72-初製菓。
「すいませんー!遅れました」
「大丈夫ですよ。スリッパに履き替えて座ってください」
案内をしてこちらに戻って話始める先生。
「これで全員揃いましたね。それでは今日はオープンキャンパスに参加していただきありがとうございます。もう何回も参加してくれてる人もいますけど初めての方もいるのだ簡単に説明しますね。在校生と一緒に班になって……」
一通り説明したのち班の発表をしてエプロンをつけて調理室に向かう。
「なんでいるんですか?」
調理台について待機している時間に横にいる人物に問いかける。
「いやー奇遇ですなぁ。しかも班まで同じとは」
あはは。と虚空を見つめながら嘯く。
「偶然でこんなところに会うわけ無いでしょうに」
盗聴器か発信機でもつけられてんのか?
「料理の勉強したい人は来るでしょ」
自信満々に言ってるけどここ調理学校じゃないからね。
「この製菓学校。製菓、おかし」
「小鳥遊さん知り合いだったの?」
ちょうど材料を持って戻ってきた和西さんに声をかけられた。
「まぁ、同じ学校ですからね。ちょっとした知り合いですよ」
「ちょっとしたってなにさ、結構濃密な知り合いだ思うんだけど」
ややこしくなるから黙ってくれないかな?濃密な知り合いって聞いたこともないよ。
「こちらはこう言ってるけど?」
「気にしないでください。あほなんで。それより今日はなに作るんですか?」
今日の目的のために無視して話を進める。
横で「あほ……。違うし……」とか言ってるのはスルーでいこう。
「今日は1人一個ホールケーキかな?生地とナッペと飾り付けの3ポイントが目的だと思うけど、小鳥遊さんは説明なくても出来そうだよね……」
出来るから教えられないでやるってのは違う。うまさで勝てないんだから指南して貰わないとね。
「できなくはないですけど……」
「ならこの班はちょろそうだね」
「いや、それは違いますよ。1人地雷抱えてます」
横を向いて話に入れないで?マークを浮かべてる人を見る。
「お菓子作ったことありますか?」
和西さんが丁寧に確認し始める。
いやお菓子ところが料理すら最近小学生レベルになったところって聞いてますよ?
「ないです……」
「無くても大丈夫ですよ。ちゃんとカバーしますからね」
「あー和西さんもしかしたら付きっきりのがいいかもしれません」
「流石にそんなに酷くないから!!多分……?」
「まぁまぁ、とりあえず他の班のところがもう始めるのでこっちも始めましょうか。まずはスポンジからです、材料はもう1人分になってますので」
ボウルに材料を入れて混ぜ、他と合わせてケーキの型に流してオープンに突っ込む。
ついいつものペースでやってしまったがもっと合わせた方がいいかな?
「難しい……。混ぜるだけのに」
「そうです。ホイッパーで混ぜて……」
「やっぱり苦闘してるし。来ない方が良かったんじゃないですか?先輩」
そう。蘭ちゃんのメールの意味はこういう事だったのだ。向かったのは家じゃなくてここ。本当迷惑極まりないね!嫌ではないがたまには1人でゆっくりしたいよ。
「うるさいなぁもう!今話しかけないでよ!」
そりゃ失敬。和西さんも大変そうだ。和西さんと会話するために来たのに先輩のせいで全部台無しだよ。
「はぁ、和西さん次のレシピもう考えましたか?」
先輩に話しかけるのは諦めて和西さんに話を振ることにした。
「ベースは決めましたよ。あとは試作をして改良って感じです」
やっぱりもう固まってるのかー。そろそろ決めないとやばそうだね。
「早いですね。僕なんて全然進んでなくて……。難しいもんですね」
「量も必要ですからね。個別で作るかホールケーキとかでカットするかも悩みますからね。先輩や先生に相談して色々と組み替えてますからね」
「相談出来る人がいるのはいいですね。周りに誰もいなくて」
「前回もそんな感じで纏めたので自分の力じゃないですよ、周りの人があってのものですね。その点小鳥遊さんあれも1人で考えるて作るなんて流石ですね」
社交辞令はいらないんだけどなぁ……。これが才能だとしても、ここで止まってる意味がその程度のセンスということの他ならない。
「死ぬ気で考えてますからね。創作のセンスがなくて苦労してますよ。あ、先輩それやりすぎるとクソみたいな生地になりますよ?」
食べるの先輩だから失敗してもいいんだけど、先輩のことだからこっちのを取りに来たりしそうだ。
「それってどれ?!これ?これ?!」
目をぐるぐる回しながら生地を混ぜ続ける先輩。いやその混ぜてる奴ですって……。
「あぁ、音羽さん!もう混ぜなくていいですよ!それ以上すると膨らまなくなりますよ」
慌てて先輩を止めに入る和西さん。
やっぱり先輩来ない方が良かったんじゃないの?食べる専門ってことがはっきりわかったね。




