7-噂。
気がついたら授業が終わっていた。
「小鳥遊〜!気持ち良さそうに寝てたな」
「昨日夜中までレシピ書いてて寝不足だったからつい」
「学校で書けばいいだろ……」
「確かにそうか。でも家のが集中できるからね」
だいたい中谷は基本寝てんだろ。人のこと言えないはずだぞ。
「よし、ケーキ取ってくるからまってて」
そう言って調理室の冷蔵庫に走りモンブランの詰まった箱を取り出し教室に戻る。
あれ?なんか机の周りに人が増えてる……?
「おまたせ」
「廊下走っちゃダメだぞ」
「早歩きだからセーフだ」
「めっちゃ走ってたじゃねーか」
「きにすんな。それよりなんでこんなに人が集まってるの?」
「会話を聞いてケーキに釣られた奴ら」
なるほどだから女子ばっかなのか。
「人数分あるかなぁ……」
箱を開けてケーキを机に並べていく。
「本当にモンブランだったのか……」
「一昨日言ったじゃん。ちゃんと栗じゃないのにしたよ」
「まぁ栗のでもよかったけどな。でもどうする?足りないぞ」
「うーんみんなに渡すつもり無かったしなんとか話し合って分けて」
めんどくさいから丸投げしよう。
「だとよ。ちゃんと分け合ってたべろよー」
ひとつ手に取りそう言う中谷。
お前は御構い無しにひとつ食べるのな……。
「てかひとつ余ってるじゃん」
「これは他の人に渡すんだよ」
「珍しいな俺以外に渡す人なんていたのか」
「ちょっとね。それよりこれ毎回来られても困るどうにかしないとね」
周りを見渡してため息をつく。
「女子にモテモテでいいじゃん」
「モテてるのはお菓子だろ?」
それにあんまり騒ぎになると先生に何か言われそうだしね。
「そーいや前に言ってた噂のバイオリンの人、2年の先輩で学校で有名らしいよ。めっちゃ可愛いとかで」
その話を聞いて先輩の顔を思い浮かべる。
たしかに可愛かった。学校で有名になってるんだあの先輩って。
「音楽の才能もあって顔もいいってずるいね」
「どんな先輩なんだろうな。一回見てみたいな」
「学校にいるんだしいつか会えるでしょ」
そろそろ行かないと練習始まっちゃうかもしれない。そもそもあそこにいるのかすらわからないが。
ドアに目を向けるとそこには見たことのある顔があった。
「ねぇ中谷」
「ん?どうした?」
「先輩見てみたいって言ったよね?」
「有名になるくらいだから一回くらい見て置きたいな」
「ほらあそこ」
前の方のドアを指す。
「え?ドアがどうした?」
「先輩いるよ?」
クラスの女子と何やら会話してる。
「うわ、めっちゃ可愛いじゃん。でもなんで一年の教室に」
「あの子と知り合いなんじゃない?」
眺めているとクラスの子がこちらを指差し先輩がこちらを見る。
「なぁ、こっち見られてね?」
「人集りが出来てるからじゃないかな?」
先輩と目があった気がした。
すると先輩は手を振りながらこちらに向かって叫ぶ。
「後輩くーん!!」
クラスのみんなが一斉に先輩の方に目を向ける。
みんなあなたの後輩だと思います。