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75-ナッペ。


「それじゃ生クリームを塗ってフルーツを盛り付けましょうか。好きに盛り付けしていいですよ?フルーツはもうカットしてありますから自由に使ってくださいね」


 回転台にパレットナイフどっちも高そうないい奴だ。うちで使ってる千円しないような奴とは違って使いやすそうだな。

先輩はクリームを塗るのを知って絶望している。そんな心配しなくても先輩じゃなくても割とみんなできないもんだか恥ずかしくないですよ?正直始めてやる人なんて絶対できないからね。


「とりあえず俺がやってみますんでそれみてだいたい覚えてもらってやってみましょうか。小鳥遊さんはやっててもいいですよ?」


 いやいや、ちゃんとみますよ。プロのやり方をね。


「見てからにしますよ。折角なので」


「そうですか。それじゃまずスポンジを半分にカットして回転台に乗せます。そこに生クリームを……」


 わかりやすいように簡単に手順を説明しながら実践してくれる。

先輩をみると耳から煙が出そうなほど目を回していた。


「先輩ちゃんと見ないとできなくても知りませんからね?」


「みてもわからないよぅ……」


 可哀想な人だ。まぁ、和西さんが助けてくれるだろう。めんどくさいからノータッチで。


「って感じですね。あとは好きにデコレーションするだけです」


 それじゃやりますか。

生地を切って台に乗せて生クリームを塗っていく。中にカットしてあるイチゴを並べてもう一度生クリーム。

生地。生クリームと手慣れた作業だ。それにしてもやりやすいな……?もっといいやつ買おうかな?

絞り器に生クリームを入れてケーキの縁に絞っていく。フルーツを乗せてナパージュを塗ってチョコのプレートにチョコペンで文字を書いて真ん中に乗せて終わり。

さて、先輩はどうなったかな?


「後輩くん……もうわたしには無理だよ」


 生クリームまみれの回転台とパレットナイフを持って諦めた先輩がいた。酷すぎる……。

和西さんもお手上げ状態だった。ここでほっといたら後でうるさいんだろうなぁ。

しかたないか。


「とりあえず生クリームを一回全部戻りましょうか」


「それくらいならできる……」


 のろのろとついた生クリームをボウルな戻していく。

ナッペって口で説明するの難しいんだよなぁ。どうしようか。


「おわったよ?」



「それじゃとりあえず一掬いだけ生クリームを生地の上に落としてください」


「こう?」


 ゴムベラで慎重に生クリームを垂らす先輩。そんなに恐る恐るやらんでも……。よっぽど失敗が怖いのか。


「そしたらパレットナイフを生地と平行にして先端を生地にあてて左手で台を回して右手はくねくねと波打たせて下さい」


「日本語でお願いします」


 日本語ですよ。これは拉致があかないな。和西さんも待たせるわけにはいかないし。


「もうめんどくさいんで、少し我慢してくださいね?」


 先輩の後ろに回って先輩の右手を被せるように握り左手は台をつかむ。


「いいですか。こうして手首を使ってやるんですよ」


「おおー。凄いね後輩くん。これでも何してるか全然理解できないけどね?」


 先輩には死んでも製菓はむりだね。


「次はフルーツ乗せてまたやりますよ」


「はーい」

 フルーツを乗せて生クリーム。生地をのせて生クリーム。間接的になるとかなり難しい。1人で作った方が楽なんだけど……。

教えるのは向いてないなぁ……。


「これで一応おわりですよ」


「ありがとー!うんうん。今日の後輩くんは積極的だなぁ、先輩は嬉しいよ」


 何を言っているんだろうか?感謝してる人のセリフじゃないよね。


「そろそろ怒りますよ?」


「ごめんなさーい」


 全く反省してないくせに。

一気に疲れたな……。先輩といるだけで疲れてくんじゃないだろうか?


「小鳥遊さん。ありがとうございました」


「いえ、うちの学校の恥なので後始末はうちの責任ですから」


「全くの初心者に教えるのは難しいものですね」


「先輩は別格ですからね。気にしない方がいいですよ?じゃないと僕みたいに疲れますからね」


「ははは……。小鳥遊さんのケーキ箱に入れて冷蔵庫にしまってますから、音羽さんのが終わったら持ってきますね」


「ありがとうございます」

 先輩はフルーツケーキと睨めっこしてるからもう少しかかりそうだ。


「そうだ。ケーキのお礼にこれおひとつどうぞ」


 先輩にあげる予定だった和菓子を全種類1つずつ取り出して和西さんに渡す。

今日の労働力分だから先輩も文句はないだろう。


「和菓子ですか?」


「練り切りですよ。昨日作った奴なんですけどよかったら是非」

「これ手作りですか?!」


 そんなに驚く事かな?ただの練り切りなんだけど。

「はい。昨日家で作りました。工作みたいでたまには和菓子もいいですね」


 スイカのとか結構凝ったからな。味はともかく見た目は拘ったよ?


「本当に高校生です?」


「れっきとした高校生ですよ。見た目は頑張りましたけど結局は味ですからね」


 その質問なんか前にも誰かにされたな……。

どこからどうみても高校生じゃん。


「一応スイカとかりんごは中身も再現してるのでよかったら切ってみてください」


「包丁持ってきますね?」


 そう言って小走りで取りに行ってしまった。

別に今じゃなくてもいいのに。

しょうがない、戻ってくるまで先輩の相手してるか。


「先輩終わりましたか?」


「そろそろー」


「飾り付けもセンスでますからね……」

 覗き込むとケーキの上に山盛りのフルーツが盛ってあった。


「どう?」


 ドヤ顔でこちらを見る先輩。どう?じゃない。なんだこれは……。


「一応聞きますけどフルーツたくさん食べたいって理由で盛ってませんよね?」


「そ、そんな事ないよ?!」

ビンゴか。先輩らしいっちゃらしいけど……。


 、 「そういうことにしておきますよ。でもこれくらいにしないと崩れますよ?」


「そういうことってどういうことさ!違うってば!!なんかゼリーみたいなの塗るから大丈夫でしょ?」


「ナパージュでも限度がありますからね?」


「ならここでやめとこ〜、ゼリーゼリ〜」


 能天気なものだ。自分でできることしか残ってないから気が軽くなったのかな。

そんなやりとりをしていると和西さんが戻ってくる。


「お待たせしました」


「いえ、先輩の処理してましたから」


「それじゃ切ってみますね」


 容器から取り出してまな板の上に乗せ真っ二つに切る。

すると綺麗な断面が顔を出した。

うん。我ながらいい出来だ。見た目だけは素晴らしいね?


「よくこんなものが作れますね……。あとで先生に見せてもいいですか?」


 うへ。人に見せるのか。それは少し恥ずかしいけど、もうあげたものだから拒否権はないね。


「どうぞ。こんなのでよかったら」


「ありがとうございます。きっと驚きますよ」


 見た目でハードル上がってしまってるけど味が正直見合ってないからあんまりあげられても困るなぁ。


「終わった!!ってあれ?なにしてるの?」


「こっちの話ですよ。それで?完成したんですか」


「もちろんできたよ!私にこんな才能があったとは………驚きだ」


 ウンウンとひとりで頷きだす先輩。

結局盛りつけ以外1人でやってないよね?

なんか機嫌が良さそうだからいちいち言わないけども。




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