80-人手。
放課後教室で中谷にケーキを試食させる。
今日は先輩案件がないから久々に中谷に食べて貰うけど結構期間空いちゃったな。すまんな中谷。
「はい。これ次のやつの試作の試作」
「前回より高級感増してんじゃねーかよ。すげーなお前本当に」
「よし食べたな?今度手伝えよ」
「は?おいそれはずるくないか?!後出しかよ……」
「先出しでも食うくせに」
「ま、そうなんだけどな。んで何手伝えばいいんだ?」
「そのチョコの部分作りのループ作業でごさいます」
「どうやってつくってんのこれ?」
「型の外側にチョコつけてシール貼って乾かしてシールを剥がすただけの簡単な作業だよ」
「それなら俺でもできるわ。手伝うよ」
「ただ量が多いんだよなぁ」
「なんぼ?」
「聞いても辞めるとかなしな?」
「因みに作るのはいつ?」
「9月10日かな?」
「平日じゃねーかよ………放課後にやるの?」
「俺は朝と昼もやるけどお前は放課後でいいぞ」
「おけ。んで量は?」
「まだわからんけど5千〜1万くらい?」
普通に考えて一人で1万もあっちで作り続けてくれるわけないんだよね。でも来場者数って数万単位ならその分必要になるよね?
え?なら金柑1万個も必要なの?無理じゃん無理無理どうしよう。
「なんでお前が絶望的な顔してんだよね……。こっちがするはずだろ」
「いや今自分で言ってて他のところで限界が見つかって……」
「どんな?」
「金柑を1万個煮る」
「……レシピから考え直したほうがいいんじゃねーの?」
「どっちにしろ1万は揺るがないよ」
半分にして入れるとしても5千も切らないといけないからね?
「本当に学生の大会かよ……」
「高校生向けではないのは確かだね……」
「とりあえず二人で1万はむりだろ」
「うん」
「そこで9日の日曜に変更しよう」
「流石に4日前は厳しいな」
「放課後夜までやっても厳しいだろ……」
「月曜の授業ってなんだっけ?」
「国語だな?担任の」
「先生修学旅行について行くから自習じゃん。頼んでやらせてもらおうかな」
「2時間は増えるな。それでもきつい。どっちにしろ人手が足りんぞ?」
「って言われても他にいないよ?」
自慢じゃないけど友達いません。
「おいーみんな〜ここにこいつのケーキ沢山あるぞ〜?」
突然大きな声で宣伝し始めやがったぞ?沢山って言ってもそんなにないからね?
ぞろぞろとみんなが集まりだす。
「食べたい奴は?」
「はい!」「食べたい!」「俺も!!」「私も」
いやどんだけ食べたいんだよ……。これ試作だって……。
「9月10日の朝と昼休みと放課後夜まで手伝ってくれる優しい奴だけにくれるそうだぞ?」
「何を」
「単純作業。でも量が多くて俺らじゃ終わらないから手伝ってくれる人が欲しいんだ」
「暇だからおっけー」
「特にやることないしな」
「とりあえず食べたい」
みんな次々とケーキを取り合い始めた。
「何勝手なことしたんだよお前……」
「だってしょうがないだろ?2人じゃ無理だからな。むしろこいつらでもむりじゃねーか?」
「気合い」
「阿保か」
足りなきゃあっちでも作りながらやるしかないからいいよ……。出せない時間ができるけどしかたない。
それよりこの騒ぎをどう沈めようか……。
「うわ、なにこれ?どうしたの?」
「あ、小鳥遊。お前の彼女来てんぞ」
「え?彼女なんていないんだけど。誰?」
「声聞こえてるだろ。無かったことにすんな」
ちっ。ばれたか。
「おーい後輩くん〜!!」
クリアファイルを片手に綺麗な黒髪を揺らしながら跳ねる先輩の姿に注目が集まる。
「あれぇ?もしかしてまたこのパターン?」
そりゃそうだ。あなた学校一の人気者ですよ?
「あ、お構いなく続けていいですよ?後輩くんだけ貰っていきますね〜」
僕の手を取りさらっと無理やり教室から連れ出そうとしてくる。
先輩に乗じるのは癪だけどこの事態を収めるのがめんどくさいから中谷に押し付けるためにされるがままについていく。
頑張れ中谷。うまくまとめといてね、貴重な戦力を。
先輩に付いて向かったのはいつもの教室じゃなくて図書館だった。
そのまま奥に進んで司書室に入りそのまま奥の小部屋に入って鍵をする。
「先輩って権力の権化何ですか?何さらっとこんなところ入って……」
「いやわたしこれでも図書委員だからね?文学少女だよ」
「あー、そういう設定はもういいです」
「いやほんとだから……。1番楽そうな図書委員にしたんから!」
なら文学少女じゃないじゃんか!!
てか鍵する必要ないじゃん?
「ちなみにここは密室だよ!」
サクリファイス?嫌なんでもないです。
「密室に連れ込んで何するんですか?何があったら叫びますよ?」
「おかしい!それわたしのいうべきセリフだからね?!何もしないよ!てかここ完全防音だし。これだよこれ。昨日言われたやつ!終わったよ」
「え?もうですか?大会の後でいいって言ったのに……」
「気分転換!気分転換!!まぁ見てみてよ」
渡されたクリアファイルから紙を取り出して机に置く。
「とりあえず桜は要望通りに書いたけどこんなのでいいの?」
下から2本の枝が伸びてそれに桜の花が咲いている。ところどころ散ってる桜も書かれていてとてもおしゃれになっていた。
「はい。これで大丈夫です。想像以上でしたよ。本当に多才ですね……」
「ふふふ〜。見直した?もっと褒めていいんだよ?」
いけないいけない。あんまり褒めると調子に乗る。
とはいえ本当にここまでガチだと思わなかった。さすが先輩だな……。
「はいはいー。見直しましたよ」
「棒読みじゃんそれ!他もの書いたからちゃんとみてー」
夏は風鈴と花火。
秋は落ち葉に蜻蛉かな?これ。
冬は結晶に雪だるまと雪兎。
「先輩これでも稼いでいきていけそうですね?冬結構好きですよ」
「雪兎ちゃん可愛いでしょ〜。力作なんだよ!!」
ちゃん付けして呼んでる……。先輩って変なところで可愛いところ出してくるよね。
「ありがとうございます。とりあえず、というかこれで大丈夫です」
「よかった!それでこれ何に使うの?」
「チョコに貼るシールのイラストになるんですよ」
「チョコ?」
「試作で食べてるじゃないですか」
「あーあれの模様になるってこと?」
「そーですね?」
「なるほど。って、え?そんなものわたしに描かせたの?!それみんなに見られるやつじゃん!!ちょっと返して!描き直すから!!!」
クリアファイルをひったくってペンを手に描き直し始める。
あぁ、せっかくの神絵が……。何でもったいないことするんだろう。
「後輩くん。とりあえず座ろうか!夏なんだけど〜」
先輩に促されて席について意見を交わす。
1時間以上絵師先輩に付き合ってイラストの完成した。
これ本当に何で密室にしたの?
読んでくださってる方ありがとうございます。
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