早くからですか?愛妻弁当ならぬ愛妻ケーキですね」


 愛妻の意味は込めてないしそもそも男側だから愛夫弁当になるんじゃ?聞いたことないけど。あいふべんとう?


「前にも言ったけど先輩には残念ながら愛はないよ」


「まだ言いますかそれ!どうせそのうち小鳥遊さんもおねぇちゃんの魅力に取り憑かれますよ〜だ」


 なんで少し不満そうなんだ。出来る姉への嫉妬かな?


「そうかな?割とどうでもいいと思ってたりもするんだけど……」


「本当どうでもよかったら早起きしてケーキ作りませんよ。そもそもここまで関係続いてないんじゃないですか」


「別に先輩がケーキいらないって言ったらそれで終わりな関係だと思うよ?」


 実際最初から最後までそれだけの関係だと思ってるし?


「ケーキ作れって言われたら小鳥遊さんは誰にでもこうやって作り続けるんですか。クラスの女子でも男子でも」


「んー。そいつらはいつも何だかんだ勝手に食ってるからなぁ……」


 主に中谷のせいで。

「そういうことじゃないですよーも〜。もしおねぇちゃんが超絶ブスだったら作ってないでしょ!」


「人を見た目で判断しないよ」


「それはおねぇちゃんの容姿と一緒にいる時間の濃さを考えても興味無さそうなこと言ってる時点で分かってますよ。小鳥遊さんって可愛くない子が好きなんですか?」


「それ先輩にも言われたよ。わたしに一切反応しないからブス専かホモかロリコンかってね」


「まぁそうなりますよね。んで実際どうなんですか?」


「違います。普通に女の子が好きだよ?」


「可愛い方が?」


「可愛いなら可愛いに越したことはないんじゃないかな?」


「おねぇちゃんは?」


「可愛いね」


「じゃあおねぇちゃんでよくないですか!!」


「可愛さ-残念さ-理解不能さ=マイナス値。かな?」


「それは何も反論できないですね」


「なんでそんなに先輩推すのさ」


「だってその方が面白いじゃないですかー?」


「人を面白さの追求に使うんじゃありません」


「私は諦めませんよ〜!」


 蘭ちゃんが諦めなくても他人の意思はそんなに簡単に変わらないと思うけど……。

でも最近の先輩思考は少し激しくなってきたかもしれない。


「まぁ未だに先輩って呼んでるんじゃまだまだ先の話みたいですね?」


「変えるつもりはないよ?」


「名前で呼んであげたら喜ぶんじゃないですかね?」


「恥ずかしいから無理」


「普通に汐音先輩でいいんじゃないですか?名前だけにすれとはいいませんし」


 汐音先輩かぁ。違和感半端ない……。


「なんか負けた気がするから呼ばない」


「子供ですか!!」


「だって呼んだら勝ち誇る先輩が目に浮かぶもの」


「むしろ真っ赤になるまで呼び捨てればいいんじゃないですか?」


 お、それはありだね。でもそのまえにこっちがまっかになりそうだから駄目だ。


「そんな恋人みたいなことしないよ。そんなことより先輩の演奏は何時からなの?」


「んーと?12時くらいだと思ったんですけど」


「もうそろそろじゃん。何時頃着くの?」


「もう敷地内にはついてますよ〜。あ。あれです!」


 自然の中にぽつん。と大きなホールがあった。

木に隠れて見えなかっただけか。それにしてもこんなところがあるんだなぁ。音楽に興味ないし世間に疎いから知らなかった。


「こんな大きいの近くにあったんだね」


「小鳥遊さん本当に知らないんですか?中学とかで芸術鑑賞とかしなかったんですか」


「芸術鑑賞は落語聞いた気がする。あとは演劇とか?」


「昔の人ですか……」


 失礼な!落語だって頑張ってるんだぞ。興味はなかったしつまらなかったけど。


「落語にせよクラシックにせよ、どっちみち興味ないから同じだったよ」


「ならなんで今日来たんですか?!」


「正直先輩の聞いたら帰ろうかなって思ってるけど……」


「なに言ってるんですか!最後まで逃がしませんよ。早くいきましょ!受付すませちゃわないとおねぇちゃんの始まっちゃいます」


 ホールに向けて走り出す蘭ちゃん。

そんなに走られてもインドアだからそんな体力ないよ?


「待ってよ蘭ちゃんー」


「早くしないと置いてきますよ〜!」


 こっちこっちと手招きする蘭ちゃんの後を小走りで追いかけた。




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