63-プレート。
「そーですねー。おねぇちゃんの話でもしますか。なんか進展ありましたか?」
進展ってなんのだろうか。進展するような仲じゃないんだけど。
「んー。そういえば昨日先輩に死刑宣告されたよ」
「なんですかそれ?」
何を言ってるのか全くわからないみたいだ。
これを聞いたらすぐに納得してくれるはず。
「今度お弁当を作って持ってくるんだってさ」
「あー。おねぇちゃんも積極的ですねー!諦めて死ぬしかないんじゃないかと」
「まだ死にたくない。先輩料理できるようになったって言ってたけど本当なの?」
「最近は食べてないけどまぁ焦がしてはいないっぽいですよ?」
「最低ラインはそこじゃないんだけどなぁ……」
「あははっ。確かにそうですね、でもまあなんとかなりますよ!多分」
「蘭ちゃん料理教えてあげてよ」
「私じゃ無理ですねー。いいじゃないですか中身はともかく見た目がいいのと基本的に万能なおねちゃんって結構男子から人気なんですよ。そのおねぇちゃんの最初の手作り弁当を食べられれんですよ?」
中学の時から人気者だったのか先輩は。でも万能には見えないんだけど。
「その中身を知ってるか知らないかが大事なんだけどね?それより先輩の万能感ゼロなんだけど」
「中身が残念ですもんねーおねぇちゃんって。凄いですよ?当たり前ですけど同じ中学校だから凄い比べられましたもん。先生とかおねぇちゃん知ってる先輩とかから!おねぇちゃんは料理と恋愛以外は凄いですよ?」
そうか。上が凄いとやっぱり比べられちゃうものなのか。
「恋愛?先輩今の昔もモテモテなんでしょ?」
「モテモテですけど、もててるだけですよ。恋愛というより男子の交友ですかね?だから小鳥遊さんがこんなに絡んでる初めての男ですよっ」
変な言い方をするな。でも先輩のそれのおかげで世界中の男子が夢を崩さないで済んでるんだ。結果オーライなんじゃないかな?
「あんまり嬉しくないね」
焼いて冷ました生地をカットして泡立てた生クリームとフルーツを乗せて層にしていく。
「小鳥遊さんはおねぇちゃん好きじゃないんですかー?」
「今のところ好きになる予定は無いつもりだけど」
「珍しいですね。私の周りは誰に聞いてもおねぇちゃんおねぇちゃんなのに」
不憫な生活してるんだな蘭ちゃん。なんか可哀想になってくるな。
ケーキに生クリームを垂らしてパレットナイフでナッペする。
「うわー凄いですね小鳥遊さん。器用ですね」
「練習すれば誰でも出来るようになるよ」
終わったら最後に生クリームを絞ってイチゴを乗せて蘭ちゃん持ってきた金箔と食用花を散らして人形を隙間に置いていく。
「蘭ちゃん。これなんて書く?」
チョコにチョコペンで書く内容を確認する。
大抵は誕生日おめでとう。とかhappy birthday○○。とかだけど。
「小鳥遊さんに任せますよ。センスあるやつでお願いしますねっ!」
センスって言われてもテンプレじゃだめなのかな。
蘭ちゃんからのケーキなんだし、蘭ちゃんが書くべきなのに。
「じゃあ先輩の名前教えて」
「え、まだ知らないんですか?しょうがないですね」
蘭ちゃんに教えて貰って書き込む。
先輩ってこんな名前だったんだ。意外。
『Dear Shione. Happy birthday.』
センスないから普通に書きました。周りに葉っぱや蔦みたいな飾りも書き込む。
裏に一応蘭ちゃんからってわかるようには一言書いておこう。
『Lots of love Ran.』
「よし出来た、後は乗せたら完成だよ」
「なんて書いたんですか?筆記体読めないんですけど……」
「説明しろって言われると書いたの恥ずかしくなるんだけど……」
書くのはいいけど内容を問われると恥ずかしくならない?
「いいじゃないですかー」
「普通の定型句だよ。愛しのしおねへ。誕生日おめでとう。って感じ?」
「裏には?」
「うーん……。蘭ちゃんよりたくさんの愛を込めて。的な感じで」
「恥ずかしいこと書いてますね」
だから言ったじゃん!こういうのは書いてあるから良いのであって読んだり確認するもんじゃないら!!
「だから言いたくなかったんだよ。早くこれしまって持っていかないと先輩帰って来ちゃうよ?」
「あ、結構経ってますね。急ぎましょう小鳥遊さん」
「片付けしとくから行っていいよ?」
「何言ってるんですか?小鳥遊さんも行くんですよ?」
何を当たり前なことを言ってるんだといった顔の蘭ちゃん。いや聞いてないけど?
「むしろなんで作って終わりだと思ったんですか?!私そんなに薄情な女じゃないですからね!!」
いやだって他人の家の誕生日会じゃん。普通いかないよね?こっちの常識が間違ってるのか?!
「でも何にも関係ないしね?」
「もうお母さんに言ってあるから来てくれないと料理凄い余っちゃいますよ?それに小鳥遊さんもプレゼント買ったんですから一緒に渡しましょーよ」
蘭ちゃんも結構先輩譲りで強引な子だった。
でもまぁ、もう行くしかないらしいし諦めて用意するかな。
「用意するからケーキ箱にしまっといて」
「はいー!急いでくださいね!」
中谷よ、本当に先輩との関係がわけわからなくなってきたよ。
そんなことがふと頭に浮かんだ。




